エゴサーチしてたら、
7万リツイートを超え、有名人からも絶賛の嵐。大阪府立登美丘高校ダンス部 振付師 akane に独占インタビュー | ダンスの情報サイト Dews(デュース)
自分は、彼女達の努力と凄さに感嘆しつつも切っても切り離せない「部活」のあり方に、高校野球との区別や切り離しが情報不足ゆえできない所があり、なんだかモヤっとしてしまう。トピシュさんに分析してもらいたい。
2017/09/17 23:51
こんな依頼があったので、簡単に書いてみます。
記事は、最近話題になっている、登美丘高校ダンス部について、そのプロデュースを行ってきた振付師さんにインタビューしたものです。
※まさにイメージ画像らしいイメージ画像。足元の荷物が気になる。
大阪府立登美丘高校ダンス部振付師インタビューで何がモヤモヤするか
この記事に、「部活」問題として、モヤモヤする人がいるとしたら、ハードな練習をしてこそ鍛えられるという考えが見えるからでしょうね。該当する箇所を紹介します。
7万リツイートを超え、有名人からも絶賛の嵐。大阪府立登美丘高校ダンス部 振付師 akane に独占インタビュー | ダンスの情報サイト Dews(デュース)
STAFF 練習はどのくらいしてるんですか?
akane 夏休みは、6〜9時間くらいですね。
STAFF 毎日ですか?
akane はい。毎日ですよ。
STAFF すごい練習量です。オフの日はないんですか?
akane ないです。
STAFF なしですか(笑)。
akane 学業にも力を入れるために、週に一度活動のオフ日を作らなきゃいけないという大阪府のルールがあるので週に一度は休みなのですが、学校ある日は月曜日とテスト期間以外は全部部活です。
それに今は常に出演オファーとか、大会の本番があるんで、それに向けて毎日やらんと間に合わないんです。
普段の授業がある日は、6時までとか7時までとか、学校がしまるまで、土日とかは6〜9時間くらいやります。
STAFF 練習場所は体育館とかですか?
akane 廊下と屋上です。動画やTVなどでも映っているあの屋上以外ないんですよ。だから雨降ったら廊下しかないから、狭い細いところでやってます。一列になってやっているので、踊っていて手が当たったりします。
STAFF 決していい環境とはいえない状況だったんですね。
akane よくないです、公立なので仕方ないです。屋上で外なんで、めっちゃ暑いんですよ。影もないので床めちゃ熱いんですが、裸足で踊れっていって、「あついあついー!」とか言いながら(笑)。
STAFF だから鍛えられてるのかもしれないです。
akane そうなんです。
学校がある期間は週六日で、夏休み期間中は毎日練習ということです。そして、床が熱いなどよくない環境で練習しているからこそ生徒が鍛えられるという話になっている。
インタビュアーのSTAFFさんが練習量や練習環境を持ち上げるようなコメントをしていて、それに振付師の人もノッて答えた部分はありそうなんですけどね。リップサービスはかなり入っている気がする。
ブラック部活動と定義する基準はあるのか
では、登美丘高校ダンス部がブラック部活動かと言われれば、たぶん、そう思う人は少ないでしょう。
ブラック部活動という言葉は浸透していても、その定義はまだ定まっておらず、「あの部活はブラックだ」「あの部活もブラックだ」と個人の印象論で語られがちなのが現状です。ただ、誤解を恐れず個人的に線引すると、その部活動がブラック部活動かどうかは、
- 生徒に対し部活動への参加が強制されているか
- 生徒が精神的な肉体的なダメージを受けているか、リスクがあるか
という2点で行われているというのが感覚としてあります。企業がブラック認定されるのも、労働の強制と社員への労働の悪影響で語られることが多いですし、それに準じる形ですね。
ブラック部活動として紹介されることが多い高校野球では、やはり注目度もあって、1もしくは2に該当する事例が時々登場します。
「文武両道あり得ない」下関国際・坂原監督が野球論語る|野球|スポーツ|日刊ゲンダイDIGITAL
野球部員「100m走100本」で熱中症 コーチの指示 - 高校野球(甲子園)-第99回全国選手権:バーチャル高校野球
手首を骨折していても本塁打 前橋育英、信頼応えた4番 - 高校野球:朝日新聞デジタル
手首を骨折しているのに試合に参加させるなんて、調べてはいませんが、指導者は当然処罰されていることでしょう。ありえないことです。
登美丘高校ダンス部の活動は、インタビューから推測する限り、部活動への参加の強制はなさそうですし、練習量が多いことや、熱い床で裸足で踊らせていることぐらいだと、生徒への悪影響はそれほど大きくないと受け止められて、(特に高校野球との比較感だと)ブラック部活動と考える人は少ないでしょう。
私は靴下ぐらい履かせたほうがいいと思いますけどね。夏場の床に素足で立っていたらヤケドすることは十分ありえるから。もしかしたら、ダンスの感覚を養うためには裸足が重要なのかもしれないけど。
先生から見たときのブラック部活動
ちなみに、ブラック部活動かどうかは先生目線でも語られることがあります。
こちらは労働問題であって、先生自体が置かれた現在の厳しい労働環境が前提としてあるので、ブラック部活動として一括りに生徒にとっての問題と一緒に議論すると、論点がごっちゃになりがちです。
