私はn=1で社会を語らないようにしています。
例えば、「こんな事件があったのだから、この属性の人たちは犯罪をしがちなのだろう。気を付けよう」「こんな事故が起きたのだから、この乗り物では事故が起きやすいのだろう。気を付けよう」という風に語らないということです。
他の人がn=1で社会を語ることを止めるつもりもないし、止められませんが、私はしないようにしているということだけです。ブログでは何度も書いていますが、言っておかないと自分で忘れちゃうことがあるので宣言しています。
本題は以上で、以下は余談です。
センセーショナルな事件が起きると世の中が凄く危険になっていると思ってしまう人はいます。特に、自分の属性に近い人が被害者・加害者であったり、その事件が何度も報道され触れざるを得なくなったりすると、そういう気持ちになりがちです。私もそうです。
だから、私は自分の属性に近いニュースは積極的に避けるようにしていますし、同じ事件のニュースは何度も後追いしないようにしています。落ち込むからです。
同時に、私は統計をチェックするようにしています。法務省の犯罪白書を読みに行きます。これを読むと、だいぶ気が楽になります。
犯罪白書では、その年の特集が組まれており、それが副題になっています。去年の最新版は副題が特殊詐欺です。その前が薬物犯罪、平成の刑事政策、高齢化、更正、再犯と続きます。
年次 | 副題 | 概要 | 全文 | 正誤表 |
令和3年版 | 詐欺事犯者の実態と処遇 | - | ||
令和2年版 | 薬物犯罪 | |||
令和元年版 | 平成の刑事政策 | |||
平成30年版 | 進む高齢化と犯罪 | |||
平成29年版 | 更生を支援する地域のネットワーク | |||
平成28年版 | 再犯の現状と対策のいま | |||
平成27年版 | 性犯罪者の実態と再犯防止 | - | ||
平成26年版 | 窃盗事犯者と再犯 | - | ||
平成25年版 | 女子の犯罪・非行 グローバル化と刑事政策 |
- | ||
平成24年版 | 刑務所出所者等の社会復帰支援 | |||
平成23年版 | 少年・若年犯罪者の実態と再犯防止 |
これを見て何か気付かないでしょうか。はい、再犯というのが何度も登場しますよね。
なぜ再犯が何度も登場するかというと、日本で犯罪件数が非常に減少しているからです。犯罪がどんどん減っていく一方で、再犯率が高止まりしていました。なので、犯罪白書において、どうやって再犯をさせないようにしているのか、犯罪者の更正(社会復帰)にページを割くようになったわけです。
ざっくり紹介していくと、まず、日本ではここ20年ぐらいで、犯罪の認知件数は劇的に下がっています。過去最低を毎年更新していっています。同時に検挙率も上がっていっています。
「そもそも認知している件数が下がっているだけでは?」と思う人もいるでしょうが、認知がたやすい殺人であっても認知件数は減少傾向にあり、検挙率は高どまっている状態です。
「殺人事件の件数は下がっているといっても毎年1000件弱発生していて、これは多いのではないか?」と思う人もいるでしょうが、世界で比較したときに殺人の発生率としては日本は最低水準です。アメリカ合衆国なんかは日本の10倍以上の殺人が人口当たりで発生しています。
ちなみに、犯罪の検挙人員の年齢構成では65歳以上が急増しています。他の世代は20歳未満が急減しています。これは少子高齢化も要素としてはありつつ、
高齢者の再犯率の高さが原因と考えられています。現状、日本の犯罪の半分は再犯者によるものです。
ここまで見ると、再犯をどう防ぐか、いかに更正しやすい仕組みを作るかに犯罪白書の紙面が使われていることはよく理解できるのではないでしょうか。
ちなみに、たまに精神障害がある人が犯罪をすると、「精神障害者は犯罪をしがち」と考える人がいますが、検挙人員は全体の0.7%程度で、日本の精神障害者の人口比率が3%程度であることからすると、決して高いということはありません。ただ、放火は全体の14.8%、殺人は全体の6.9%と高めです。
以上、今回紹介したのはあくまで犯罪白書からの簡単な抜粋です。本体は500ページ弱ある、骨太な白書ですから、時間があるときに目を通してみると、色々な発見があると思います。私は読んでいるとだいぶ気が楽になります。
繰り返しですが、ニュース報道を見ていると、センセーショナルな一つの事例を何度も取り上げるので、その被害者・加害者の属性の犯罪が非常に多く発生しているような印象を受けてしまいます。実際には日本はどんどん安全な国になっているにも関わらず。
そういう報道を見て、心が揺さぶられてしまう人は、私のように犯罪白書を読むか、好きなYoutuberの動画でも見るのをお勧めします。
私は、生物ハンターの平坂寛さんがさっきUploadしていた「どのクワガタに指を挟まれると一番痛いか」という動画を見て、大変申し訳ないのですが、非常に心穏やかになれました。
もちろんテレビやネットから離れて、プール・海水浴に行ったり、涼しい図書館で本を読んだりしたりするのもいいですね。
不安な人は、自分の好きなことで時間を使われるといいんじゃないかと私は思います。
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