斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

税金を払ってない?株価は高すぎる??Amazon(アマゾン)への一般的な疑問への回答集

昨年10月にこう宣言してからずっと放っておいたAmazonに関するよくある疑問への回答集です。ブログの趣旨とは異なりますが、一般向けです。

長いので、好きなところだけつまんでいってください。為替は面倒なので、基本1$=100円換算です。

http://www.flickr.com/photos/56222080@N04/5198312613

photo by William Christiansen

 

Amazonって?

説明不要だと思いますが、インターネット販売の書店でした。過去形にしているのは、今では本以外の家電製品とか生活用品とかアパレルの売上も大きいからです。ロゴに、a→zとある通り、何でも売るようになりました。総合小売りという分類がいいかも。

 

Amazonはいつからサービスを提供しているの?

アメリカで1995年にサービスが開始され、世界に展開しています。日本ではサービス開始は2000年です。もう10年以上経っているんですね。

Amazon.com - Wikipedia

 

Amazonは何を売っているの?

会社のセグメント(事業領域)は大きく3つに分かれます。MediaとElectronics and other general merchandiseとOtherです。売上構成比は、30%、65%、5%ぐらい。

・Mediaが本、映画、音楽などのソフトコンテンツ
・Electronics and other general merchandiseが家電製品、コンピュータ関連、玩具、生活用品、アパレル、スポーツグッズ
・OtherはAWS(クラウドサービス)とかクレジットカード収入

となります。繰り返しですが、本が含まれるMediaの売上が中心ではないんですよね。

Certain Definitions and Other for Amazon.com (AMZN)

We provide supplemental sales information within each segment for three categories: Media, Electronics and Other General Merchandise, and Other. Media consists of amounts earned from retail sales from all sellers in categories such as books, movies, music, digital downloads, software and video games (including game consoles). Electronics and Other General Merchandise consists of amounts earned from retail sales from all sellers of items in categories not included in Media, such as electronics and computers, devices, home and garden, toys, kids and baby, grocery, apparel, shoes and jewelry, health and beauty, sports and outdoors, tools, and auto and industrial. Other consists of non-retail activities, such as the Amazon Enterprise Solutions program, Amazon Web Services, and marketing and promotional activities, such as our co-branded credit card programs.

 

Amazonの社長は特殊な人って聞いたけど?

Amazonの社長というか、CEOはジェフ・ベゾスさん。強烈な個性のある経営者とは言われていますね。詳しく知りたい人は、本人について周りの人間からコメントを集めたものが本になっているので、それを読むといいかも。

ジェフ・ベゾス 果てなき野望?アマゾンを創った無敵の奇才経営者

ジェフ・ベゾス 果てなき野望?アマゾンを創った無敵の奇才経営者

 

ただ、ジェフ・ペゾスさんのワイフであるところのマッケンジー・ベゾスさんは「この本、嘘ばっかり!」って本家Amazon.comのレビューで☆1付けています。

3,411 of 3,994 people found the following review helpful
1.0 out of 5 stars I wanted to like this bookNovember 4, 2013
 
Verified Purchase(What's this?)
This review is from: The Everything Store: Jeff Bezos and the Age of Amazon (Hardcover)
In the first chapter, the book sets the stage for Bezos’s decision to leave his job and build an Internet bookstore. “At the time Bezos was thinking about what to do next, he had recently finished the novel Remains of the Day, by Kazuo Ishiguro, about a butler who wistfully recalls his personal and professional choices during a career in service in wartime Great Britain. So looking back on life’s important junctures was on Bezos’s mind when he came up with what he calls ‘the regret-minimization framework’ to decide the next step to take at this juncture in his career.” It’s a good beginning, and it weaves in nicely with what’s to come. But it’s not true. Jeff didn’t read Remains of the Day until a year after he started Amazon.
 
