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斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

権力がアイドルを屈服させること

昨日、日経新聞を読んでいたら、たまたまこんな記事を見かけました。

16歳アイドルも翻弄する中国リスク 編集委員 中沢克二 :日本経済新聞

民進党主席、蔡英文の圧倒的な勝利に終わった台湾総統選の直前。黒い服に身を固めた16歳の可憐(かれん)な少女が、緊張の面持ちで中国語による謝罪文を読み上げ、深々と頭を下げた。中国向けであることは明らか。異様だった。

周子瑜

「申し訳ありません。中国は一つだけです。両岸(中国と台湾)は一体です。私は中国人であることを誇りに思います。再度、謝罪いたします」

 台湾出身の周子瑜(ツウィ)は、韓国の人気女性アイドルグループ「TWICE」の一員だ。彼女は昨年、韓国のテレビ番組で「国旗」(台湾が主張する「中華民国」の青天白日満地紅旗)を振った。これがきっかけになって、中国のネットなどで「周子瑜は台湾独立派だ」とのレッテルを貼られた。

 影響は大きかった。中国のテレビ局などが彼女の映像放映、出演を拒む事態に発展した。こうした行為は、中国共産党中央宣伝部の指導を受ける中国のテレビ局が、上の意向を忖度(そんたく)したものだ。中国ではメディアと党・政府は一体である。

というものです。

ここにも書いてある通り、

  • 中国政府にとって台湾は中国の一地方という位置付け
  • 中国主要メディアは中国政府の広報誌

ですから、台湾国旗をアイドルがたとえ韓国で持っていたとしても、台湾を独立国と主張したい政治的メッセージではないかと捉えられ、中国メディア経由で圧力がかかったようです。

 

謝罪する動画も見てみましたが非常に痛ましいものでした。本人のアイデンティティとして台湾国旗はあったでしょうに、それを持っていたことで政治的な問題に発展してしまった、お騒がせして申し訳ないと謝罪をしています。英語字幕で確認する限り中国では今後このメンバーは活動しないそうです。まだ16歳の子どもがこんなことを言わなければいけないなんて。(興味のある人は"English Sub 周子瑜公开致歉"で検索してみてください。)

 

日経新聞では更に、

周子瑜は、台湾の有権者から広く同情を得る。実際の投票行動では、中台首脳会談まで主導した国民党に不利になった、との分析も出ている。 

という話もあります。

実態は分かりませんが、こんなものを見せられたら、私が不快に感じたように、この女性にこんなことを言わせているバックグラウンドに対してネガティブな感情を抱くのは台湾でも同じだったのでしょう。夢を与えるはずのアイドルが権力構造によってこんなことをさせられているのを眼前に見させられたら、夢も冷めます。

国家権力が個人に圧力をかけるのは当然許されるものではありません。たとえ私人間でも、パワーバランスを利用したパワハラ、モラハラ、セクハラは許されるものではありません。

 

ただ、こういうのが表に出てくるだけ実はまだましという考え方もできます。この女性に関する報道の歪み方や、言わされているのが伝わってくる映像を見れば、そういった権力構造があることを認識することはできます。一般人が預かり知らぬところでいつの間にかメディアからシャットアウトされているケースのほうが多いのかもしれない。

陽の目を浴びることがなくなった人がいると考えると暗澹とした気持ちになります。自分にできることは特に何もありませんが、こういった圧力が確かに存在することは記憶に留めておきます。