こんな記事がはてな匿名ダイアリーにありました。
地方在住の筆者が子供が生まれて、出産から大学卒業ぐらいまでに子供にかかる費用を皮算用するというものです。ブックマーク数が700ぐらいで話題になっている記事なんですが、この記事について、色んなモヤモヤがあったようで、自分に三方向からモヤモヤ解説の依頼がありました。
※画像は平成17年版 国民生活白書 一人の子どもにかける費用はおよそ1,300万円より。ちょっと古いですけど参考になります。
三方向からの依頼
まずは、記事自体にモヤモヤしたというもの(たぶん)。これは、以前から自分のブログを読まれているid:yz_sさんからのものですね。
ブコメ見たらだいたい想像通りでしたのでトピシュさんおねがいします / 生み育てられる人はそうしてくれ、と思う。 / “娘が生まれて思ったこと” http://t.co/MqNPP7na8k
— Y'z (@yz_s) 2015, 2月 10
次は、その記事へのブックマークコメントにモヤモヤした人(たぶん)。依頼者のid:hetarechirauraさんは、先日topisyuが暇潰しに個人を特定しようとした人です。
最後は、この元記事を書かれた方です。この方はメールで来ました。
トピシュさま
初めてメールいたします。
私、このエントリの元増田です。
「娘が生まれて思ったこと」
http://anond.hatelabo.jp/20150209160615
ブコメを見ると、なぜか私の妻がかわいそうのように書かれております。
記事内には、私が家事をするかしないか、育児に協力的かそうでないかがわかる記載は一切ないかと思いますが、それでも、この増田は何もしなさそうに見える、という直感から来たであろう批判が多くあります。
記事でふれていないので、実際に私がするかしないかは今回言及する必要もないと思うのですが、批判内容を見ているとどうも、「現代の世の中にも、本心から主婦業や育児に生きがいを見出している女性が存在している」ということが皆様の心から抜け落ちている気がしてなりません。
また、「田舎暮らし」や「専業主婦」という、デリケートなワードが盛り込まれているのも、各々が妄想を膨らませる要因になっている気がしてなりません。
すみません、うまく言葉になりませんが、私を含め、このエントリを見たであろう多くの方の心に現れたこのもやもやについて、ブログで解説していただけると嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
増田某
その後色々やり取りをして恐らく著者本人であることは確認しています。自分が書いたものに対する批判的なコメントについてモヤモヤするというものですね(たぶん)。
この記事のモヤモヤポイント
それではまずは簡単に、この記事のどこらへんにモヤモヤポイントがあるか(モヤモヤする人がいそうなところ)を紹介してみます。記事を読んでからご覧ください。
まずは、筆者の目線ですね。
少子化とか、子どもは経済的に難しくて、とか、保育所がなくて、とか、色々言われてるよね。
子育ては金がかかるからーとか怖がってないで、具体的な金額を調べてみてはいかがでしょうか。
これは文章の始めと終わりの引用です。自分が調べた限られた情報を書いているのに、読者をちょっと広範囲に設定していますよね。子供を持たない人はそれぞれ色々理由があったりなかったりするのを、お金がかかるから子育てが怖いんでしょ?と言っているように読めちゃう。
次は、自治体からの手当てについてごく限られた地域の情報であること。
何回か知らないけど、30 回分かもっとかくらい?