(以下省略)

冒頭部を引用しつつ、「良い出だしだけど、ジェフは、カズオ・イシグロの『日の名残り』 はAmazonを始めて1年後まで読んでないわよ!」ということで事実関係をいきなり否定しています。

 

Amazonはどれくらいの規模の会社?

何と比較するかですけど、世界全体での売上は年間8兆円(2014年6月)、日本での売上は年間7600億円(2013年)ぐらいなので巨大企業なのは確かですね。2005年の世界全体での売上高が8500億円ぐらいでしたので10年経たずして10倍になっています。凄い成長率。

時価総額は約15兆円(2014年7月30日時点)です。1997年に上場した当時は約4000億円だったので、20年弱で、約40倍です。日本の時価総額トップのトヨタ自動車が22兆円ぐらいなので、この時価総額の大きさも想像できるでしょうか。ちなみに、日本企業の時価総額の大きさでトヨタ自動車の次がソフトバンクで9兆円です。

 

Amazonの売上高はどうやって調べているの?

Amazonは米国の株式市場で上場しているため、株主のために財務情報を開示しています。Investor Relations(IR)のページですね。特に、Annual report(年次報告書)に情報が詰まっています。

Amazon.com Investor Relations: Annual Reports and Proxies

 

日本での売上高も年次報告書にあるの?

2012年度から日本での売上高も開示されるようになりました。世界のAmazonでは、2013年の売上が北米4.4兆円、世界3兆円で、その世界の売上のうち、ドイツ・日本・イギリスで80%ぐらいを占めていますね。日本は世界のAmazonの中で3番目の売上高となります。

f:id:topisyu:20140729014541p:plain

2013 Anual reportより

数字だけ見ると2012年から2013年にかけて日本の売上は下がっていますが、これはUSD表記なので、日本円換算にするとちゃんと成長しています。2012年は1ドル80円ぐらいだったのが、2013年は1ドル100円ぐらいになっていますので。

USドル/円の為替レートの推移 - 世界経済のネタ帳

 

Amazon.co.jpは日本最大規模の書店?

ここ最近は、たぶん、そうなんですけど、公開情報からは分かりません。Amazonは2009年で書籍だけで1275億円の売り上げがあるとされていました。

ネット書店の売上ランキングと売上金額 (寄稿:冬狐洞隆也氏):【 FAX DM、FAX送信の日本著者販促センター 】

当時で既に単体の書店としては最大手でしたが、それから5年経った2013年の日本向け総売上高が先ほど紹介したとおり約7600億円ですので、その数字はもっと増えてそうです。

でも、あくまでAmazonが公式に公開しているのは日本向けの書籍も含めた全体の売上高のみ。内訳は開示されていないので、だから分からないとしか言えないんですよね。会社全体の構成比から類推するとMedia(書籍も含むソフトコンテンツ全体)で2000億ぐらいでしょうか。

ちなみに、日本の書店は、Amazonを除くと、TSUTAYAが1157億円で最大手です。次が紀伊国屋書店で1100億円ぐらい。

【新文化】 - TSUTAYA、書籍の売上高1157億円で過去最高を更新

書店の売上高などをグラフ化してみる(2013年)(最新) - ガベージニュース

単体で見なければ、DNP(大日本印刷)グループが最大手でしょうね。丸善、ジュンク堂、文教堂が傘下になっていますので、グループの書店の総売上高は2000億円超でしょうか。

 

日本向けの売上があるということは、Amazonは日本に子会社がある?

