鳥飼茜さんの『先生の白い嘘』という作品を知人の紹介で読みまして、
かなり好きな内容だったので、他の作品にも手を出してみました。BE・LOVEで連載中の『おんなのいえ』です。今のところ一巻だけしか読んでいませんが、かなり好きですね。
ざっくりあらすじを書くと、
美大を卒業しイラストレーターを目指すも、彼の夢を支えるという理由で一般事務をしていた"あかり"(29)が3年付き合った彼から「重い」という理由で別れを切り出されて、傷心して大阪の実家に帰ったら母親からなんやかんや言われて、東京の彼のいなくなった部屋に妹と一緒に暮らし始める。
こんな感じでしょうか。
この作品のいいところは、登場人物全員がちゃんと生きているというか、どこかにいそうな雰囲気があるところですね。フィクションだけれど、生きている人間らしい思考をするのがいい。
例えば、これは彼からの別れを言い出された後、既婚子持ちの友人に愚痴る"あかり"のシーンですが、
※画像は1巻P46から
こうやって、自分は人のために生きてきたと"あかり"は言い、友人に対しては、夫のために大変な子育てして偉いなと言う。それに対して、友人は「こんな大変なこと・・・誰かのためになんてやってられへん」と答える。
鳥飼茜さんが1981年生まれでこの漫画の連載開始が2012年ですから、"あかり"というのは鳥飼さんの一部分であり、この友人というのも実在の友人から部分的に取ってきているのかもしれません。何にせよ、こういういい会話がされる作品は好きです。BE・LOVEは30~40歳の女性向け作品が多い漫画雑誌ということですから、同じように楽しめそうです。(『ちはやふる』も『たそがれたかこ』も同誌掲載作品)
あ、これだけだと暗い話に見えますが、一応王子様は登場します。そこら辺はちゃんとフィクション。
それで、この話を読んでいて思ったのは、人生の選択を他人に依存する人生のリスクの大きさです。"あかり"のように「イラストレーターを辞めたのは彼のため」「彼が別れてくれと言われたから別れた」という相手依存の人生のリスク。
どういう人生を選ぶかは人それぞれではあるものの、何かを決めるときに自分がこうだからということではなく、人がこうだからという理由で決めていると、後々になって失敗すると相手のせいにすることになる。でも、相手は相手の事情で生きていて、こちらが怒りをぶつけたりしても受け止めてくれない。いつの間にかいなくなっているか、「こっちが頼んだんじゃないのに自分でやって何でこっちの責任にするの」なんて言われる。
上手く行っているときはいいけれど、失敗した時の心の持ちようがどこにもなくなってしまう可能性があるというのがキツいなと。
自分ですべての部分を決断することはできないですけどね。それに、自分で選んで自分で失敗したという方が自分の非を認める辛さもあったりするので、部分的に誰かのせいにするというのもアリですし。
ただ、自分の人生の主人公は自分ですから、何かがあったとしても自分で選んだという心持ちにしておいて、心の整理をつけやすいほうが自分には向いているなと思いました。慣れれば、自分で決めて自分で納得するというのは、楽に心を平穏にできるので。