先日、メールでこんな質問がありました。
※メールの内容は筆者が一部修正・改変しています。
私は長いことネットをやっていて、煽りや炎上には俯瞰的・機械的に処理しているところがあります。
ただし、子を持つ親として煽り耐性があるのはあんまり良くないような感じをしています。子どもや家族、パパ友・ママ友の感情の起伏に寄り添えず、冷静に分析・対処してしまい、一歩引かれてしまうようなところがあるのです。
例えば原発事故と放射能の問題などは特に温度差を感じるので、なるべく自分の意見を表に出さないように気をつけていました。
理系院卒で福島県在住の友人が「科学的にここで暮らすことは問題ないし、大規模な除染活動は費用対効果が悪いことは分かっているが、科学と感情は別なので地域の除染活動には積極的に参加するようにしている」と言っていて、彼のようになりたいと思っています。
斗比主さんはインターネットでの煽り耐性がかなり強そうですが、家族やまわりとの情緒的なつながりをどうこなしていますか?
面白い質問だったので、ブログで回答します。
自分がインターネット上での煽り耐性があるかと言えば、普通よりちょっとある方かなとは思います。
ただ、平均より煽り耐性があるからといって、日常での情緒的な繋がりに苦労するかと言えば特にはありません。むしろ、ネットで活動するようになり、情緒的に周りの人と関係を持てるようになりました。
これは、この方と私のネットでの煽りへの対処方法の違いから来るものかなと思います。
自分は煽られた時には、煽りをスルーしたり、俯瞰的に見たり、機械的に処理したりはあまりしません。煽りをしている人、一人一人の他の発言や興味関心を一定期間眺め、その人の知性やリアルでの人間関係に思いを馳せるようにしています。そうすると、煽っている人には煽っている人なりの事情がありそうなことが何となく想像できるようになります。その人のポジション、その人の感情からすると、煽るのは必然である、煽るのには事情があると納得する。
こうすると、煽りに対して攻撃的に対応しようという気持ちが薄れてきます。逆に、優しく接したくなる。『風の谷のナウシカ』で噛んでくるキツネリスに「ほら、怖くない、怖くない」と触れる感じ。
※なんだ、このキャプション。でも可愛い
これが90%ぐらいのケースでの私の煽りへの対処法です。時々、暇潰しで叩き切ることもありますけどね。固定アカウントを持たない『通りすがり』的な人の煽りは背景が確認できないためスルーします。(煽りではなく、ロジックがある批判と思えば『通りすがり』でも読みます。)
やっていることはアンガーマネジメントと同じです。
相手をリスペクトして受け入れるというものに近い。
※自己肯定感を高めるのにも使える
インターネットはアカウントに紐付いて大量の情報が簡単に入手できますから、下手をすると普通の日常で接する人よりも、相手の事情を理解するのは容易です。
先日も、電子書籍のお手伝いをしていただいたid:steinさんがベビーカー撲滅運動というアカウントにTwitter上で絡まれていたんですが、steinさんが調べてみると、そのベビーカー撲滅運動というアカウントを運営している人にはどうやら色々事情があることが分かったそうです。
子連れベビーカーで混んでるところ行かない方がいいのは当然なんだけど(だから空いてる時に行きたいって書いてんじゃん)厳しく躾けられた人間が他人にも厳しくあたってしまう典型例だな。気を付けよう
— stein (@__stein) 2016年4月18日
そう、そうなんだよ、迷惑ベビーカー撲滅の人結局「かわいそうな人」だったんだよ。世の中は悲しみと苦しみに満ちている。こんな世の中を作った神はリュウノスケの言うような神に違いない
— stein (@__stein) 2016年5月2日
それで優しくなるかと思えばsteinさんはこのベビーカー撲滅運動の人をガンガン追い詰めていってまして、何だかおかしいなと思って眺めていたら、
育児ノイローゼで死にたみが増してたけど、なァ〜〜にが迷惑ベビーカー撲滅希望だ社会的に死なすぞこのダボハゼがとか怒って相手のリアル割ってる時は死にたみが減っていた。悲しみは死に近くなるが怒りは死を遠ざける
— stein (@__stein) 2016年5月7日
どうやらsteinさんにも育児ノイローゼという事情があったそうです(詰めていたのは実質2~3日でしたけどね)。これはさすがにまずかろうと、ご本人が子乗せ自転車を探すのに苦しんでいたので、お手伝いをすることにしました。
子供乗せ自転車ソムリエ、トピシュさんが名乗りを上げてくれて選んでくれて、これは約束された勝利の剣だなってなもんで発注しようとしたら買いたい色のやつが品切れで呻いている
— stein (@__stein) 2016年5月9日
育児ノイローゼの人間に豊富な知見と経験を持った人が助言をくれるというのはもう福祉の域ですよ
— stein (@__stein) 2016年5月9日
そんなに豊富でもないですけどね。知っていることだけ。
※子乗せ電動自転車の購入方法について紹介した記事はこちら
この事例は非常に象徴的だと思い紹介しました。煽る背景ってあるんだよねという例。
他にも、何か会話が噛み合わないなと思ったら、相手が物凄く年下/年上だったとか、文化的背景が全然違うというのはインターネット上では良くあることです。
インターネットで、そういう相手の事情に触れることを繰り返しているうちに、日常生活でもあまり情報がなくても、相手をありのままに受け入れやすくなったように感じています。知見も増え、接し方のバラエティも増えました。
たまたま見かけた子どもがいじめの加害者になったという記事でも、同じようなことが書かれていました。
自分の子供が「いじめっ子」になってしまったらどうする? | Leslie Blanchard
私にも子供時代があったし、5人の子供を育てた経験から、私はいじめにおいてどちらの側に立ったこともある。だから、いじめがどこから始まるのかよくわかっている。短絡的に他人を評価し、拒否することだ。
(中略)
社会的枠組みの中では、誰かに代わって“引き出し”を行うべき立場になる時期があることを学んだ。寛容に、投資するのだ!リターンはあるのだから。
拒否をするのではなく受け入れることでのリターンがあるというのは、何もいじめの場面に限らず実感するところです。情けは人のためならずですね。
長くなりましたが、一応これが質問への回答になるでしょうか。あまり一般的ではないとは思いますけど、試しにやってみると面白いですよ。
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