ほんと、妊娠してから中学生まで、病院に払う額はまじで 3 万円だけでいいってことだ。
最初の30回というのは、妊婦健康診査の受診票(チケット)の枚数のことですが、これは14回の自治体が多いでしょうね。医療費補助も、年齢別で、住民税課税か非課税か、初診かそうでないかで、結構自治体によって違うんですよね。
全ての自治体の情報を知っている人はいないでしょうが、自治体ごとで違いがあることに触れないと、デマを流しているように見えちゃう。
次は、子育て費用を犬・猫の飼育費用と比較していること。
ペットショップの犬のほうがよっぽど高い。
猫飼う方がお金かかるかもしれん。
こういう比較の仕方をすると、犬・猫の飼育を子育てより下に見ているように見えます。しかも、実際飼育はしていなさそうな書きぶりが神経を逆なでする。
次は、専業主婦の妻に、お金がかからかいように育児・家事の負担を押し付けているように見えること。
もちろん、母乳でいけるなら食費はかからん。
食費も、嫁がちゃんと料理したらかなり安くすむ。
母乳は出ないこともあります。これだけお金のことを気にする筆者なら母乳育児を積極的に妻に勧めそうに見える。料理でもプレッシャーをかける。出来合いのものを買うことは許されなさそう。
次は、関連して、妻を物扱いしているように見えること。
専業主婦養えるほど高給、ってわけでは全然ないのだけど、嫁は倹約家で浪費はまったくしない。
田舎で専業主婦もちなら、子育てってまじで金かからない。
この部分ですね。妻は田舎暮らしを承知しているか、これだけでは読み取れない。
そして、コストが低い要因の一つとして田舎暮らしを推奨していること。
それと、なんといっても、田舎は生活費も住居費も安い。
家賃も生活費も、東京の半額くらいなんじゃないかな。
推奨しつつ、田舎暮らしでは切っても切れない自動車関連費用について触れられていません。
最後に、上記もろもろで、全体的な費用見積もりの甘さ(足りなさ)があるのにコストがかからないという認識をしていること。
こんなにお金ってかからないんだね…
それこそ大学入るまでほんとに金かからない。
「人が一人増える」、ってイメージより全然かかってないことに驚く。
書かれた以外の水道光熱費、食費、被服費、交通費、遊興費、幼稚園(・保育園)にかかる費用についても見積もりがほとんどされてないのに、こういう発言があると、そんな中途半端な情報で子育て推奨しないで!と反応したくなる。
主な所はこんなところだと思いますが、個人的にはここが好きでした。
俺も嫁も、大学は国立なので、娘にも国立に入ってほしいところ。
読み手の学歴コンプレックスを刺激したり、子供に親の願望を押しつけているように見えるので。学歴がある女性が専業主婦をしていることに否定的な人もいますしね。
モヤモヤした人のコメントにモヤモヤするポイント
続いて、元記事にモヤモヤした人がつけたコメントに、モヤモヤするポイントですね。ややこしいですね。
まずは、どんな批判コメントがあったのか簡単に抜粋しておきます。何人かは当ブログのお得意さんです。
gdnoなんとなくだけどこの増田の奥さんになりたくないなって思った…。奥さんがんばれ。
hatechan09これから分かってくるとは思うけどその消耗品にバカにならないほどお金がかかる。気になったのは”専業主婦”=”育児担当”だと思ってるんじゃないかということ。
c_shiika妻の側に掛かる負担が重そう。
matsumura-satoshiかなりお金のかかる保育園、幼稚園の保育料が抜けているね。ウチは子供2人、保育園に1人あたり月2〜3万円くらいかかった。あと田舎は住居安めだけど車が無いと生活出来ない、車のランニングコストは馬鹿にならないよ
chi-ko0901何処の地方よ?14回分しかチケット無いし、タダってことはない。検査内容では一回一万とかかかるよ?分娩費用も42万ではおさまらなくて、とくに個人病院とかだと結構掛かる。小中学校だって、授業料だけじゃないんだ
ym57よく知らないけどお金かからないよ!って随分迷惑な話。一年後に実際どうだったか書いて欲しいw/案外お金かからないよって書くならちゃんと調べてしょっぱなに適当なこと書かないように
inmysoul貧乏人は心も貧しいって本当だったんだな。子どもも奥さんも独立した人格を持った人間ってことをお忘れなく。
tsubo1通常、嫁さんの働き方が変わることによる収入減がデカいんだが、もともと専業主婦って、それどこの貴族のお話ですかバカですか。
gambol金銭的なことばかり書かれてて、他が書かれていないのが気になった。世話する時間とかどうするんだろって。
nishinq分かってなさすぎてアレだけど生まれたばっかで犬猫と比較するようなオツムじゃこんなもんなのかな。
doodleonそこには嫁さんが楽になる費用とか入れないと。うちは食洗機だったな。乾燥洗濯機。目が離せないから干せない。たまるから浴室暖房乾燥も入れてあげればよかったな。
quick_past奥さんの存在をまったく考えてない。地方都市やそれ以上の田舎なら夫婦共働きができるか?そうでもないよ。意外とお金かからないとか、手間がってのは今その瞬間だけの話に思える。
linus_peanutsなんかすっげえもやもやするのは増田がなにもしなさそうに見えるからか。金銭負担だけじゃないのよ?