先生の部活への関与は、まずは先生が部活の顧問となることの強制をなくした上で、仮に顧問となるなら適切な休暇と手当てが提供され、時には民間へのアウトソーシングも検討するというのが基本路線でしょう。
休暇という観点では、先ほどの振付師さんはこのように勘違いしているんですけど、
akane 学業にも力を入れるために、週に一度活動のオフ日を作らなきゃいけないという大阪府のルールがあるので週に一度は休みなのですが、学校ある日は月曜日とテスト期間以外は全部部活です。
大阪府が決めた週一度のオフ日、公式には「ノークラブデー」は、先生の働き方を考慮して導入されたものです。報道もそういう方向性だし、
週1回「ノー部活デー」大阪府立高、来年1月から試験実施 教員の負担を軽減 - 産経WEST
導入を決めた教育長もこのようにコメントしています。
今一度、働き方を考えていただくという思いも込めて、学校ごとに遅くとも午後7時までに全員退庁する日を週1回設ける「全校一斉退庁日」と、各学校のクラブごとに土日も含めて週1回の休養日を設ける「ノークラブデー」の設定を行うよう、私(教育長)から通知を行います。特に、月80時間を超える教職員約55%がその原因としてクラブ活動をあげているという実態がありますので、休みなしでクラブ活動を続けるのではなく、週に1回は休養日を設け、やり方を考えてもらいたいという意味も込めて通知を行うこととしました。
要するにノー残業デーやプレミアムフライデーとかそういうノリです。
この「ノークラブデー」は大阪府の『教職員の業務負担軽減に関するプロジェクトチーム』が『教職員の業務負担軽減に関する報告書(平成25年3月)』という報告書の中でも提案されています。急に教育長が決めたわけではなく、以前からあった議論というわけです。
しかし、大阪府の通知文がいくら探しても見つけられないので何とも言えないんですが、振付師さんが言うように、各校には(先生の休養のためということではなく)生徒の学業のためということで通知がされていたり、認知がされているとしたら、それはそれで恐ろしいことだと思います。
何しろ、先生のためということだと部活の休みを設ける名目として弱いと考えられている可能性があるから。先生はプライベートより仕事を優先すべきと考えている風潮はまだまだ根強くあります。
部活動が指導者のアピールの場になることの弊害
先ほど、部活動の民間へのアウトソーシングと書きました。登美丘高校ダンス部は部活動のアウトソーシングの事例とも考えられます。振付師さんは恐らくは登美丘高校の先生ではないでしょうからね。昔から、顧問は先生だけど、コーチは先生以外の専門家がやるというのはあったので、アウトソーシングと大げさに言わずとも、その延長線上でも語れますが。
私個人は部活動のアウトソーシングは先生のためにも生徒のためにもぜひ進めてほしいと考えています。ただ、部活動が完全に民間に行われることで起きるだろう問題も同時に認識しています。どうやって誰が対価を支払うのか、親と普段どのようにコミュニケーションを取るのか、どうやって専門家を探し出すのかなどなど、課題は多い。
今回の登美丘高校ダンス部と絡めると、部活動のアウトソーシングのリスクとして他にありそうなのが、部活動がその指導者にとってのアピールの場になることで起きる弊害です。
登美丘高校ダンス部の振付師さんは生徒のことも考えている一方で、ご自身をプロデューサーとして売り出すことも企図しているんじゃないかとインタビューからは伺えました。登美丘高校ダンス部の動画がYoutubeの振付師さんのアカウントで公開されているところからも、そんな感じはします。
もちろん、部活動の指導をする側にインセンティブはあってしかるべきだし、登美丘高校ダンス部の生徒からもSNSでの売り出しを先生にお願いしたほうがメリットはあるだろうから、「自分のために生徒を利用して」と一律に非難するものではありません。登美丘高校ダンス部では利害が一致しているように見える。
ただ、部活動のアウトソーシングが一般的になり、プロが自分のアピールのために部活動で指導することも当たり前になってくると、どこかで問題が起きるとは思います。何しろ、これまで以上に部活動の全国大会の位置付けがシビアになりますからね。先生は部活が本職じゃないですけど(勘違いしている先生はいるけど)、外部の指導者は本職になるわけだから、生徒より自分を優先するインセンティブが働くのは当然です。
そういう意味では、過度な資本主義を規制するみたいな感じで、過度なアウトソーシングは規制が必要になりそうな気がします。内田良さんは、ブラック部活動を減らすために総量規制を提案しているけれど、これも一つの対応策。
内田良さん、ブラック部活動は「自主的なのに強制され、自主的だから過熱していく」 - 弁護士ドットコム
ただ、この問題については、先ほどの外部指導者の導入がそうであるように、今の改革では危うい点があると考え、エビデンスのない未来であっても、たたき台として世に示す必要があると考えて、総量規制という未来展望図を提案しました。
朝練や土日練習を減らしたり、大会への参加回数を減らしたりするなど、徹底して部活動をスリム化していく必要があります。
部活動をSNSでアピールするのはまだまだ先進的で、それがプロによってプロデュースされるというのもそんなに当たり前になるはずはないでしょうけどね。
今回は公立だけれど、お金のある私立が、こういうことにドカッと投資し始めると、議論が起きそうな気がします。