アマゾンの名前がつく会社はあります。まずは、アマゾンジャパン株式会社。

アマゾン ジャパン株式会社の会社概要

事業内容: 1億タイトルを超える和書、洋書、(中略)食品&飲料などの商品を取り扱う「総合オンラインストア」の運営サポート。

事業内容は、Amazon.co.jpの運営サポートです。運営サポートです。運営サポートです。

次に、アマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社。

アマゾンジャパン・ロジスティクス、Amazon.co.jpの物流規模の拡大、および利便性向上のサポートのため、愛知県常滑市に新たに物流センターを開業

Amazon.co.jpへの注文に応じて物流業務サービスを提供するアマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社(以下、アマゾンジャパン・ロジスティクス、代表取締役社長:瀧井 聡、所在地:千葉県市川市)は、

事業内容は、物流業務サービスの提供です。

後は、ギフト券を発行するAmazon Gift Cards Japan株式会社、法人向け融資をするアマゾン・キャピタル・サービス合同会社、AWSを提供するアマゾン データ サービス ジャパン株式会社といったところでしょうか。

見て分かる通り、本家本元のアメリカのAmazon.com, Inc.の子会社機能がある会社はありません。アマゾンジャパンはAmazon.co.jp運営のサポートだし、アマゾンジャパン・ロジスティクスは物流業務サービスの提供です。商品を販売しているわけではない。

 

では、Amazon.co.jpで買ったら誰から買ったことになるのか?

では、誰が商品を販売しているのでしょうか。日本のAmazon.co.jpで、本でも、服でも、商品を購入する場合、これは原則米国のAmazon.com Int'l Sales, Inc.から買ったことになります(マーケットプレースなどAmazon以外が販売する場合は除く)。売上は米国に計上されるわけですね。

利用規約にも説明がありますが、Amazon.co.jpはあくまで日本国内では商標であり、商品と一緒に送られてくる納品書兼領収書の1枚紙にも、販売はAmazon.com Int'l Sales, Inc.と書いてあります。

Amazon.co.jp ヘルプ: Amazon.co.jp 利用規約

Amazon.co.jp へようこそ。Amazon.co.jp はAmazon.com Int'l Sales, Inc. の米国のトレードネームであり、Amazon.com Int'l Sales, Inc. は、その関連会社の許可のもとAmazon.co.jp を商標として使用しています。Amazon.co.jp、米国の法人であるAmazon.com, Inc. およびその関連会社(以下総称して「アマゾン」といいます)は、以下の規約に基づいて、お客様にサービスを提供いたします。

だから、アマゾンジャパンの業務内容の"Amazon.co.jp運営のサポート"となるわけですね。米国AmazonからAmazon.co.jpの運営を委託されている。

そして、この仕組みが原因となってとある議論が2009年に紛糾しました。Amazonが日本で法人税を支払うべきなのに支払っていないのではないかという議論です。

 

Amazonは日本で法人税を払っていない?

もちろん、先ほど紹介したアマゾンの名前のつく日本で事業を営む企業は、利益が出ていれば法人税は払っているはずです。

ここで、法人税を払っていないというのは、日本で日本人に商品を販売しているのに、その売上から必要経費を除いた利益に対する、その分の法人税を支払っていないのではないかという話です。その分の利益に対する法人税は米国に払っているだろうけど、日本に払うべきなんじゃないかという話です。

2009年当時の朝日新聞の報道が詳しいです。

asahi.com(朝日新聞社):アマゾンに140億円追徴 国税局「日本にも本社機能」 - 社会魚拓2009年7月5日5時12分

 米国のインターネット通販大手アマゾン・ドット・コムの関連会社が東京国税局から140億円前後の追徴課税処分を受けていたことが分かった。アマゾンは、日本国内での販売業務を日本法人に委託する一方、日本の顧客との商品契約はこの米関連会社と結ぶ形で、売り上げも米側が得ていた。しかし国税局は、実際の本社機能の一部が日本にあるとして、数百億円の所得を日本に申告すべきだったと認定した模様だ。

 課税されたのは、北米以外の各国の事業を統括する本社機能を持つ「アマゾン・ドット・コム・インターナショナル・セールス」(本部・米シアトル)。アマゾン側は米国に納税しており、日本側の指摘を不服として日米の二国間協議を申請。日米の税務当局間で現在、協議中という。日本法人「アマゾンジャパン」(東京都渋谷区)は「課税は不適切で、当局と議論を継続している」とコメントしている。