washburn1975断言できるけど、この増田は子育てどころかペットを飼ったことすらない。
doas1999そもそも高度経済成長期に作られた、働く夫+専業主婦って形態が崩れてきてるのに、それを前提に話されても…って感じですよ。
oryzae509”俺の嫁は、ピアノとか習い事をがんがんさせて、塾もすごい通わせて嫁も中学から私立だったわけで、かなり金をかけて育てられている。”田舎で専業主婦なら奥さん爆発するんじゃないか。もっと話し合う必要ありそう
warulawお金を必要以上に気にすると夫婦が悪化するという既視感。まだ、生まれたばかりで解らないと思うけど、お金で解決できることは(貰えるお金も含めて)お金で解決した方が結果楽よ。
teruka0917今は子産まれたばっかで知らんのだろうけど、まずは来月の光熱費の跳ね上がり方に腰を抜かすと思うよ。それ以外にもオムツミルク…むしろ田舎の方が都会より物価もガソリンも高いから金かかる/小中は給食費と教材費
metal2020経験者なら、初っ端の出産費用1万云々から、空想に基づく記述とすぐに見抜けるわボケ。にしても子持ちはこんなに優遇されてんだぜ!て記事あげることで何のメリットがあるのだろう。
tocco-tocoえっと、田舎に住んでて嫁が専業主婦だったら、ペット飼うくらいなら子供産んじゃえよって話ですか?逆にいうと、都会暮らしの共働きじゃ子供育てるの大変だぜってことですか?
botpお金にしか意識行ってなくて大丈夫かなって思った。専業主婦とはいえ基本家で一人で子ども育てるのはすごく大変ってよく聞くけど協力する意志とかちゃんとあるのかな…
mys31055食費節約のためにと奥さんにプレッシャーを与えないでほしいと思った。「ちゃんと料理すれば○万円でいけるはず」という場合の基準は、まず自分で1ヶ月やってみてほしい。
kutabirehateko豊かな教養を持つ健全な大人が家で子供育てて家政を支えることが大きな社会貢献だとわからない人がいるみたいね。
どういうところにモヤモヤしたかは、大体最初の解説でカバーできているでしょうか。
これらのコメントにモヤモヤする人がいるのは、「この記事にそこまで突っ込む必要がある?」というところからくるものだと思われます。
まず、この記事は一応予防線が張ってあるんですよね。
でも、実際生まれてみて知らなかったこととか驚いたこととかあるから書いていくよ!
