斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

"男性に無理やりキスされた私はもう結婚できませんか?"

先月で読売新聞の人気コーナー『人生案内』が100周年を迎えました。

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photo by Anvica

 

人生案内が100周年

人生案内100年 相談者のその後:悩める女性へ…人生案内100年:くらし100年:大手小町:読売新聞(YOMIURI ONLINE)

読売新聞の「人生案内」は、今年100周年を迎える。前身の「身の上相談」欄が、1914年(大正3年)に創設され、長く読者の悩みに寄り添ってきた。

『人生案内』は、読者がハガキを送り、専門家が答えるというもの。ネット上の人生相談サイトとして熱狂的なファンがいる発言小町の起源です。

読売新聞の紙面で読む以外には、有料公開で電子版が、無料で英語版が週に2本、The Japan Newsで公開されています。英語版の名称は『Trouble shooter』です。 

それで、いつものようにTrouble shooterを読むためにThe Japan Newsをチェックしていたら、こんな記事が公開されていました。

100th year of Troubleshooter - The Japan News

This year, the lifestyle section of The Yomiuri Shimbun is marking its 100th anniversary, along with its popular Jinsei Annai troubleshooting column.

先ほど紹介した日本版の完全英訳版と思って読んでいたのですが、後半に、過去100年のうち代表的な相談が掲載されていました。

10相談、タイトルだけであるものの、どれもその時代に即したもので、タイトルだけでも大変面白いものでした。

日本語版は探した限り公開されていなかったので、せっかくなので、和訳して紹介します。

 

過去100年のうち代表的な相談

Representative problems

-A man forcibly kissed me. Am I still eligible to marry? (woman, 1914)

【参考訳】(1914年女性の相談)ある男性に無理やりキスをされてしまいました。まだ私に結婚する適正はあるでしょうか

【コメント】100年前の日本人女性の貞淑を象徴するような相談です。全文読みたい。ただ、1914年のコーナー開始時点で、そんな貞淑な女性が自ら新聞社に投書するのかという疑問はありますね。

-When my unit was demobilized and I returned home, I found my wife and children now live with my best friend. (man, 35, 1949)

【参考訳】(1949年35歳男性の相談)自分がいた部隊が解散され、我が家に返ってきたら、妻子が親友と一緒にくらしていました。

【コメント】第二次世界大戦後の相談。1945年から4年経ってからの相談だとすると、相談者の方はシベリアに抑留されていたり、何か特殊事情があって帰国が遅れたのかもしれません。帰国が遅れれば戦死扱いとみなされることもあるでしょうから、こういう光景は当時はあるあるネタだったのかも。

-I have mixed feelings over my daughter’s plan to marry a U.S. military officer stationed in Japan. (woman, 52, 1957)

【参考訳】(1957年52歳女性の相談)娘が在日アメリカ人将校と結婚しようとしていて複雑な気持ちです。

【コメント】1950年代は、1950年に朝鮮戦争が勃発し、旧日米安保条約が締結されています。52歳の女性であれば、第二次大戦中の日米関係は当然頭にありますし、娘が遊ばれているのではないかとも疑問に思ったのかもしれません。

-My elder brother is deeply involved in student activism. I’m concerned it may hurt my prospects for marriage. (woman, 20, 1977)

【参考訳】(1977年20歳女性の相談)兄が学生運動に深く関わっています。これが私の結婚の妨げになるのではないかと心配しています。

【コメント】1960年台までは学生運動に対して世論としては好意的なものがあったものの、1972年に沖縄返還、連合赤軍のあさま山荘事件などを経て、学生運動に対しては否定的な空気に変わっていきます。1977年はそんな頃。妹にとっては悩みの種だったんでしょうね。結婚が家族間で行われるのも変わらない日本の結婚観。

-My husband is a workaholic and has begun having health problems. (woman, 36, 1983)

【参考訳】(1983年36歳女性の相談)夫がワークホーリックで最近健康に異常を来しています。

【コメント】バブルが始まる直前の相談です。この頃はまだ週休1日制で、過労死という概念も浸透していなかったはずです。

-I was sexually harassed and verbally abused by my boss at work. (woman in her 40s, 1993)

