斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

Q.「北海道在住の酪農家の嫁です。長男死後夫への不満が爆発しました」 ⇛ A.「ミッドライフクライシスの可能性も」

今週は、モヤモヤ特集ということで、読者からメールでいただいたモヤモヤする相談を三日連続で紹介していきます。二日目は、夫への不満です。 

 

 

相談内容

斗比主閲子さま

いつもブログ拝見しています。北海道在住の日高と申します。いきなりですが、夫との関係に困っております。相談に乗りますとのお言葉に甘えさせてください。

 

家族構成

  • 私 40代 両親は死去。
  • 夫 アラフィフ 農家の大家族に育つ。長男跡取り。
  • 長男 闘病生活後数年前に死去。
  • 長女 中学三年生。
  • 義母 70代

酪農を営んでいます。亡くなった義父が新しい牛舎を建てる時に大きな借金を抱えました。なかなか経営が安定せず借金が減りません。

 

相談内容

今までの夫への不満を夫の前で大爆発してしまい、夫もそれによってヘソを曲げてしまいました。どう対応していいのかわからなくて困っています。

今までの不満とは、

  • やりたくない酪農の仕事を私にもさせていること。
  •  私と2人で仕事をすることに拘った夫は、当時まだ働いていた義母をセミリタイアさせた。
  • 長男が生まれたとき、仕事は義母にお願いして育児優先でさせて欲しいという私の願いを却下。結果、長男と長女の世話は義母がやることに。
  • 帰省シーズンのたびに夫のきょうだい(義妹、義弟)の世話をしなければならない。それも、酪農の仕事をした後で。
  • 夫の家事育児への協力が薄い。

酪農は休めません。月に1日ヘルパーさんに来ていただく日が休日です。体力的にもキツイですが、夫一人でこなせる仕事ではないため手伝っています。義母は朝の簡単な作業を手伝っています。育児に口出しをしたり、とにかく一言多い義母です。

二年ほど前に夫と大喧嘩しました。

仕事のこと、借金返済のこと、亡くなった息子のことなど、いろいろ重なった夫は毎日お酒を飲みながら仕事し、私がヘマをするとなじるように怒る日々が続いていました。私も耐えていたのですが、些細なことがきっかけで口論になり、大喧嘩に。

その時に今まで封印していたのかと思うほど、上記の不満が心に張り付きました。その時の喧嘩は、夫は過去のこと悪かったと言い、私も引き続き酪農の仕事をするということで、解決。夫はお酒の量を減らし、長女に勉強を教えるようにもなりました。

ところが、私はなぜかその喧嘩後、1本の感情が切れたような気分が続き、今までの不満がさらに増してきました。当然、普段の生活にもそんな不満な様子が表情に出ていたようです。

夫に触られるのが嫌でできるだけ二人きりになるのを避けたり、旦那さんが単身赴任しているお友達の家庭を羨ましく感じたり、今まで大好きだった夫が嫌になっていました。夫もそれをわかっていたみたいで、自分の趣味に没頭するという悪循環に陥っていました。さみしいとも思っていたようです。

そしてまた先週から喧嘩になってしまいました。私が「どうしても酪農以外の仕事をやりたい。そうすると、酪農の仕事ができない日もあるだろうけど、なんとか協力して欲しい」とお願いしたら、夫はやはり「仕事の優先順位が変わると困る」と反対しました。

私は今まで何度も夫に別の仕事がしたいと訴えています。別居したいとか、帰省客が帰ってくるならば私も実家に帰りたいとかも。その度に夫はキレ気味に「お前は自分勝手だ、そんなにしたいなら好きにしろ」と怒鳴り、私は怖くて好きにできませんでした。それに、夫への愛情もあったのだと思います。

結局嫌なことがあるままに20数年が過ぎ、大事な長男が亡くなり、私も以前のような夫への愛情がなくなって、やりたいことも新しいことも何も挑戦できないこの環境に嫌気がさしてきています。

そうして口論になり、私も今までの不満を再度夫にぶつけ、夫も私が自分への愛情が感じられないとフテ腐り、とうとうヘソを曲げてしまいました。怒り狂い、泣きわめく夫の姿は初めて見ました。私も言い過ぎたと感じ、謝りましたが許してくれません。

夫は「お前への愛情は変わらない。お前のために今まで頑張ってきたのになじられて、もうバカみたいだ。プライドもズタズタだ」「お前が離婚してもしなくても、酪農してもしなくてもどっちでも良い」と言っています。

 

離婚はしたくありません。

夫は決して嫌いではありません。

私は経済的に自立できていません。

酪農はあまりしたくありません。

子供に辛い思いをさせたくありません。

新しい仕事への意欲はあります。

自分でどうすればいいのか、全く頭が反応してくれません。

 

