子どもがいたずらをする、泣きわめくのは困りますよね。そういうときは、思わず叱ってしまうわけですが、それで次から子どもがしないかといえばそんなことはなく、また騒ぎ始めて、それを注意して……という無限ループに陥るのはあるあるではないでしょうか。
こういうときは、そういったして欲しくない行動を無視するのが有効な手段です。そしてセットでして欲しい行動を褒めます。これで無限ループを回避できます。
※「触らないで!」と言っても触り続ける時とか
子どもがして欲しくない行動をするのは注目を集められるから
子どもがして欲しくない行動をするのは、相手から注目を集めるにはして欲しくない行動をすればいいと学んでいるというのがあります。試し行動と同じですね。子どもにとっては親や周りから注目してくれるというのは最高のご褒美です。
いたずらに対して、周りが叱ったり、特別に反応を示したりするのは、子どもからすると「注目してもらった!」という悪い成功体験を積むことになります。そうして、冒頭に紹介したような無限ループ状態に陥ります。
して欲しくない行動に注目しない
だから、子どもがして欲しくない行動への対処としては、その行動自体を無視するというのが有効になります。
して欲しくない行動に注目をせず、そしてセットで、して欲しい行動をしてくれたら、すかさず注目して褒める。これを一貫して、繰り返し続けると、子どもからすると、注目を集める方法はいたずらをすることではなく、親が喜ぶことだと学ぶようになります。
こうして、先ほどとは逆に、子どもがして欲しいことをする、親が褒める、子どもがまたそれをする、褒めるという良い循環が生まれます。
子ども自体を無視するわけではないこと、褒めるのもセットにすること
こう書くと「子どもを無視するなんて酷い!」と思うかもしれません。
注意しておきたいのは、子どもの"存在"を無視するのではなく、繰り返し書いている通り、して欲しくない"行動"に限定して無視をする、注目しないということですね。罰を与えるという意味で無視をするのではなく、特定の行動について「いたずらしていても反応しないからね」というメッセージを送るのが目的です。
また、単にして欲しくない行動を無視するだけでは、子どもは注目を集める方法を学べません。ですから、いたずらをやめたらすかさず、子どもに注目を戻し、「話を聞いてくれてありがとう」と言って褒めるわけです。
いたずらを繰り返す子どもを叱り続けて果てはイライラして叩いてしまうなんて状態より、親自身が快適に子どもに接することができます。親のためのテクニックです。
ペアレントトレーニングとしては一般的な手法
と、ここまで書いてきましたが、これは私自身が編み出した方法というわけではなく、ペアレントトレーニングの本を読めば普通に書いてあることです。
日本語でペアレントトレーニングと検索すると、発達障害の子どもを持つ親のための訓練という説明ばかりが表示されますが、英語では、
Parent management training - Wikipedia, the free encyclopedia
Parent management training (PMT), also known as behavioral parent training (BPT) or simply parent training, is a family of treatment programs that aims to change parenting behaviors, teaching parents positive reinforcement methods for improving pre-school and school-age children's behavior problems (such as aggression, hyperactivity, temper tantrums, and difficulty following directions).
こんな感じで、特に発達障害を持つ親に限定しているわけではありません。就学児・未就学児の厄介な行動を改善するために親のやり方を変える。
私自身がこの手法を知ったのは、次の本からで、
読んで学べるADHDのペアレントトレーニング――むずかしい子にやさしい子育
- 作者: シンシアウィッタム,上林靖子,中田洋二郎,藤井和子,井澗知美,北道子
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2002/03/22
- メディア: 単行本
- 購入: 33人 クリック: 156回
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上で書いたことも、ほとんどがこの本で語られていることです。この本も、邦題が『ADHDのペアレントトレーニング』とあり、ADHDの子どもを持つ親向けかと思いきや、本文には、
この本は、とくにADHDの子どもをもつ親のために書かれたわけではありませんが、この本のすべての技法は、UCLAの精神神経医学研究所のペアレントトレーニング(親訓練)プログラムの研究と臨床実践から直接に生みだされたものです。
(p.4)
とあり、特にADHDの子どもを持つ親限定の内容としていません。原題も『Win the Whining War & Other Skirmishes』ですから、ざっくり訳せば『子どものぐずり、小競り合いに勝利する』でしょうか。
ただ、研究対象の多くはADHDの子どもだそうです。この辺は、以前に紹介したこの本もそうですけど、
発達障害の子どもの指導法は、非常に多くの研究がなされており、エビデンスもあります。こういった本に書かれている子どもの褒め方や生活習慣の身につかせ方は、具体的で、ロジックがあって、実践的なんですよね。
締め
親は子どもができてから、親になるための訓練を受けるかというとそんなことはないんですよね。健康を維持するための最低限の指導は自治体からはあっても、褒め方や生活習慣の身につかせ方といった、実は非常にクリティカルなことは自分で学ばないといけない。
そんなわけで、自分自身が親にどう扱われたかが基準になることが多く、そうすると、よく子どもの時に叱られたから、自分も子どもを叱ってコントロールしてしまう。この辺は、部下をどう育てるかとも同じですね。自分が育てられた方法で人を育てる。特に理屈はなく、育てられる方の個性は考慮されない。
自分だけの経験で子育てしようとするから、上の子が実験台になって、下の子で上手く調整できたなんていうのもよくある話です。そしてこれを成功体験と考え、孫育てに介入しようとしてくる!
こういうのは関係者全員不幸ですよね。もっと子育てを楽にするために、ペアレントトレーニングが普及するといいなと考えています。
読んで学べるADHDのペアレントトレーニング――むずかしい子にやさしい子育
- 作者: シンシアウィッタム,上林靖子,中田洋二郎,藤井和子,井澗知美,北道子
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