 米関連会社はアマゾンジャパンに販売業務を、「アマゾンジャパン・ロジスティクス」(千葉県市川市)に物流業務を、ともに委託して手数料(コミッション)を支払う一方、それ以外の大半の中枢機能は米側に集中させていた。問屋(といや)(コミッショネア)商法の一種とみられる。日米の税率はほぼ同水準だが、契約や売り上げと共に納税先を米側に集中させることで結果的に納税額も低くできる。

 日米租税条約では、米企業が支店など「恒久的施設(PE)」を日本国内に持たない場合、日本に申告・納税する必要はない。アマゾンは市川市に物流センターがあり、仕入れた書籍などが置かれている。

 こうした倉庫はPEに当たらない。しかし国税局は、米関連会社側のパソコンや機器類がセンター内に持ち込まれて使用されていた▽センター内の配置換えなどに米側の許可が必要だった▽同じ場所に本店を置く日本法人ロジスティクスの職員が、米側からメールなどで指示を受けていた▽物流業務以外に、委託されていない米側業務の一部を担っていた――などに注目。

日本で法人税を申告する恒久的施設が日本にあるのではないか、そうであれば日本で得た所得は日本に申告するべきで、その分の法人税も日本に払うべきではないかと東京国税局が追徴課税処分をしたということですね。

日本国内の報道では2009年7月からですが、日本の税務当局から指摘があったのは、2008年4月18日開示の2007年のAmazonの年次報告書にも記載があります。 

2007 Annual Report(PDF)

In addition, in February 2007, Japanese tax authorities assessed income tax, including penalties and interest, of approximately $93 million against one of our U.S. subsidiaries for the years 2003 through 2005.

この時は金額が140億円よりも小さいですよね?これ以降の年次報告書では金額が増えていっているので、為替と追徴課税の利息分によって変動していったのだと思われます。

追徴課税の指摘があってから1年以上経っての報道ですから、いつまでたっても支払わないAmazonにしびれを切らして、国税が徹底的に戦うつもりで……ということなんでしょうかね。日本の国税vsAmazonというより、日米の税務当局同士の闘いだったと言ったほうがいいかも。

 

米国に税金を納めた方が税金が少ないからAmazonはこんな仕組みにしている?

普通に考えると、Amazonがこんな仕組みにしているのは、米国のほうが法人税が安くて、日本のほうが高いから、節税目的ではないかと思われるかもしれません。

しかし、米国の法人税率は基本的に日本より高いです。これだけ見れば、単に節税目的で、こんな仕組みにしているかというとちょっと違いそうです。ここは誤解してはいけないところ。

f:id:topisyu:20140731014828g:plain

※画像は、国・地方合わせた法人税率の国際比較 : 財務省より

日本企業が同じように米国で法人税を納めないために同じような仕組みを作ることは可能だとは思いますが、それを日米間でやるぐらいなら、利益を税金が安い国で吸収する仕組みにした方が合理的でしょうね。

それをEU内でやっていたのがスターバックスです。GoogleやAmazonやAppleもこの点については昨年から議論になっています。

スターバックスが「自発的」税金支払い :日本経済新聞

GoogleやAmazon、Appleの法人税逃れにイタリアが課税へ 「ダッチ・サンドイッチ」とは

 

結局、Amazonは日本に法人税を支払ったの?

話が飛んじゃいましたが、結果としては、Amazonの2010年の年次報告書にある通り、日本の国税が下りた形です。

2010 Annual Report(PDF)

In addition, in 2007, Japanese tax authorities assessed income tax, including penalties and interest, of approximately $120 million against one of our U.S. subsidiaries for the years 2003 through 2005. Proceedings on the assessment were stayed during negotiations between U.S. and Japanese tax authorities over the double taxation issues the assessment raised, and we provided bank guarantees to suspend  enforcement of the assessment. In 2010, the U.S. and Japanese tax authorities reached an agreement, on the allocation of our income between the U.S. and Japan for 2003 through 2005. The amount of tax expense, net of related deductions and foreign tax credits, recorded for this assessment was not significant. We have paid the assessment and the Japanese tax authorities have released all of the bank guarantees.