混乱したまま書いてますので、お見苦しい部分があるかと思いますが、斗比主さまにご意見をお聞かせいただけないでしょうか。

日高

 

回答

日高さん

メールありがとうございます。これまでの20数年で溜まった鬱憤がここ最近で一気に噴出したわけですね。ここまでご苦労様です。

まずは、(既にされていると思いますが)存分に友達に愚痴って、時間があれば、カラオケなどで義母や夫の悪口を叫び、これまで不快だったことを紙などにしたためてみてください。

モヤモヤは表現するまでは手に負えない怪物のように見えますが、表現してみると、少しずつ形がはっきりして、自分の中でもどう対処していいか整理され、戦える敵として見えてくるものです。

今はまず少し落ち着いて、自分のこれまでの苦労をご自身で労ってください。

 

具体的にコメントするために、いくつか確認させてください。差支えない範囲で教えて頂ければ結構です。

  • ① ご長男さんについてはご愁傷様です。ご逝去に関連して旦那さんに対する不満は何かあったのでしょうか。
  • ② お姑さんは今は(日高さんの子どもの)子育てはほぼ終わっていると思いますが、今は何をされていますか。昔に比べて今でも口うるさく、面倒な人物でしょうか。
  • ③ やってみたい仕事をする場合、酪農のお仕事はできなくなりますか? その場合、日高さんの仕事は誰かにお願いして、経営自体は成り立ちますか?(旦那さんは、これを危惧していると思われます。)

文章が多少雑多になっても、読み手(topisyu)の方で整理しますので、可能な範囲で色々教えて頂けると嬉しいです。

topisyu

 

返信

斗比主さま

お返事ありがとうございます。

あれから、夫の怒りは少し収まりましたが、まだまだぎこちない雰囲気でいます。私も家出でもしようかと考えましたが、結局しわ寄せが子供達にいきそうでできませんでした。

 

ご質問にお答えします。

 

① 長男について

長男が闘病中はずっと私が付き添いができました。夫は入院していた病院に家から2時間かけて、一日置きに来てくれていました。

ただ、長男がもう病院でできることがないと退院して家に帰ると、すぐに私に仕事をするように言ってきました。理由は私の代わりに仕事をしている義母が疲れているからというものです。長男の葬儀の翌日にも私に仕事をするように言ってきました。「いつまでもヘルパーさんに頼んでいると経済的に苦しくなるから」という理由です。

夫は仕事をして悲しみを紛らわせるようですが、私は違うのでとても辛かったです。

 

② 義母のうるささについて

これは、以前よりはマシになってます。

それでも時々爆弾を投下してきます。だいたい帰省シーズンで、私にとって義理のきょうだいたちが家に帰って来る時です。姑は自分の子どもたちをいかにもてなすかばかり考えて、私をまるで使用人のように扱います。その上、帰省客全員の食費はすべて我が家の家計から出します。義母は一切出しません。

今は酪農の朝の簡単な作業、畑仕事、晩御飯の準備が姑の仕事です。経済的には年金は全てお小遣いで、住居費、食費、光熱費食費などは全て我が家が負担しています。

 

③ 酪農とやりたい仕事の両立について

これはかなり難しいです。

できなくはないけど、続けることは厳しいです。

私が酪農をしなくなると、義母がすることになりますが、私ほどの作業は出来ないので、負担が夫に行くと思います。経営は成り立たないと断言できます。

こうやって冷静に書いてみると、やはり私が酪農をするのが、一番現実的に思えてきました……。

私は今までイライラの原因をブログにしてもツイッターにしても手帳にしても、何かに記したら倍増しそうだと思い、していませんでした。

しかし、斗比主さんがおっしゃるように少し、消化できたような気がします。

引き続き意見を頂戴したいです。よろしくお願いします。

日高

 

再回答

日高さん

いただいたご回答を受けてちょっと踏み込んだコメントをしますね。

 

長男が闘病中はずっと私が付き添いができました。夫は入院していた病院に家から2時間かけて、一日置きに来てくれていました。

一般論としては、旦那さんはよくやっていらっしゃったように見えます。ただ、

夫は仕事をして悲しみを紛らわせるようですが、私は違うのでとても辛かったです。

とあるように、長男が亡くなった日高さんの悲しみに旦那さんが理解を示したり、共感してくれたように見えなかったことが、不満となったように思います。

男性には、(酪農であれば尚更でしょうが)家庭のことで仕事を休んだり、感情的に愚痴ることを良しとしないと考える人がいます。これある意味社会から要請されてきたものであり、本人としても気付かずに、そのように思い込んでいることがよくあります。

旦那さんの場合は長男として、跡取り息子としての自負もあるでしょう。加えて、比較的寡黙で感情を上手く表に出せない人のようにも思われます。日高さんが鬱憤を爆発させたように、旦那さんにも鬱憤が溜まっていたのかもしれません。旦那さんがお酒を飲みながら仕事をしていたというのはそういうことですよね。

