私が毎週更新されるのが楽しみで楽しみでならない漫画の一つに、週刊少年サンデー連載の『よふかしのうた』があります。(サンデーうぇぶりでも同時連載)
※この表紙と題字、格好いいよね
どんなお話かというと、
『学校になんとなく行く気がなくなった、中学二年生の夜守コウ。夜中に街を散歩していたら、ひょんなことから出会った正体不明の女性の七草ナズナが吸血鬼だった。彼女になんとなく血を吸われてしまい、よく聞くと吸血鬼に恋をしたら吸血鬼になれるらしい。なんとなく吸血鬼になりたいコウは、ナズナと一緒に夜を過ごしながら、彼女に恋をすることができるのかーーー!?』
という感じです。
「紹介が凄いふわっとしてない?」と思ったのはその通りで、実際最初の頃の話は凄いふわっとしてます。1話が試し読みできるので読んでみてください。
どうです? ふわっとしてますよね!? 掴みがめちゃくちゃいい漫画ってことはないと思います。
最初に白状しておくと、私はこの『よふかしのうた』のふわっとしている感がいまいちぴんと来なくて、3巻まで読んで続きを読むのを止めていました。夜の街で人助け的なことをしたり、他の吸血鬼仲間も登場してわちゃわちゃしたりするんだけど、「男の子が女の子に恋をするかどうかという古典的な話で、その女の子が吸血鬼って設定だけしかなく、盛り上がりに欠ける」って印象でした。
それが、まったく印象が変わってくるのが、3巻後半からです。
※後ろに小さく写っているのが他の吸血鬼
ナズナやその仲間たちとはまったく違った、狂暴化した男性吸血鬼と、吸血鬼を"処分"する探偵さんの登場です。
※手前が探偵さん。少年誌の主要登場人物が堂々とタバコ吸ってる!
これまでは何となく、コウがナズナやその吸血鬼仲間と一緒に夜を過ごしているだけで、いつかひょんなことから恋をしてコウは吸血鬼になるのかなーと思っていたら、全然話が変わってきます。
何しろ、この探偵さんは決して死なないはずの吸血鬼の"倒し方"を知っているからです。吸血鬼同士であっても相手をどうにかできるわけでもないと分かっているのに、普通の人間のはずの探偵さんが、七草ナズナはもちろん、これまでコウが仲良くなった善良な吸血鬼たちを次々と狙っていきます。無敵の吸血鬼に弱点があるということで、吸血鬼たちに余裕が失われていく。
ここから9巻までは、シリアスな要素が多分に含まれるようになり、ギャグと恋愛とミステリーが毎ページ混在しながら話が進むようになります。
「恋愛とミステリーは分かるけど、ギャグってなに?」と思いますよね? コトヤマさんという名前でピンと来ないでしょうか。アニメ化もされた『だがしかし』という駄菓子ギャグ漫画がコトヤマさんのデビュー作です。
『だがしかし』はひたすらずっとギャグです。『よふかしのうた』ではシリアスになりすぎたところでさらっとギャグ要素が入ってくるんですよね。そのバランス感が最高に良くて。
何しろ、探偵さんは言葉では簡単には表せない理由で、吸血鬼たちを憎んでいます。やり口も吸血鬼を人間だと思っていないから、相当非道なことをする。割といい"人"たちの吸血鬼たちが苦しむ。そんなときに、ところどころで場を和ませるような、ギャグがさらっと入ってくるので、見ていて辛くなりすぎない。
3巻後半から10巻前半の探偵さんとの絡みの中で、七草ナズナという吸血鬼の誕生の秘密も明らかにされていきます。これがミステリー要素で、進み方も凄くいい。
で、探偵さん編(私が勝手に言っているだけです)が終わって一段落して、また、だらだらとした日常パートに戻るかなと思いきや、また、さらに物語がヒートアップします。
一言でいえば、少年漫画のバトルもの的要素が入ってきます。
「ふわっとした物語が探偵さんの登場でシリアスになったと思ったら、なんでバトルになるの?」って思うでしょうが、私も非常に困惑しました。
※10巻以降のコウくんが格好良くて、格好良くて……
でも、このバトル要素が全然嫌じゃないんですよね。何しろ、スタイリッシュなんですよ、動きが。『だがしかし』のイメージとはまったく違う、普通に僕のヒーローアカデミア的な異能バトルが繰り広げられます。
あわせて、探偵さん編の裏側でじわじわ進んでいた、コウの友達で同級生の夕マヒル(「たまひる」ではなく、「せき まひる」と読みます)が、はっきりと家庭事情が理由で吸血鬼になろうとする話が急激に進んでいきます。
このマヒルとマヒルの親との関係が重たいんですよね。探偵さんの過去のエピソード以上に重たい。でも、その合間合間に、ハートフルなギャグがさらっと入ってきて、なごむんですよ。
11巻以降は、もはや、ギャグ・恋愛・ミステリー・バトル漫画です。
自分で言っておきながらよく分かんないし、要素詰込み過ぎでしょって思うでしょうけど、信じられない人はぜひ読んでみてください。まったく詰め込まれすぎてなくて、凄まじいバランス感で成立していることに驚くはずです。めちゃくちゃ面白い。
しかも、絵柄はずっとキレい。キャラクターは格好いいし、同時に可愛い。キャラクター同士のギャグっぽい会話も、とても愛おしい。最凶最悪な一人のキャラクターを除けば、登場人物全員に愛着が湧きます。新キャラも前から登場していたかのように、さらっと合流してまったく違和感がない。
※最新12巻に登場する二人の吸血鬼はとにかく魅力的
ちょっと話は変わって、私は主人公たち中学二年生の子どもたちの親の年齢ですから(正確にはコウの母親は私よりずっと年下)、親視点で少年・少女漫画は読んじゃって、大人の描かれ方が雑だと「なんだかなー」と思ってしまうことがあります。
『よふかしのうた』では大人も丁寧に描かれていて、その辺もとても安心して読めています。子ども向けだから安易に大人を敵にするのって、大人を画一的に描いているようで急に冷めちゃうんですよね。
※少年サンデー連載で完結の『BIRDMEN』にも通じる大人の安心できる描かれ方
と、こんなところで、レビュー終了となります。
私はサンデーうぇぶりで毎週水曜日の0時過ぎに、『よふかしのうた』と『葬送のフリーレン』を必ず読んでから寝るようにしているぐらい、この作品が大好きです。
ちなみに、アニメは明日から放映されます。
本作の『よふかしのうた』というタイトルのもとになった、楽曲「よふかしのうた」のCreepy Nutsがアニメに楽曲提供しているのが最高ですね。
私のレビューを読んで興味を持たれた方は、ぜひ4巻以降まで読んでみてください。面白いですよ。