【参考訳】(1993年40代女性の相談)職場で上司からセクハラされ、罵られました。

【コメント】男女雇用機会均等法の施行は1986年。セクハラが流行語大賞に選ばれたのは1989年。1990年代の初頭はセクハラが一気に浸透した時期で、ならではという相談です。

-Is it wrong for me to pursue a pop idol? (woman, parttimer in her 30s, 2001)

【参考訳】(2001年30代女性パートタイマーの相談)私がアイドルのおっかけをするのはおかしなことなのでしょうか?

【コメント】ジャニーズか、モーニング娘。のおっかけでしょうか。本人がおかしいというより、きっと親が「アイドルのおっかけばかりしていないで結婚しなさい!」と言っているか、夫が「その年でアイドルのおっかけをしているなんて恥ずかしくないのか」と言っているのかどちらかでしょうね。

-My thirtysomething son has isolated himself from society and is addicted to online shopping. (woman in her 60s, 2007)

【参考訳】(2007年60代女性の相談)アラサーの息子が引きこもり、オンラインショッピングにハマっています。

【コメント】online gameかと思ったら、online shoppingという相談。2007年ですから、Amazonも楽天も既に浸透しています。買い物はお金を断てば済むものの、引きこもりの解決にはならないんですよね。

-My pet died. I blame myself for its death. (man in his 50s, 2011)

【参考訳】(2011年50代男性の相談)最愛のペットが死にました。自分を責めてしまいます。

 【コメント】ペットロス症候群が一般に広がったのは2000年代です。子供がいるかは分かりませんが、50代であれば子供が手から離れる頃です。ペットとの思い出を日記に書くのがいいかなと思います。

-I’m having trouble with a friend on a social network site. (woman in her 20s, 2013)

 【参考訳】(2013年20代女性の相談)SNS上の友人とトラブっています。

【コメント】一気に現代っぽくなりましたね。まったくSNSに門外漢であれば、「気にしなくていいのでは?」と思ってしまいますが、そのSNSでそれなりの人間関係や地位を築いていたら話は別。リアルの友人と同じように対処するのが解決の鍵ではないでしょうか。

 

締め

全10相談を紹介しました。読売新聞の編集部の方が意図的にそれらしいものを抜粋したのだと思いますが、どれもその時代を色濃く反映したものですよね。(これまで毎日掲載されてきたわけですから、約3万投稿の中でどうやって選別してきたのかと考えると頭が下がります。)

相談が違えば回答も異なるもの。当時の常識で答えなければ、相談者も納得しないし、動きづらい。相談への回答は凄く簡単にやってしまいがちですが、個人個人の置かれた環境や時代特性を考えると、気軽にアドバイスできるものではないんですよね。

できるなれば、過去100年の人生案内を何らかの形で公開してくれると嬉しいなと思います。データベースとして価値がありそう。英語版はこなれた英語で英語の勉強にもなるから早く本になって欲しいですね。

 

関連

小町で連動企画がありました。

 

【人生案内×発言小町】「“毒親”への悩み」 母の前に犠牲(いけにえ)になった : 編集部からのトピ : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

これは1916年の人生案内を掲載したもの。

 

【人生案内×発言小町】「シニアの恋愛」 90歳代女性。3年付き合った彼と連絡が途絶え寂しい : 編集部からのトピ : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

これは2013年のもの。

 

【人生案内×発言小町】「美魔女」 夫の姉妹に会うたび「太った?」と言われつらい : 編集部からのトピ : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

これは2011年のもの。

 

【人生案内×発言小町】「イクメン」 夫は「仕事の鬼」…よい父になってほしい : 編集部からのトピ : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

これは1961年のもの。

 

編集部発のトピらしく、どれも大して盛り上がっていませんが(トピ主レスが優等生で、ストーリーも展開しないから)、今の視点からどう回答するか、今の常識が通用するかしないかを考慮した上での、コマッチャの回答は大変面白いので、ぜひ読んでみてください。