まだ本調子ではないので、今回も読者からの軽めのモヤモヤを紹介します。
10歳の息子が扱いづらくて困ってる
トピシュさんへ
実は少々モヤモヤがあるのですが、アドバイスをください。
小学校3年生の息子とここ最近、しょっちゅう言い争いになります。私の言い方が悪いのは重々わかってるんですが、公文とか学校の宿題がなかなか進まないときに、「早くしたら?」とか「どうせすぐやらないんだろうね」とか、声掛けがどうにもネガティブな急かし方になります。
先ほども、習字の練習をさせてたんですけど、これを先生に見せるって本人が言ったのを「え?それ(を先生に見せるの)?」って私が返事しちゃったんですよね。本人は上手くかけたと思ったみたいなんですけど、私から見ると「それはちょっと書けてなくない?」と思ったのが言葉に出ちゃって、息子も思いっきりネガティブに私の言葉を受け取ってしまいました。
ネガティブの応酬になる時が最近多すぎて疲れてしまいます。肯定的な表現が難しい状況ってあると思うんですけど、そういう時はどう対応していいのかをアドバイスいただきたいです。これが10歳の壁ってやつなんでしょうかね。3年生になってものすごく扱いにくくなったな~と嘆息してます。
あと、去年に比べてさらに本を読まなくなってきてしまい、テレビとかタブレットでYoutubeとかスマホでゲームとかばっかりになってしまってるんですが、もう少し読書に持っていきたいと悩んでます。時間を決めてても平気で破ってだらだら見続けるので、これまた「いつまで見るん?」みたいな嫌みの応酬になりがちです。なんか自分のときと、現代っ子の電子機器の環境が違いすぎて方策を上手く練れなくて悩ましいです。
アバウトな悩みで申し訳ないのですが、アドバイスよろしくお願いいたします。
(Zさんからのメールを一部修正の上、掲載)
私が他人を肯定的に捉えられないときは大抵自分の調子が悪いとき
個人的な話をすると、私が肯定的に物事を捉えられないとか、肯定的に他人に接することができないときは、大抵、自分の調子が悪いときです。心の余裕がないと、些細なことが気になり、他人に寛容に接することができません。
だから、私はネガティブな発言をしがちなときは、まずは睡眠時間を多く取り、太陽の光を朝15分間浴び、仕事を減らし、美味しいものを食べ、適度に運動し、友達とお喋りします。
特に相手が人の場合は、自分の思い通りにならないときにもどかしくなりますよね。ただ、この相談者さんも分かっている通り、否定的な言葉で他人と接するのは効果的ではありません。否定的な言葉では自主性が育たないですからね。習慣にもならない。余計な手間が増えることになります。そういうときは距離を取る。
9~10歳は飛躍の歳
ちなみに、「子どもが扱いにくくなったのは10歳の壁だからではないか?」とされている点。この点について、さすがに、私の個人的な話だけ書いてもイマイチだと思うので、ちゃんとした研究者の本を紹介します。タイトルずばりですね。
この本では発達心理学の観点で、9~10歳は子どもに特徴的な変化が起きる時期で、飛躍の歳として紹介しています。ちなみに、この本の著者が調べた限り「10歳の壁」と主張する教育本にはまともなエビデンスはなかったそう。さもありなんというか、いつものやつですね。
詳しくは本を読んでもらうとして、9~10歳ぐらいで、子どもは抽象的に物事を考えられるようになり、他者との比較、それに合わせたメタ認知を獲得し始めるそうです。「わたしはべんきょうができる!」だったのか「私は算数は少し苦手だけれど国語は得意なほう」みたいな感じになる。同時に、学習や人付き合いでつまづきがちで、自己肯定感も下がるらしい。親のサポートが必要な時期。
先読み否定はやる気を失わせる
相談に関連しそうなところを引用して紹介してみます。まずは、先読みして否定してしまうことについて。
小学生が、どれくらい自分の行動を自分でコントロールしているかについて調べている研究では、朝の着替えなどは、9歳、10歳以上は自ら行っており、自分で決定してやりたいと考えていることがわかります。「人に言われるとやる気が出ない」と応える子どもたちが多いことから、この自己決定感は、やる気を持つうえで重要だと考えられています。
