斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

知人が糖尿病になったので糖尿病について調べてみました

知人が糖尿病になりました。

自分には経験がないことなので、今後の付き合いで注意する点、自分ができること(しないほうがいいこと)を確認するために、とあるブログで紹介されていた、糖尿病の作者が書いた実録風闘病小説をまず読んでみました。平山瑞穂さんの『シュガーな俺』です。

シュガーな俺 (新潮文庫)

この記事は、上記の本で興味深かった点の紹介と、糖尿病に関して自分が調べたことのまとめをセットで行うものです。専門家でもありませんから、素人がメモ書きとしてまとめた程度のものとしてご覧になって下さい。

 

糖尿病について

まずはここから。名前の由来は、糖尿病患者の尿が甘いことから。

病名「糖尿病」の由来について

糖尿病は血糖値が高くなる病気。なぜ、血液中の糖の量が多くなるかと言えば、食事によって吸収した血中の糖を細胞に取り込むためのホルモンであるインスリンが作用していないから。インスリンが作用しないのは、膵臓からインスリンが分泌される量が少ないか、インスリンが上手く働かないかのどちらか。

糖尿病ってどんな病気?|厚生労働省

糖尿病の初期症状としては、多尿・頻尿、喉の渇き、体重の減少など。これらの症状は理屈を聞けば分かりやすくて、血液中の糖を腎臓が尿で排泄しようとするから多尿・頻尿になり、多尿・頻尿になれば身体の水分が減るから喉が乾き、血糖をエネルギーにできないから脂質や筋肉を使っちゃって体重が減る。こういうのを知ると人間の身体って、繊細なバランスでよく出来ていると感心しますね。

アステラス製薬|なるほど病気ガイド|糖尿病 病気の基礎知識

 

糖尿病で恐ろしいのは合併症

糖尿病では、血糖値の上昇で昏睡したりする症状もあるわけですが、それより恐ろしいとされているのは、糖尿病に起因する合併症です。

糖尿病で恐いのは合併症です(オンライン糖尿病教室)|京大糖尿病・栄養内科|

糖尿病による悲劇をさけるためには、その合併症について正しく理解することが不可欠です。糖尿病で病院に行って、コントロールが悪いと「目が見えなくなる」とか 「腎臓が悪くなって透析を受けなければならなくなる」などと脅かされた方も多いことと思いますが、実際に途中失明や透析導入の原因の ナンバーワンが糖尿病なのです。

このような糖尿病による目の病気(糖尿病性網膜症)や腎臓の病気(糖尿病性腎症)に、 糖尿病による手足のしびれなど末梢神経の病気(糖尿病性神経障害)を加えた三つを昔から糖尿病の三大合併症と呼んできました。 また、糖尿病のコントロールが悪いと、細菌などに対する抵抗力が弱まり、ひどい感染を起こす危険が増すことなども有名な話です。

血糖が高い状態は血液がドロドロであるため、血液が血管を流れにくくなったり、流れても血管を傷つけてしまうのが、合併症が起きる原因ですかね。

足が腐るというのは、糖尿病だと免疫力が低下するために、足に傷がついたときに細菌の感染が拡大するから。合併症である糖尿病性神経障害によって、足がしびれているため、壊疽が広がっても痛みがなく、気付いたら足の大部分が壊疽していたみたいになるようです。

小説では、傷がつく可能性があることから、糖尿病患者は深爪にならないようにも注意しているという記述がありました。

 

糖尿病には大きく2種類ある

糖尿病は、遺伝に基づき、食べ過ぎ・運動不足・ストレス過多でなるとされている2型が日本では95%以上とメジャーですが、2型という以上、1型もあります。自分は、この小説を読むまで、1型の存在は知りませんでした。妊婦がなる妊娠糖尿病は知っていましたが。(ちなみに、1型・2型・妊娠糖尿病以外のものもあるようです。)

f:id:topisyu:20140908174809j:plain

※画像は、糖尿病 医療従事者向け||くわしく知る循環器病(医療従事者向け)|病気について|国立循環器病情報サービスより

妊娠糖尿病については詳しくはこちらをどうぞ。妊婦の8人の1人が罹るのに、まだまだ誤解が多い。

妊娠糖尿病に対する誤解と食事療法 - ファイル - アピタル(医療・健康)
妊娠糖尿病ってどんな食事をすれば良いの? - とらねこ日誌

1型は、膵臓にある、インスリンを作るβ細胞が破壊され、インスリンが不足するために起こるもの。原因は生活習慣からくるものではないとされています。発症者の大半は子供。完治することはなく、血糖値を抑えるため一生インスリン注射をすることになります。2型も基本完治することはないようですが、インスリンが分泌されていないわけではないというのが違いでしょうか。

