斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

もはや中国が日本以上の収益の柱となりつつある無印良品(良品計画)は新疆綿のスタンスを示せない

以前にフェアトレードの概念として、ディズニーの『ムーラン』を捉えるといいかもしれないと書きました。

一人の親としてディズニー新作実写映画『ムーラン』を子どもと観るか悩んだ話 - 斗比主閲子の姑日記

今度は本当の意味でのフェアトレードに関わる話です。無印良品を運営する良品計画が新疆綿を使用している話。

無印良品、新疆綿の取引継続 社長は質問に答えず: 日本経済新聞

生活雑貨店「無印良品」を運営する良品計画は14日、中国・新疆ウイグル自治区の人権侵害を巡る問題で、プレスリリースで「新疆綿」を使った衣料品の販売を続けることを公表した。人権問題を重視する消費者や機関投資家の目が厳しさを増しているが、同日の決算会見で松崎暁社長は度重なる質問には答えず、具体的な言及を避けた。

ここで、良品計画の社長が明確な回答を避けているのは、中国で展開している自社の店舗への影響を考えているからでしょう。新疆綿を使わない、ウイグル自治区でのジェノサイドは認めないなんてことを明言してしまえば、中国での無印良品の店舗に対しては、中国政府によってボイコット運動が必ず展開されるでしょうから。中国事業に依存する良品計画としてはそれは避けないといけない。

どれくらい良品計画が中国での店舗の収益に依存しているかは、開示されている資料を見ればざっくりは把握できます。

良品計画の半期の売上高は大体2000-2200億円ですが、直近だと、そのうち20%が中国向けの売上高です。東アジア(中国・香港・台湾・韓国)の売上の中では2/3ぐらいが中国大陸向けです。

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良品企画2021年8月期第2四半期決算データブックより

売上だけだと大したことないような気がします。四半期での営業利益でみると、東アジア事業で40-60億円ぐらいになっています。変動はありますが、全体が60-100億円ぐらいで、東アジアだけで日本と同じぐらいか上回る営業利益を稼いでいます。

中国大陸の営業利益がどれくらいかは開示されていませんので、推測すると売上比率の2/3ぐらいと考えたら、25-36億円ぐらいでしょうか。

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※同上

しかも、これは現状の数字に過ぎず、良品計画の出店計画を見ると、日本の出店数の倍以上を中国で出店する予定です。今後はさらに中国での収益に依存していくはず。

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※同上

現状、欧州事業は上手くいっておらず、また、西南アジア・オセアニアでは店舗数がそこまで伸びていません。人口減少が続く日本の成長見込みは限定的ですし、良品計画の成長戦略の柱は誰が見ても中国での店舗数増・売上利益増です。

話は変わりますが、中国は、新型コロナウイルスなどなどについて中国に批判的な態度を示したオーストラリアに対して、ありとあらゆる経済制裁を行っています。

新型コロナ: 中国、豪産牛肉輸入を一部停止 「禁止薬物を検出」: 日本経済新聞

中国の豪産石炭輸入禁止、事実なら「WTO協定違反」 豪首相 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

オーストラリア、中国をWTOに提訴へ 大麦への追加関税で 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News

CNN.co.jp : 豪産ワインへの制裁関税を最終決定、最大218% 中国

巨大化する中国経済の恩恵を受けるということは、経済を人質にされることと同義というわけです。