斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

学校の先生に「プールで日焼け止めを塗っていいか」とお願いして許可されるか?

親にとっては地獄の夏休みが始まりましたね!

 

夏休みといえば花火、お祭り、海・プール。プールについては先日AERAでこんな記事がありました。

「プール授業の日焼け止め」巡る親と学校の攻防 〈AERA〉|dot.ドット 朝日新聞出版

 一方で、制限を緩める学校は増えつつある。

(中略)

 意外だったのは、この男性教諭がこんな話をしたことだ。

「私自身や周囲の教員仲間が、保護者から日焼け止めの相談を受けたことはないんです。保護者は、考えていることをなかなか伝えてくれないんですよ」

 実際、さいたま市で2人の子どもを育てる女性(47)は、

「日焼け止めを塗っていいかと先生に質問したらダメと言われそうだから、プールのある日はこっそり家で塗っていた」

 と話した。

 保護者は学校とのコミュニケーションをあきらめているということだろうか。

(中略)

 日焼け止め問題の陰に、コミュニケーション問題あり。双方、子どもの健康を考えてのことなのだから、話し合えばきっとわかる。

ということで、親と学校でコミュニケーションをとれば、学校のプールでは日焼け止めを利用できるみたいな結論で終わっています。

 

では、実際、個人のやり取りで何とかできるかといえば、お目こぼしが多少あっても、大抵はNoが返ってくるのが現状ではないでしょうか。調査は2008年2月とちょっと古いですけど、『学校におけるプールの衛生管理に関する質問調査の結果報告書』では、日焼け止めクリームの使用の申し出があった場合に許可するか学校側にアンケートしています。 

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ご覧のとおり、小中高でも許可している割合は2割ぐらいです。

 

また、学校ではないですが、自治体が運営するプールでの利用上の注意を読めば日焼け止めの使用を禁止するところはいくらでも見つけられます。以下は2016年に限ったものでのGoogleでの検索結果から抜粋したもの。

東京都葛飾区

・ サンオイル、日焼け止めオイル等は使用できません。 

東京都品川区

3.サンオイル・日焼け止めクリーム等の使用はできません。

大阪府岸和田市

・プールサイドでの使用は認めるが、プールに入る際は必ずシャワーで洗い落とすこと。 

兵庫県神戸市(こちらら学校プール開放事業の手引き)

(6)遊具(ボール、浮き輪など)やサンオイル、日焼け止めクリームなどの使用は禁止しています。

一方で、許可しているところを見つけるのはすごく難しい。こんな状態ですから、保護者として先生に「プールで日焼け止めを塗っていいか」と言い出しにくいところがあります。というか、仮に個別に聞くべしという運用だと先生や自治体の担当者にしわ寄せが来ることになります。

 

このような何とも言えない中途半端な状態になっているのは、先ほどの調査も行った財団法人日本学校保健会の『学校における水泳プールの保健衛生管理』という2009年5月発行のマニュアルの影響が強いようです。

プールでの日焼け止め禁止に疑問 水質汚染に影響なし、肌守る効果優先を(1/4ページ) - 産経ニュース

プールの水質基準を設定する厚生労働省と文部科学省は日焼け止めの使用を禁止していない。ただ、学校保健を支援する日本学校保健会(同区)が発行するマニュアル「学校における水泳プールの保健衛生管理」に「(日焼け止めを)無条件に全員が使用することを容認すると、プール水の汚れの要因になります」との記述がある。島田委員長は「この見解が影響している可能性もある」とみる。同会はこの記述を残すかどうかも含め、マニュアルの見直し作業を進めている。

実際、日焼け止めを禁止する理由No.1は「プールの水が汚れる」ですからね。

 

でも、実際汚れるかといえば、

第 108 回日本皮膚科学会総会⑮ 教育講演 25 より「学校保健を考える―学校における紫外線対策」

では、懸念されているサンスクリーン剤によるプール水の汚染の可能性は本当にあるのでしょうか?単にイメージとしてそのように思い込んでいるだけではないかということも考えられます。これまでのところ少なくとも3つの水質検査の報告があります。

市橋らは平成 16 年に金沢市の小学校のプールで 52 名の児童にサンスクリーン剤をお互いに塗ってもらい、プール授業の前後でプール水の水質検査を行ないましたが、サンスクリーン剤で懸念される濁度に全く変化はみられませんでした。

大阪皮膚科医会の調査では、14 校のうちサンスクリーン剤使用を自由にしている学校は4校、条件つきで使用自由の学校は3校、使用禁止の学校は7校ありましたが、学校環境衛生基準の水泳プールの管理に基づいた項目については、サンスクリーン剤使用による水質基準に変化はなかったと報告しています。

佐々木らの一夏を通じた調査でも、小学4-6年生 60 名(うちサンスクリーン剤使用者 30 名、プール授業の参加平均 3.5 日)の全身に小児用サンスクリーン剤(SPF34,PA+++)を塗布してもらい、プール授業開始前、開始後2週間毎にプール水を採取し、学校環境衛生基準の水泳プールの管理に基づいた6項目とサンスクリーン剤成分のひとつである亜鉛とその化合物を測定した結果、文部科学省、環境省が定める基準以内であったと報告しています。これらの結果はサンスクリーン剤でプール水が汚染されると
いう懸念はないことを示しており、学校関係者や行政にこの事実を広く理解してもらう必要があります。

※太字は筆者

こんな結果が確認できています。大阪皮膚科医会の論文の発表は2009年で最も遅く他の調査はそれよりも以前のものです。これだけエビデンスが揃ってきているなら、日本学校保健会はマニュアル作成時点(2009年)では気づいていなかったとしても、2016年の今なら、もう改訂しちゃっていいと思うんですけどね。(先ほどの2015年の産経新聞の記事では見直し作業を進めているらしい)

 

これをもとにしつつ、日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会がこんな指針を親や先生向けに出しています。

学校生活における紫外線対策に関する具体的指針

4)サンスクリーン剤を上手に使う

 プールの水質汚濁が懸念されていますが、耐水性サンスクリーン剤を使用しても汚濁されないことは複数の実証実験で明らかになっています。 必要な時には使用を許可しましょう。塗る時間は午前の授業であれば通学前に自宅で、午後の授業であれば昼休みに場所を決めて塗るようにすると時間の無駄がなくて良いでしょう。

ここまでお墨付きがあるのだから、学校にはプールでの日焼け止めの利用を納得していただきたいところです。少なくとも禁止を明示しないでほしい。

水質汚濁を大々的に言ってしまって引っ込みがつかないとか、それでもやはり水質汚濁が気になるなら(声の大きい人に配慮するなら)、ウォータープルーフ仕様の日焼け止めをOKにすればいい。落とすにはクレンジング剤が必要なので利用は手間ですけど。

 

なお、紫外線についてはこんなデータがあります。

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※日最大UVインデックスが8以上の年積算日数の経年変化。画像は気象庁| オゾン層・紫外線の診断情報 | 紫外線の経年変化より

住んでいる地域で微妙に異なる部分もあるでしょうが、年々紫外線量は増えているようです。昔と今とでは状況が違うんですよね。

 

ただ、この話になると夏はそもそも外出しない方がいいんじゃないかという議論にも発展します。WHOではUVインデックスが8以上の日は外出を控えるようにとしていますから。将来的に紫外線量が増え続けるなら、夏に屋外プールを使用すること自体推奨されなくなるかもしれない。

 

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※ウォータープルーフだと定番のアネッサも使うけどなんだかんだ高い。広い範囲を塗るときはこちらの商品を使う。ウォータープルーフの中で圧倒的に安い。300円~400円でDSで買える