18歳未満であれば健康保険以外に自己負担の補助がありますが、生涯インスリン注射をし続けることには経済的負担があります。平均して月額1万円~2万円ぐらいでしょうか。

f:id:topisyu:20140909034337p:plain

※画像は、医療費について | DMアンケート -糖尿病NETより

自分が『シュガーな俺』を知った元ブログを書かれていた方は、お子さんが3歳で1型になったそうです。1型の子を持つ親が何を考えているのか冷静に書かれているのですが(身バレするリスクを懸念しているようなので、ブログの紹介はしません)、その子以外のきょうだいの健康診断で保健師さんから「上の子が糖尿病にかかるなんて、家庭での食生活に注意するように」というようなコメントがあって相当モヤモヤしたそうです。この保健師さんは1型について誤解がありそうですよね。自分も、調べてなかったら同じようなことを言っていたかもしれない。

 

日本人は糖尿病にかかかりやすい

不摂生が原因と言われている2型でも、そもそも遺伝的要因が関与しているというのは分かっています。

2型糖尿病発症に関わる遺伝子領域ANK1を発見 | 理化学研究所

糖尿病患者のおよそ9割は2型糖尿病が占めています。2型糖尿病の発症には遺伝要因が関与しており、今までに国内外の研究によって約50の関連遺伝子領域が見つかっていますが、多くは欧米人を対象とした解析で発見されたものです。欧米人の2型糖尿病患者では肥満の関与が大きいのに対して、日本人をはじめとした東アジア人の2型糖尿病患者では肥満の程度は軽いことが知られており、人種によって2型糖尿病を引き起こす仕組みが異なっていると考えられています。

そして、日本人は欧米人に比べれば肥満の程度は低いのに、2型糖尿病の患者数は多い。

遺伝的体質と糖尿病(オンライン糖尿病教室)|京大糖尿病・栄養内科|

我が国では最近40年間で30〜50倍と2型糖尿病が著しく増加しているのに対し、欧米では5〜10倍と増加はしているものの我が国よりもはるかに緩やかです。 その結果、患者の実数も人口比にすると我が国では欧米の1.5〜2倍になっていると考えられています。 欧米人に比べ、日本人の摂取カロリーは少な目で肥満者も目立たないのに、 2型糖尿病が多いのは、日本人が民族的に2型糖尿病になりやすい体質(遺伝的素因)を 持っているためと考えられます。

人種間でこれだけ差があるとすると、日本人が不摂生で2型になるといっても、何だか不公平な気になりますね。

2型になりやすいかは、まずは遺伝がベースになるので、遺伝的になりやすい人は、そんなに不摂生をしていなくても、(糖尿病で結果的に痩せるというわけではなく)痩せていても2型になっちゃう。

不摂生が2型の100%の要因と考えていると、罹患者を誤解することにもなるし、十分摂生していれば自分は大丈夫だと安心しちゃうことにもなるわけで、遺伝の要因があるということは認識しておきたいところですね。親族に糖尿病患者がどれだけいるか。妊娠糖尿病でも同じです。

 

日本の糖尿病人口は950万人

厚生労働省の推計では、2012年で糖尿病であると強く疑われる人が950万人、可能性を否定出来ない人が1100万人いるようです。合計すると、日本人の6人の1人が関係するわけですね。国民病と言われるのがよく分かる。

f:id:topisyu:20140909023242j:plain

※画像は、糖尿病人口が950万人に増加 予備群は減少 [国民健康・栄養調査] | 資料室 | 糖尿病ネットワーク -生活エンジョイ物語より

糖尿病の要因としては加齢もあり、糖尿病と予備群の人の割合は、男女ともに、40代なら10%、50代なら20%、60代なら30%、70代なら40%と大体階段状になっているようです。

祖父が70代で糖尿病になった時、母が「あの人はコロッケばかり食べていたから」と愚痴っていましたけど、この割合を考えてみると、本人にどこまで非があるのかと思いますね。もちろん、食事や運動で何とか抑えることができたとしても……。

