斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「嫁は気に入らないが、孫は可愛いので嫁がいなくなってしまえばいい」

先日、Hagexブログ大好きっ子のid:Aodreyさんから、

ペアレントトレーニングについては、トピシュさんのこの記事で読んだばかりだったので偶然のタイミングにびっくりしました。

ネットでの話題を手広く網羅して、モヤモヤがすっきりする「各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと」を読んだ - Still Life

こんな風に言及され、「そういえばAmazonの紹介ページをブクマして終わっていたな」と『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』 を読んでみました。

各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと

各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと

  • 作者: 宋美玄,姜昌勲,NATROM,森戸やすみ,堀成美,Dr.Koala,猪熊弘子,成田崇信,畝山智香子,松本俊彦,内田良,原田実,菊池誠
  • 出版社/メーカー: 株式会社メタモル出版
  • 発売日: 2016/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (3件) を見る
 

 

私も☆3つ

内容は、よくあるネットのデマや思い込みや似非科学について、各分野の専門家がどう間違っているかを解説していくものです。以下は目次ですが、代表的なものはほとんど網羅されているんじゃないでしょうか。

第1章 育児 

  • 自然分娩が一番いいの?
  • 母乳じゃないとダメ?
  • 体罰って必要でしょうか?
  • ホメオパシーをすすめられました
  • 紙オムツやナプキンは有害?

第2章 医学 

  • 薬は飲ませないほうがいい?
  • ワクチンは毒だと聞きました
  • フッ素って危ないの?
  • 発達障害はニセの病名?
  • 整体やカイロプラクティックは必要 

第3章 食 

  • 砂糖や牛乳はよくないの?
  • 玄米菜食が一番いいって本当?
  • マーガリンはプラスチック?
  • 残留農薬が気になります
  • 食品添加物は危険なもの? 

第4章 教育 

  • 「誕生学」でいのちの大切さがわかる?
  • 「2分の1成人式」は素晴らしい?
  • 江戸しぐさを学ぶみたいですが…
  • 「親学」ってなんでしょうか?
  • 「水からの伝言」って本当? 

番外編

  • 放射能って大丈夫なの?
  • EMって環境にも体にもいい?

この分野のまとめ本としてはとてもいいと思います。ただ、レビューをするとすれば☆3つでしょうね。理由はAmazonのこのレビューとほぼ同じです。

レビューは真っ二つに割れているが、これは星3つが妥当だろう!

子育てに限らず、世の中には大きく分けて科学派と神話派がいる。ここでいう「神話派」とは、ギリシア神話とか古代神話とかの「神話」ではなく、根拠のない口伝や都市伝説のようなものを真に受ける人のことで、言葉の響きでそう呼ぶだけである。また、もちろん、科学派の中にもオカルトを少し信じる人もいるし、神話派にも科学的であることを大切にする人はいる。だから、あくまでも、大きく分けて、ということだ。

本書は、子育てに関して、まだそうした「属性」の定まっていない中立派の新米パパ・ママがターゲットになっている。決して、神話派の人たちを科学的に説得して鞍替えさせようとするものではない(もしそういう意図があるのなら、あまりの弱さに星1つである)。

すでに、ある程度「科学派」である自分にとって、内容に目新しいことはなかった。

知っている人は新しいことはなく、知らない人にはちょっと優しさが足りなくて、嫌いな人は説得されないという印象。

例えば、『はじめに』から、宋美玄さんが飛ばしてます(笑)

「どれを選択をしても、子どものために必死で考えた結果だからいいと思う」というような安易な考えにも陥りがちです。

(p.5)

考え方自体は安易だけれど、一応本人は必死に考えているので、それを安易な考えと言っちゃうと、まあ、反感を買いますよね。最初から線引きをしているともとらえられる。

ただ、繰り返しだけど、この種の話のまとめ本としては有益だと思います。誰かに網羅的に説明するときに手元にあると便利です。

 

笑ったところ・気になったところ

その他、細かいところで笑ったところ、気になったところを紹介します。

「おかあさんやすめ」「ハハキトク」で表されるような料理は不適切で、「まごわやさしい」で表される料理は正しいとする考え方について、国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子さんが書かかれたコメントには思わず笑ってしまいました。

姑による「嫁は気に入らないが、孫は可愛いので嫁がいなくなってしまえばいい」というような気持ちをストレートに表現したもの……こんな呪いを唱えるような人たちの言い分を聞く必要はありません。

(p.123)

呪いですよね!

 

次に、名古屋大学の内田良さん(組体操のプラミッドの危険性を指摘したことで有名ですよね)の「2分の1成人式」についてのコメント。

そもそもサプライズというのは、誰が最も満足するかといえば、サプライズを仕掛けられた側ではなく、仕掛けた側です。

(p137)

いや、ほんと、これは、 すべてのウェディングハイな人々に贈りたい言葉ですね!

 

最後は、ちょっと気になったところで、歴史研究家の原田実さんが「親学」についてのコメント。

先に挙げた11箇条は現代の親子をとりまく現実的な環境にそぐわないだけではなく、どうしてこれらの項目を取り上げたかの妥当性にも欠けています。

(p.158)

「親学」で掲げられている考え方は確かに不適切と思えるものが多いんですが、11箇条には、

(4)PTAに父親も参加。子どもと対話し教科書にも目を通す

というのが含まれているんですよね。これは前から書いていますけど、片働き共働きが一般的になっている中ではPTAが専業主婦で回すものではなく、父親も一緒に関わっていくのは私は必須だと考えています。

初心者でも分かるPTA ~マクロ編(全国組織、歴史、議論になる背景、地域差)~ 

初心者でも分かるPTA ~ミクロ編(目的、役員・委員の活動、不満、解決策)~

紙面の都合と方向性から丁寧にコメントできないのは仕方ないとしても、全部まとめて現実的ではないと書いちゃうのは乱暴だと思いました。むしろ現代的なのに。この辺のところが散見されたので☆3つというのもあります。

 

こんな感じですね。

 

参考文献が大量にあるのはありがたいです。まずは『児童精神科医ママの子どもの心を育てるコツBOOK』を読んでみるつもり。

 

なお、共著者である森戸やすみさんの単著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』は子育ての科学派・神話派ともにおすすめしたい本ですね。子どもが産まれた友達にプレゼントしたら喜ばれると思います。