2010年に日米双方の税務当局が協議し、いくらか税金は支払ったけど金額はさして重要ではなく、預託金として預けていた金銭(110億円相当と言われる)もリリースされたそうです。

これ以降の税金の日本への税金の支払いについては、年次報告書では確認出来ていません。報道も最近は聞きませんし、日本の国税としては、良い成果は出せなかったんでしょうね。

ただ、この件をきっかけに、Amazonが日本での販売に関する所得への法人税を支払っていない点(ややこしい)について、様々な議論が起こり、アンチAmazon派の人が増えたようです。

はてなブックマーク - 僕がAmazon.co.jpを使わなくなった理由。 : *n.on.log

Amazon.co.jp:クチコミ:アマゾンは日本に税金払っていますか?

 

Amazonは日本で消費税も払っていないって本当?

これもややこしい話ですが、簡単に書くと、

  1. Amazon.com Int'l Sales, Inc.が販売者の電子書籍については、Amazonは日本の消費者から消費税を徴収しておらず、従って日本に消費税を納付もしていない
  2. Amazon.com Int'l Sales, Inc.が販売者の電子書籍以外の商品については、Amazonは日本の消費者から消費税を徴収しており、従って日本に消費税を(恐らく)納付している

です。1についてはあくまで現状であり、今後海外から販売している電子書籍の売買についても、2015年からは消費税の適応対象になることになっています。

詳しくは、こちらをどうぞ。

アマゾンの日本での消費税の納税について| twitthal|note

Amazonは日本の法人税を「払っていない」適法か? | シェアしたくなる法律相談所

(2つ目のリンクのタイトルの"法人税"の部分は"消費税"の恐らく誤りです。)

 

そうは言うけど、Amazonは米国で法人税も払っていないって聞いたけど?

法人税は払っています。2013年度は317億円(繰税考慮前。米国内144億円、世界173億円)でした。2012年度も2011年度も支払っています。

 

売上が7~8兆円もあるのに払っている法人税が少ないのでは?

日本でオンラインマーケットプレースを営む楽天が2013年度で売上5185億円、法人税の支払いは384億円ですから、2013年で売上が7.4兆円のAmazonが317億円しか法人税を払っていないのは、少ないと思う人はいるでしょうね。

払っていない理由は単純で、Amazonが儲かっていない(法人所得が少ない)からです。所得が少なければ払わないのは当然です。下のグラフは直近5年の売上高と営業利益ですが、売上に比べて営業利益がほとんど見えないのが分かりますよね?営業利益段階で利益率が低いんです。

f:id:topisyu:20140730073001p:plain

※グラフは、Financial Statements for Amazon.com, Inc. - Google Financeから

ちなみに、税引前当期純利益率となると、大体ほぼ0かマイナスです。上場した1997年年から2013年までの17期のうち10期で赤字です。

 

Amazonが儲かっていない理由は何なの?

短期的に利益を出すことが目標ではなく、長期的な視点で投資をしているからです。これは上場当時から変わらないAmazonの経営方針です。

1997 LETTER TO SHAREHOLDERS
(Reprinted from the 1997 Annual Report)

(中略)

Because of our emphasis on the long term, we may make decisions and weigh tradeoffs differently than some companies. Accordingly, we want to share with you our fundamental management and decision-making approach so that you, our shareholders, may confirm that it is consistent with your investment philosophy:

• We will continue to focus relentlessly on our customers.
• We will continue to make investment decisions in light of long-term market leadership considerations
rather than short-term profitability considerations or short-term Wall Street reactions.
(以下略)

2013年度の年次報告書(PDF)P9より

1997年上場時の株主への手紙(毎年、年次報告書には必ず添付されている)では、徹底的に顧客目線でいること、短期間の利益ではあなく市場でリーダーシップを取れるように長期的な視点で投資をすることとあります。