 

小説の見どころは食事療法

ここまで、『シュガーな俺』についてほとんど触れていませんが、読んでいて一番勉強になったのは、2型の患者の食事療法です。

主人公がほとんど料理ができず、しかも共働きというところがスタート地点で、どうやって血糖値を下げるために、食生活を改善するか(糖尿病の治療のための食事を作るか)を考えるプロセスが面白いです。

主人公が完璧主義なせいか、そのままマネするのは厳しいと思いますが、食事を1単位80kcalとして、6分類した食品+調味料を、規定のカロリー数を取るために、それぞれどれだけ摂取すればいいのかという、食品交換表の概念は、糖尿病だけではなく、ダイエットでも有効だと思います。

食品交換表『糖尿病の為の食事について』

 

締め

小説の他の見どころを紹介しておくと、糖尿病患者が自分の症状についてどう感じているか、周りの反応がどう気になるかが赤裸々に書かれている点ですね。

自暴自棄になって、既婚にもかかわらず他の異性と不倫をしそうになっても生殖器が機能しないとか、自分でちゃんと食事療法をしていてストレス発散のために少しアルコールを飲んでいるのを咎められるイライラとか、そういうなかなか表で読みにくいことも、小説という体裁だからたぶん書けているし、読み手も受け止めやすい。当然、夫婦喧嘩もあります。

主人公が、「自分がこれだけ頑張っているのに、なぜ不摂生をしているあいつらは糖尿病にならないのか」とふてくされるところもあって、そういう人間臭いところもいい。

 

糖尿病について色々知っていくと、遺伝でなりやすいのはあっても、できればならないほうがいいなと思ってきますね。昏睡したり、手足にしびれがあるだけではなく、合併症が恐ろしいし、食事療法も大変そう。

足が腐ってもいいから好きなものを食べたいという人がいるのは、肺がんになってもいいからヘビースモーカーを貫きたいという人と同じく、自分の身体なのだから好きなことをして生きていたいということだと思います。ただ、その人の家族からすれば、その人が糖尿病で合併症を発症して、動きが取れなくなった時に誰が介護をするのか、通院の負担等を考えれば、どうにか糖尿病に罹らないように、悪化しないようにして欲しいという気持ちになりそう。赤の他人というわけではなく、家族だからこそ。

 

なお、色々調べてみましたが、京大のオンライン糖尿病教室が自分には一番勉強になりました。

糖尿病教室|京大糖尿病・栄養内科|

作者の鍵本先生による改訂版もあります。なんて、ありがたい!

かぎもとクリニック オンライン糖尿病教室

 

以上、本題です。以下、余談です。好きな人だけどうぞ。

 

 

 

余談

真面目な話がメインになってしまったので、箸休めに、発言小町の糖尿病に関する相談を紹介しておきます。

本人、パートナー、第三者という、MECE感のあるトピ紹介をしてみました。他人視点になれるのが小町の良い所ですね。


甘いもの好きな人が糖尿病になった時に周りから受けるだろう、一番厳しいコメントがずらーっと並んでいます。同じようなことが繰り返し書かれていて、思わず消化不良になってしまいそう。

 


食に拘りがある100kgの巨漢の夫が2型糖尿病になってしまったという相談。数多くのコマッチャのアドバイスを受けた結果か、食生活を変え、夫の意識も変わったそうです。途中、コマッチャ同士で、炭水化物の定義、ダイエットの定義論争が勝手に始まっているのが面白い。

 


婚約者が1型という話を聞き、どう捉えたらいいか悩む母親の相談です。実際に、1型の罹患者の方の声が書かれています。ただ、回答が出揃ってから、

追加情報となりますが、婚約者さんと娘は福祉制度の整った国に住んでおり、幸い医療費の問題は無いようです。

これを書いてしまうトピ主さんは、酷いですね(笑)

 

なお、これは、小町とは関係なく、どうでもいいことですが、topisyuの『知人』の定義には、自分が知っている人物であり、自分や家族も含みます(追記ですが、具体的に記載しないのは、病気のことであり、関係性を明らかにしたくないからです。ただ、それでも、調べたことは意味のある情報と考え、全く契機がないのも、それはそれで変なので『知人』としています)。

釣り師が語る燃えない結婚論・育児論の書き方 - 斗比主閲子の姑日記

 

それでは、皆さん、良い一日を!