斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

はてな上場おめでとうございます!昨年中だともっと良かったけど業績は好調ですね!!

このブログははてなブログというブログサービスを使っているのですが、その運営会社である株式会社はてなの東証マザーズへの上場が承認されたそうです。

せっかくなので、この上場の機会に公開された情報を眺めてみました。Twitterで適当に感想を呟いていたのですが、あまりに適当すぎたので、少し見直してこの記事は書いています。

新規上場のための有価証券報告書 ← 数字や図表の出所はすべてこちら

 

 

前期が増収増益の最高益?今期もかなり調子がいい!

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上場する時は業績が成長している時が望ましいです。「右肩上がりですよ。これから成長するから高い値段で株を買ってね!」と投資家にアピールすることができますので。

はてなは少なくともH26から上場準備を始めているのですが、H24、H25、H26の業績はいまいちパッとしていませんでした。それをH27には成長しているように見える業績にでき、H28の1QもH27以上の業績が期待できるような数字になっています。

ただ、今は日経平均がここ1年で最安値をつけているぐらい相場が悪いので、上場するタイミングとしては少しもったいないですが。

 

オウンドメディア運営サービスが成長し事業は三本柱に

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この成長を実現したのはコンテンツマーケティングサービス事業の成長です。この事業の具体的な内容は、企業のオウンドメディア運営のサポートと、ネイティブ広告等です。

ネイティブ広告は、2012年にライフネット声明のキャンペーンをしていたりしましたね。(ライフネット生命キャンペーンの仕掛けと数値を公開します - はてなの広告営業 mtakanoの日記

オウンドメディア運営は2014年3月に初めたばかりのサービスですが大きく収益に貢献しているようです。リクナビNEXTジャーナルとぐるなびのみんなのごはんと楽天のそれ どこで買ったの?が有名でしょうか。自分もリクナビNEXTジャーナルには寄稿したことがあります。

 

他の事業は、はてなブックマークやはてなブログなどのコンテンツプラットフォーム事業。もう一つは、テクノロジーソリューション事業です。テクノロジーソリューション事業は任天堂のMiiverse、KADOKAWAのカクヨムでしょうか。

社長が訊く『Wii U』 Miiverseプロデュース篇|Wii U|Nintendo

カクヨム - 「書ける、読める、伝えられる」新しい小説投稿サイト

 

この3つの事業がの関係は以下の図が分かりやすいです。

ブロガー 斡旋

コンテンツプラットフォーム事業で作ったシステムとブロガーをコンテンツマーケティング事業で各企業に提供。同じくコンテンツプラットフォーム事業で培った技術をテクノロジーソリューション事業で各企業に提供。

 

H27の販売実績を見ると、この三つの事業がバランスよく売上を叩き出していることが分かります。かなりいい形で事業が展開できていますね。誰がこの絵を描いたんだろうか?

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なお、販売先では一時期ほどではないにせよ任天堂向けが3割となっています。Googleはブログ等での広告であるため比較的安定しているかもしれませんが、大手取引先への依存はちょっと気になるところですね。

 

ユーザー数も毎年50万人増

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三つの事業のまさにプラットフォームとも言える、コンテンツプラットフォーム事業ではちゃんと毎期ユーザー数が伸びているようです。はてなフォトライフや人力検索はてなはほとんどユーザー数が伸びることはないでしょうから、これはほぼはてなブログでの登録数増と考えてもいいかもしれません。ここにないサービスは少なくとも投資家にアピールできる状況ではないと考えられます。はてなハイクとか。

何にせよ、ユーザー数が増えているというのは利用者としても安心材料です。

 

従業員数89名、平均年齢32歳、平均給与5百万円

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気になる中の人の状況ですが、皆さんやはり若いです。32歳。平均給与は5百万円です。

これまでの社員さんは株やストックオプションを持っていますから、上場で株の売却益を取れるでしょうが、ここから入社される社員さんはそういうことはほとんどないでしょう。直近1年で24名も社員さんが増加しているわけで、旧社員と新社員のモチベーションであったり、インセンティブの調整というのは、非常に重要になってきます。どこの会社でもあることですけど。

 

調達総額は3億円、上場後も近藤淳也さんが過半数を維持

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現在の発行済株式は246万株ですが、今回は37万株を公募(自己株18万株含む)し、近藤淳也さんが30万株、梅田望夫さんが8万株を売り出す予定です。(オーバーアロットメントの売り出しが11万株)

想定発行価格は700円だそうです。

上場で約3億円を調達(想定発行価格は1株当たり700円)する見通し。資金は人材採用やデータセンターのサーバ増設、京都と東京のオフィス拡張への設備投資、広告宣伝に活用する。

たかだか3億円程度のためにキャッシュリッチな株式会社はてなが上場する意味はあまりないですけど、上場で知名度を高めることでユーザー数を増やし、採用数を伸ばすということが目的であれば分からなくもないです。

なお、想定発行価格が700円なら株数が260万株ちょっとだとすると時価総額は20億円弱という見合いですよね。以前にこんなことを書きましたけど、

株式会社はてなの決算を通して学ぶ会計の基礎の基礎 - 斗比主閲子の姑日記

安定しているとは言えるけれど、上場するにはこのままでは物足りない水準です。PER20倍と考えると時価総額15億円いかないぐらい。

それに近い水準でした。ただ、この時に比べて、近時の業績はかなり好調なので、ちょっと安い気もします。第一四半期は特需扱いなのかな。

何にせよ、近藤淳也さんが引き続き過半数を維持されるということです。これからもよろしくお願いします。

 

締め

ということで、パッと見て分かることを紹介してみました。

ちゃんと成長していることが確認できて、ユーザーとしても今後事業が継続するだろうことに一安心です。上場手続きに携わった皆様はここ数年色々とご苦労もあったかと思います。お疲れ様でした。今後ともより良いサービスを安定して提供していただくことを楽しみにしています。

以上、本題です。以下、余談です。

 

 

 

余談: 今後起きること

上場後に起きることを予想してみました。

  1. 企業からのオウンドメディアの受託数の増加
  2. 1に伴うはてなブログの書き手の、企業への斡旋も増加
  3. 相変わらず金余りなのでTVCM(悪手)
  4. 色々なリスクのある、はてなポイントの正式廃止
  5. 色々なリスクのある、はてな匿名ダイアリーのサービス終了(もしくは検閲の実施)
  6. はてなハイクのサービス終了
  7. 誹謗中傷・スパム行為を繰り返すユーザーの利用停止処分の増加
  8. 著作権違反に対しては厳格に(はたぶんならない。親告罪であるうちは)

上場する以上株価を高めるためには収益を伸ばし続ける必要があります。そうすると、個人ユーザーとオウンドメディアを展開する企業をこの調子で増やしていくというのが分かりやすい成長戦略です。

したがって、会社の個別の施策としても方向性としては、よりクリーンに、より一般的にという感じかなと思います。

 

全然話は変わりますが、有報の最後の方に株主一覧があるんですよね。その中に、以前からやり取りさせていただいている方たちの名前がちらほら出てまいりまして、普通の企業の上場と比べて何か親近感を覚えてしまいました。はてなって不思議な魅力のある会社ですね。