よく、親は先回りして、「宿題やりなさいよ」とか「部屋を片付けなさい」と言いますが、やろうと思っている時に先にこれを言われてしまうと、たいてい「今、やろうと思ったのにぃ」と一気にやる気を失ってしまうのがこのころの特徴です。
(『子どもの「10歳の壁」とは何か?』85ページより)
どの年齢でも先読みして否定するのは効果的じゃないですけど、特にやる気を失わせてしまう時期らしい。
なぜ他人の言動の先読み否定をしてしまうかというと、自分の中で相手に対する期待値を下げるためなんですよね。「できないに決まっている」と唱えると相手が実際にできないときに不必要に苛立たなくてすむ。期待値を事前に低く設定しているから。
だから、本人の中では怒りを調整するためにやっている、ある意味サバイバル術みたいなものです。ただ、これを口に出して相手に伝えると、相手は反発するし、下手をすると親に言われたからできないと思ったり、自分はできない人間なんだと思ったりするようになります。というわけで、悪手です。
声がけは総合的に
あとはどうやって声がけするといいかといえば、
子どもたちには誰でも、それぞれ必ず得意な部分やよいところがあるはずなので、悪いところや問題点ばかりを指摘するのではなく、よいところをどんどんほめてやり、「人には得意なところもあれば不得意なところもある」ということや、「いろいろあるから、頑張ったり、楽しんだりできる」ということなどを、大人の側が伝えていく努力をすることが、この時期には特に必要です。
(『子どもの「10歳の壁」とは何か?』207ページより)
できないこともあることを伝えつつ、具体的に良いところに注目して褒めるといいらしい。これも年齢に限定せず有効的な褒め方ですね。
ゲームが楽しめる時期
ゲームについては、
ゲームにはまってしまいやすい年ごろでもありますが、複雑なゲームのルールを会得して、あの手よりもこの手では、と、嬉々としてはまっている子どもたちのことを考えてると、本来は、現実の生活でもそうした力を発揮できる潜在能力があると思います。
(『子どもの「10歳の壁」とは何か?』209ページより)
抽象的な思考ができるようになって楽しめるようになるらしい。そういう意味では、ゲームにハマれるのは成長した証とも取れる。親の誘導の仕方では、他のものにハマれる素地はありそうです。麻雀やポーカーとか。
ゲームをやりすぎるときの対処法は特に本の中では触れられてませんけど、一般論としては、親がやってほしいことが終わったら子どもは好きなことをしていいみたいに、ご褒美を後に設定しておくのが基本ですね。
読書にどう誘導させるかというのは、これは結構難しくて。本を読む冊数は、小学生時代が一番多くて、中学、高校と徐々に子どもは本は読まなくなります。
読書教育の課題は高校生の「読書クライシス」にあり。 | あすこまっ!
子どもが本を読まなくなるのが当たり前になっていく中で、どうしても読んでほしいなら、親として読むためのインセンティブの設定や環境づくりが必要になります。一緒に同じ本を読んだり、その世代が面白い本を積極的に選んで置いておいたりとか。読み聞かせは小学生高学年になってもやってもいいんですよね。
締め
子どもは異なる発達の仕方をしますが、標準的な育ち方にしても、大きく外れる育ち方にしても、研究はされているものです。
子育てに悩んだら、発達心理学の本で、子どもが該当する年齢でどういう特徴を示すかを読んでおくと楽に子育てができます。「あ、これ進研ゼミでやったところだ!」みたいな感じ。
※これは乳幼児向けでかなり読みやすい本。発達心理学は難しい本が多いんですよね……。
本で知識を吸収し、理屈は分かっても実践できないとしたら、練習不足か、自分の心と時間の余裕の問題だと思います。
自分に余裕がないことを自覚するいい機会と考えるのもいいし、どうしても子どもにネガティブに接してしまうとすれば、できるなら子どもから離れる時間を持つのもありですよね。できるならば。