実際、Amazonのキャッシュフロー計算書では、営業活動によるキャッシュフローはちゃんと出ている(営業活動ではお金が入ってきている)一方で、同じぐらいの金額を投資活動に回しています。

f:id:topisyu:20140730073050p:plain

※グラフは、Financial Statements for Amazon.com, Inc. - Google Financeより

投資をし、それの償却負担から利益が出ていないということですね。(もちろん、安く商品・サービスを提供するということもしているでしょう。)

 

Amazonは儲かってないのに、なぜ時価総額は大きいの?

Amazonはこのように利益は出していません。しかし、時価総額は大きいです。2000年前半のドットコムバブルの崩壊で一時苦戦したものの、株価は基本的に右肩上がりです。

f:id:topisyu:20140730072136p:plain

※グラフは、Amazon.com, Inc.: NASDAQ:AMZN quotes & news - Google Financeより

時価総額が大きい=投資家によるAmazonの株への期待値が大きいのはなぜか。

通常、投資家がある株に投資するのは、キャピタルゲイン(株が値上がりすることで得られる益)かインカムゲイン(株を保有することで得られる益。配当等)を得られることを目的としています。 

ざっくり言えば、株価が値上がりするという期待と、将来利益が出て株主に還元される期待を目的として、投資家は投資をするわけですね。

それで、Amazonを見た場合、今は利益は出ていませんが、長期的には投資回収が進み、市場を制覇した段階となれば(よろしくないけど)値上げしたり、サービスの質を落としたり、仕入値をおさえたり、投資を止めたりすれば利益は出ますよね。その状況が来るという期待があるのだと考えられます。

 

最近、Amazonの株価が下がっているという話を聞いたけど?

今年何度か急落があったのは事実です。

まず、今年1月に昨年の第4四半期決算が出た後、急落。

米アマゾン株価急落、予想下回る決算と赤字転落への懸念で | Reuters

31日の米株式市場で、オンライン小売り大手アマゾン・ドット・コム(AMZN.O: 株価, 企業情報, レポート)の株価が9%以上急落している。前日発表した第4・四半期決算で純利益が市場予想を下回ったほか、第1・四半期に営業赤字に転落する恐れがあるとの見通しを示したことが嫌気されている。

次に、先月7月24日に第2四半期決算が出た後、また急落です。

Amazonの第2四半期は売上193.4億ドル、赤字1700万ドルで株価は5%急落 - TechCrunch

今日(米国時間7/24)、株式市場の取引終了と同時に、Amazonは第2四半期の決算を発表した。これによると193億4000万ドルの売上に対して一株当たり0.27ドルの損失が計上されている。アナリストは193億400万ドルの売上と一株当たり0.15ドルの赤字と予測していた。

投資先に不満がある、利益が市場予測よりも低い、タイミング遅いといったところで失望があったということでしょうね。ジェフ・ベゾスさんは上記の方針を変えるという方針は出していないので、投資家がいつまで我慢できるか、それとも我慢の限界を超えるのかが注目ポイントでしょうか。

 

締め

ということで、ごく一般的な疑問に対する回答をまとめてみました。

何か間違いがあればご指摘頂けると助かります。質問は、メール(etsuko.topisyuアットgmail.com(アットは@に))までお願いします。

以上です。以下、余談です。お好きな人だけどうぞ。

 

 

余談

昨年10月から時間がかかったのは、2013年の決算を見ておきたいなーと思っていたのと、春先は色々ドタバタしていたからです。

本当は発言小町風のQAにしたかったんですけどね。途中まで、「ずるいずるい!なんでAmazonさんだけ税金払っていないの!?」なんていうのを個別の質問のタイトルにしてたんですが、回答まで小町風にすると、無理やり感が強すぎて、内容が頭に入ってこなかったんですね。

どうか許してください。