斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

新入社員意識調査「私と仕事とどっちが大事なの!?」→4割「あなた」、6割「仕事」

こんなニュースがありました。

「仕事終われば帰る」過去最高48% 新入社員意識調査:朝日新聞デジタル

まわりが残業していても、自分の仕事が終われば帰ろう――。そう考える新入社員が約半数にのぼることが、日本生産性本部が26日発表した新入社員の意識調査でわかった。

調査をしたのは日本生産性本部です。

 

日本生産性本部と聞いてご存じない方も、毎年新入社員にネーミングをしている団体と言われたら、ピンとくるかと思います。

直近のネーミングとしては、2011年は『はやぶさ型』、2012年は『奇跡の一本松型』、2013年は『ロボット掃除機型』、2014年は『自動ブレーキ型』、2015年は『消せるボールペン型』、2016年は『ドローン型』、2017年は『ポケモンGO型』といった感じです。単に前年度に流行ったものを無理やり当てはめていて、もともと存在意義がないのに、さらに迷走している感じがありますね。

この日本生産性本部が新入社員向けに行っている調査で、同僚が残業していても自分の仕事が終われば帰ると答えた新入社員の割合が、前回の調査から10ポイント増えて、約5割になったというものです。人によって色々思うところがある調査結果ですよね。

 

私の頭の中では、この調査結果についての受け止め方としては、

  1. 日本人の多数派は「プライベートを重視する社員がこんなに増えているのか」と驚きを持って受け止めていて、
  2. それより少し落ちる数の人が「自分の仕事が終わって帰るなんて当たり前でしょ。そんな人がまだ5割しかいないの?」と当惑して受け止めていて、
  3. 極少数の人が「えー、仕事が終わるかどうか関係なく、定時で上がるもんでしょ」と設問自体がありえないこととして受け止めて、
  4. さらにもっと少ない人が「そもそも定時まで働かなくても帰っていいじゃん」と変だなーと受け止めている

こんな風に分けられるイメージです。

 

朝日新聞が記事の書きぶりは、1つ目の視点で書かれていることからも、多数派は1つ目の「プライベートを重視する社員がこんなに増えているのか」ということかなと思います。朝日新聞は労働時間が長いようなので、記者にバイアスがかかっているのかもしれないですけど。

朝日新聞社に長時間労働では初の是正勧告 電通だけではない、報じる側の課題は(Buzzfeed)

私は、この4択でいえば、3~4の間ぐらいの価値観です。残業しないと仕事が終わらないとしたら、人員配置か、仕事の割り振りがおかしいわけで、それはマネジメントに問題があるという考えです。

 

せっかくなので、調査元を読んでみようと、日本生産性本部のプレスリリースもチェックしてみました。

公益財団法人日本生産性本部 - 平成29年度 新入社員 働くことの意識調査結果 〜「人並みに働き 楽しい生活をしたい」志向強まる〜

この結果を読んでみた限りでは、記事でも触れられている通り、仕事よりプライベートを重視する考え方は増えているようですが、それでもまだまだ仕事が大事という印象です。

いくつか興味深い結果をピックアップすると、たとえば、デートか残業かのどちらを選ぶかという鬼畜な設問について、6割以上の新入社員が残業を選んでいます。「私と仕事とどっちが大事なの!?」に対して「仕事」と思っていると。

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あとは、若いうちは進んで苦労すべきかという設問について、ここ数年で「苦労すべきだ」が急激に減っているものの、まだまだ5割ぐらいを占めています。

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調査結果はこんな感じなんですが、先ほど書いた通り、私は3~4の価値観なので、設問自体がありえないと思いました。

デートか残業のどちらを選ぶかもそうだし、若いうちは進んで苦労すべきかどうかって、前提として、残業はするもんだし、苦労はするもんだという価値観があってのものですよね。

もちろん、残業を選ぶ人がいてもいいだろうけど、調査する方がバイアスかかっていて、そういう設問ばかり聞いていれば、回答者も誘導される部分があります。生産性を研究する団体なのだから、残業とか苦労とか生産性を下げさせることはさせない方向にバイアスがかかっているほうが、まだ分かるんですが。どういうことなんでしょうね。

 

最後にちょっと書いておきますけど、「若いうちは進んで苦労すべきだ」については、私は断然『No』です。若かろうが歳を取っていようが、しなくていい苦労はしないほうがいい。

苦労をした人間ほど他人の苦労が理解できるとか、自分の限界が分かるとか、そういうことが苦労をすることの利点として紹介されます。それがまったくないとは言わないけれど、苦労をすると、生存者バイアスが働いて「私が苦労したんだから他人も苦労すべき」と思う人や、苦労で潰される人が出て来ます。

だいたい、「若いうちは進んで苦労すべきだ」と言っている人には、若者に苦労をさせて自分は楽をしている人が結構いるんですよね。

ブラック企業の「若いうちから活躍できる職場です!」という謳い文句と同じで、「「若いうちは進んで苦労すべきだ」は、やりがい搾取に貢献している言葉だと思います。