旦那さんも長男さんを失った悲しみがないということはないでしょうから、一度旦那さんがどういう思いを抱いていたのか、落ち着いた時に思いの丈を聞いてみると、長男さんの件については、お互いにモヤモヤが解消する可能性はあると思います。

 

それでも時々爆弾を投下してきます。だいたい帰省シーズンで、私にとって義理のきょうだいたちが家に帰って来る時です。姑は自分の子どもたちをいかにもてなすかばかり考えて、私をまるで使用人のように扱います。その上、帰省客全員の食費はすべて我が家の家計から出します。義母は一切出しません。

これについては、ご自身が酪農家の嫁であった(ですよね?)お義母さんとしては当たり前のことなんでしょうね。宗家という意識もあり、嫁は下働きをして当然。本人が苦労してきた分、同じ苦労を日高さんがして当然だと考えていると思います。

姑をすぐに変えるのは難しいですね。旦那さんをいかにこちら側に引き込むかが鍵でしょうか。

 

これはかなり難しいです。

できなくはないけど、続けることは厳しいです。

私が酪農をしなくなると、義母がすることになりますが、私ほどの作業は出来ないので、負担が夫に行くと思います。

経営は成り立たないと断言できます。

そういうことであれば、日高さんも仰るとおり、日高さんが酪農をやるのが妥当となるでしょうね。

ただ、こういう現状だからと言って日高さんが我慢するべきだとは思いません。

一連のメールを読んでいて思ったのは、日高さんとして、今、自分の人生が何のためにあるのか、自分の人生を見返して、悩まれている時期なのではないかということです。専門用語でいえば、ミッドライフクライシスですね。

というのも、日高さんが置かれた環境が、息子さんが亡くなられてから、特別に悪化しているようには見えないからです。旦那さんも一度の爆発後日高さんの気持ちに全く理解がないわけでもないし、姑も以前よりはマシになっている。

それでも耐えきれないモヤモヤがあるとすれば、それは、

  • 自分の人生の(一つの)成果とも言える長男さんが亡くなった
  • 酪農自身は自分が望んでやりたいと思ったものではなかった
  • 姑からは使用人扱いされる

こういったことの積み重ねがあり、それを大爆発を気に自覚したからのように思います。結婚後の20数年についても自分が思い描くような人生を生きられなかったということもあり、喪失感があるのではないでしょうか。新しい仕事をしたいのは、自分の存在意義を改めて確認したいということではないかと思いました。

問題の原因は、周りではなく、日高さんの心の中に(も)あるという話ですから、受け入れにくい面もあると思います。

ただ、頭では分かっていても、自分で感情の制御ができないということであれば、喪失感があまりに強いのであれば、ご自身の心のケアに重きを置くのも一つの手です。場合によっては夫婦でカウンセリングを受けてもいい。

旦那さんとの関係性で言えば、今回日高さんがメールで書かれたようなこと、旦那さんを本当に愛していることなどを、手紙にしたためてみてください。顔を合わせると喧嘩する、上手く会話ができないという時には、じっくりしたやり取りができる手紙が有効です。

また、経営の問題があるからと、酪農以外の仕事について諦めるのではなく、色々な関わり方ができるとは思います。少しでもいいから外部に触れる機会があると、気分が楽になることはなりますから。

topisyu

 

締め

この相談については、はっきりした解決というのはなかなか難しいと思います。新しい仕事をするために、酪農と家をまるごと捨てましょうとは簡単には言えない。

酪農家の仕事は家庭内で最低限で回している部分があり、しかも、借金もそれなりにあれば、誰か一人でも抜けたら、生活が成り立たなくなるでしょう。姑がもう少し何とかしてくれたらと思わないわけではありませんが、70代にどこまでやらせるかといっても限界があります。

だからといって、日高さんが自分の気持ちを無視していいかと言えばそういうことではありません。このままで行けば日高さんの心が壊れる寸前で、それをどうにかするために、感情の大爆発が起きたのではないかと思います。

こういった感情の大爆発の厄介なところは、自分自身でも制御ができなくなるところと、その感情の大爆発に周りが巻き込まれて一気に疲弊してしまうところがあります。今回の日高さんの旦那さんのような感じですね。

年齢的なものや環境的なものや、様々なものが重なると、鬱憤が溜まりがちなので、可能であれば、大爆発になるまで我慢するのではなく、小爆発を頻繁にすることをお勧めしたいところです。あまりグチグチ言う感じになるとそれはそれでいい効果はないので、ハッキリ、サッパリ、クッキリ爆発させるのが理想的ですね。

 

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※農業をしていて借金を抱えている、経営が厳しい……というと銀の匙を思い出します。暗いところも青臭いところも大好きです。

 

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