斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

『バービー』『オッペンハイマー』は観に行くけど、ワーナー公式の原爆ミーム画像への好反応を「責めても仕方ない」は、ない

今年は全然映画を観に行っていないので、そろそろ何か観たいなと思っていたら、『バービー』と『オッペンハイマー』が北米で大ヒットになっているのを知りました。

私は、夫婦のデートで『ダンケルク』を観に行くぐらい、クリストファー・ノーラン監督作品は好きなので、『オッペンハイマー』はもともと興味がありました。原爆開発の映画をクリストファー・ノーランが、普通に撮るはずがないという安心感がある。

デートでダンケルクを観る是非について - 斗比主閲子の姑日記

『バービー』は女性監督作品で史上最大のヒットになっているらしい。老いを扱っているのも個人的には関心の高いところなので、これも面白そう。

そんなわけで、まだ両作品とも日本で公開はされていないけれど、夫婦でデートで観に行くつもりです。

という前置きを書いた上で、次の毎日新聞掲載の映画評論家の町山智浩さんへのインタビュー記事を批判します。

バービー問題、責めても仕方ない? 町山智浩さんが語る「教訓」 | 毎日新聞

有料登録してない人は全文読めませんが、要約すると次のような内容です。

  • ワーナーの公式Twitter(X)アカウントが『バービー』と『オッペンハイマー』をコラボさせたネタ画像に、複数の好意的なコメントを投稿。
  • 町山さんとしては、①「ネタ画像が映画のネガキャンになるのはもったいない」、②「ワーナー公式アカウントも外注かアルバイトか若者が運営していて、偉い人はチェックしてないものだから、ワーナーの意志ではない」ということで、責めても仕方がないと考えている。
  • 記事の後半では、『バービー』と『オッペンハイマー』のお勧めポイントを紹介しつつ、ワーナー公式は異例の速さで本件を謝罪したことを補足しつつ、「AIでミームは一瞬で作られるから、公式アカウントにとっては今回の件は教訓になった」と締め。

大枠は理解できます。映画のネガキャンになっているのはもったいないし、謝罪も速かった。ただ、この件でワーナー公式を「責めても仕方ない」として、責める・批判することを止めるように促すのは、それはないなと私は思いました。

まず、そもそものミーム画像と、ワーナー公式Twitterアカウントの反応を知らない人も多いでしょうから、いくつかあるうちの一つを紹介します。(削除済みなのでスクショ画像)

めっちゃノリノリのバービーの後ろで爆発?が起きている画像tweetに対し、ワーナー公式アカウントが「忘れられない夏になるね!」とコメントしているものです。他の画像も、基本的には同じようなもので、原爆を茶化している(軽視している)ように見えるもの。どれも、RTもいいね!も凄い数になっていたので、だからこそ、公式アカウントはリアクションしたんでしょう。

アメリカでも色んな人がいますが、日本への二つの原爆投下をポジティブに見ている人って結構いるんですよね。あとは、世界最大の核保有国として、核に価値を見出している人も、当然いる。なので、日本人からするとセンシティブな原爆投下をネタにするのに抵抗感がない人がそこそこいるのは想像できます。

その上で、だからこそ、原爆ミーム画像と、その画像へのワーナー公式のポジティブなリアクションに対しては、しっかりと「責める」意味はあると思います。映画を観るか観ないかとは別のこととして。

何しろ、現在進行形で世界では核兵器がいつ使われるかという状況にあります。

ウクライナ反攻が成功なら「核兵器使用」、ロシア前大統領が言明 | ロイター

関連して、日本では、今年5月に広島でG7が開催され、オバマ元大統領に続いてバイデン大統領も原爆資料館を訪問しました。

G7首脳 バイデン大統領ら広島原爆資料館へ 難航した水面下交渉 | NHK政治マガジン

この調整にはかなりの苦労があったようですが、G7で核廃絶の議論が全面的に進んだかというと必ずしもそうではなく、被爆者からは「裏切られた」という批判がありました。

「廃絶期待、裏切られた」 被爆者、G7軍事支援批判 | 毎日新聞

こういう流れがある中で、核使用を茶化すこと、それに大手映画配給会社が好意的な反応を示したことを責める人がいても、私はまったくおかしくないし、当然のことだと考えます。

「被爆者の苦しみ消費しないで」署名開始 バービーの「原爆軽視」で:朝日新聞デジタル

8月6日は広島に、8月9日は長崎に、アメリカ軍によって原爆が投下された日。核を使えば戦争は終わるなんて発想で、馬鹿げたことは起こしてはならない。