保育所がー、女性への助けがー、というのも少子化対策では非常に大事だけど、土地に縛られない人なら、生活費が半額になる地域に引っ越してしまうというのも、悪くない手ではあるよね。
もちろん、東京とか、生活費高いエリアなら、そもそも共働きは崩せないわけなので、保育所とかお金の問題は消せませんが。
該当箇所はこちら。自分が知らなかったから教えたい、地方暮らしが大正解とまでは思わない、都市部での共働きの生活ついても一応理解をするなど、自分の意見が全て正しいというスタンスではありません。
それと、著者が親切心でこの記事を書いていることも伝わってきます。確かに足りていない部分もあるけど、ここまで整理できている人は多くないですよね。親しみやすいように、恐らく普段は使わないだろう、あえて砕けた言葉を使っていますし。
子供が生まれたばかりでちょっと浮かれてる感じがあるけどそれなりにまとまっている文章を、もっぱら既婚者が否定している構図は、端から見ると地獄絵図ですよね。自分は大好きですけど。
著者がモヤモヤするポイント
これ以上読みたい人はいない気がしますが、一応著者がどうしてモヤモヤしたのかも考えてみます。
まず、繰り返しとなりますが、この著者は本当に親切心でこの記事を書いたんですよね、たぶん。
学歴もあって、地方でもどこでも食べていけるということは、組織に所属しなくてもやっていける何らかの特殊能力(特殊なキャリア)を持っている人です。
そういう人が、子供が生まれて嬉しい気持ちがあって、他の人にも共有したいという善意で書いたのに、これが足りない、あれが足りないと重箱の角をつつかれ、挙げ句の果てには「奥さん、かわいそう」みたいな話をされたとなれば、腑に落ちないところはありそうです。善意があっただけに落差は大きい。
はてなブックマークのコメントは辛辣な方向に行くことが結構ありますから、慣れないと結構気になりますよね。発言小町よりかは全然マシなんですけど。
締め
こういう展開はここ数年ずっと繰り返されています。これまで女性には結構共有されてきた情報だけど、育児にあまり関われなかったり、興味を持てなかった男性からすれば珍しく思えて、そういう男性が、情報発信をしている男性も少なそうだからと自分の知識の範囲で紹介してみたら、袋叩きにされる構図。
人気記事だからこそこんなネガティブな反応があるというのもあります。たとえ、一個人が書いた匿名の記事でも、あの記事へのアクセス数はたぶん5万件は越えているんですよね。そうすると、そんな人気の記事なのに不正確な情報が書かれていることを問題視する人が出てきます。一個人が善意で書いたかどうかなんてどうでもいい。
自分もこの記事を最初に発見した時はブックマークしようかと思いましたが、内容がケースバイケースであることから、5分考えて止めておきました。
何度も書いていますけど、育児関係は燃えやすいので、何か書きたいときは、とにかく一般化しないことをお勧めします。
以上です。以下、余談です。
余談
このまま終わってもあまりほっこり成分が足りないでしょうから、夫が医師であるのが標準である発言小町における、子育て費用に関するトピをいくつか紹介して終わりにします。
子育て費用について教えてください : 妊娠・出産・育児 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
夫婦間に取得格差があります。
結婚7年目、主人は年収1500万、私が450万です。
お互い子供を希望していたのですが、
なかなか出来ず、諦めた矢先に、妊娠が判明しました。
今、妊娠8ヶ月です。生活費は、家賃を主人が8割、私が2割、
水道光熱費は主人、食料品・消耗品は私です。
保険料や携帯代は各々支払っています。今までは、全く問題は無かったのですが、
子供のお金の話しになり、疑問を抱いています。
年収1500万円の夫と年収450万円の妻の育児費用負担がほぼ同額という話。
これから子供にかかるお金 : 妊娠・出産・育児 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
当方は地方都市住まいです。娘は小学校までは公立、中学からは本人の希望があれば私学を検討したいと考えております。
ちなみに私の年収は現在1000万弱、妻は復職すれば400万程度です。
去年、家を建てましたので、貯蓄は私の年収以下程度しかありませんがローン・借金はありません。妻は小学校から大学まで私学女子校で育ち、一通りの習い事(ピアノ・バレエ・習字など)と学習塾や家庭教師を与えられており、娘にも同じようなレベルを考えているのだと思います。(娘は小学校から私学に入れるつもりはありませんが)
妻が受けてきたような教育を娘に施すには、夫の年収1000万円では足りないという話。
概して、お金がなければないなりの、お金があればあっただけのお金を子供には使うんですよね。