たまたま立て続けに、日本の食生活指針で『一日30品目食べること』の推奨が2000年に削除されたこと、アメリカの食生活指針の2015-2000年版で『(歯磨きでの)フロスの使用』の推奨が削除されたことを知りました。
削除の事実
一つ目の『一日30品目食べること』の削除は『“町内会”は義務ですか』を読んで以来ブログも購読している紙屋研究所(id:kamiyakenkyujo)さんが、
森永卓郎『モリタクの低糖質ダイエット ぶっちぎりのデブが4カ月で19.9kg減!』 - 紙屋研究所
ぼくがよく読んだのは『脂肪肝・NASH・アルコール性脂肪肝の安心ごはん』(女子栄養大学出版部)と『これならできるコレステロール・中性脂肪を下げるレシピ 』(新星出版社)だった。
とくに『脂肪肝・NASH・アルコール性脂肪肝の安心ごはん』はわかりやすかった。
紹介していた本に書かれていました。驚いてTweetしたら、あれよあれよと5000RTされました。知らなかった人が多かったのだと思います。
一日30品目食べようという標語はもう十数年前に削除されてたのか! 姑は未だにこれ遵守して、我が家の食事にも口出してるよ!!
— 斗比主閲子 (@topisyu) 2016年7月26日
※『脂肪肝・NASH・アルコール性肝炎の安心ごはん』p.19 https://t.co/gpOdOLWqUs pic.twitter.com/ckz8b8gFJ8
そして、昨日、この記事(6年間欠勤がなかった部下が休日出勤の日に「2時間遅れる」とワガママを言ってきた)をきっかけにブログを購読するようになったid:fujixeさんのブログで、
アメリカ歯科協会(ADA)は1908年からずっとフロスの使用を推奨しているが、当時大した根拠があったわけではない。今も根拠は明確でない。アメリカ政府の食生活指針からは、フロス使用の推奨が削除された。
こんな記事を読み、また驚きました。
削除の経緯
自分が驚いたのは、科学的根拠(エビデンス)が乏しいことを日本やアメリカの政府が推奨していたことです。そして削除されたのは明示されない。
日本での『一日30品目』が削除された経緯はこんなところだったようです。
削除された経緯については、この標語を根拠なく掲げたのと同様に、根拠なく取り下げたっぽい感じがするコメントを見つけちゃった。
— 斗比主閲子 (@topisyu) July 26, 2016
※『日本食文化テキスト』(熊倉功夫)https://t.co/2ReDm6SZi5 ←農林水産省 pic.twitter.com/VNsm3I73bv
当時の議事録を読むと「主婦には実現不可能」「今回は数字を入れない方針」ということで、削除になったみたい。何だそれ!
— 斗比主閲子 (@topisyu) July 26, 2016
※『食生活指針検討委員会(平成11年度)』の第2回・第4回議事概要https://t.co/1fsJJnPguw pic.twitter.com/15y12JRiGa
また、アメリカでのフロス使用の推奨が削除されたのはこんなところ。
アメリカ政府は1979年からフロスの推奨をしていて、途中から5年に1回更新される食生活指針にも載るようになったと。で、この食生活指針に載るものは法律に従い、科学的根拠が必要。https://t.co/DGZmjKzPrr
— 斗比主閲子 (@topisyu) August 3, 2016
『AP通信がフロスを推奨する「根拠は何よ」とアメリカ合衆国保健福祉省(アメリカの政府機関)に質問したら、フロスが有効だという根拠はこれまでなかったと認めた。
— 斗比主閲子 (@topisyu) August 3, 2016
2015年-2020年の最新の食生活指針でも何の通知もなくフロスの推奨が削除された。』
ということらしい。うわー
政府の推奨から削除 ≠ やってはいけないこと
では、それぞれ削除されたことで、個人としてやらないほうがいいことなのかといえば、必ずしもそうではないですよね。
栄養をバランスよく取ろうと思えば、30品目といわずとも多くの食材を取ろうとすること自体は悪いことでない。また、実際にフロスで歯垢が取れている人やフロス自体が気持ちよくて続けている人もいるでしょう。私もフロスは使用しています。
フロスの使用がアメリカの食生活指針から削除されたことは、GIGAZINEでも取り上げられていました。記事のタイトルがフロス使用のエビデンスの乏しさに触れたものであったためか、はてなブックマークでは、フロスの使用を肯定する人のコメントが散見されました。「経験的にはフロスの使用に効果があるのは明らか」みたいな感じで。
はてなブックマーク - 実は歯と歯の間をキレイにする「デンタルフロス」の効果には医学的な裏付けがなかったことが判明 - GIGAZINE
根拠が乏しいことを政府が推奨しちゃダメでしょ
では、科学的根拠は乏しいけど個人の実感として意味があると感じていることを、政府が推奨していいかといえば、それは話は別ですよね。
「視力回復のためブルーベリーエキスを摂取しよう」
「ヒエルロン酸で肌がモチモチ」
「マイナスイオンで髪がサラサラ」
「水素水で健康になろう」
こんなことを政府が推奨したらどうか。恐ろしいですね。
これらの疑似科学といわれているものでも、個人として効果があると信じている人はいます。根拠がなくても、効能を実感している人は(探せば)います。
本人にとって自明なことが他者にとっても自明とは限りません。多くの人に推奨するようなことは根拠がなくてはならない。政府が根拠がないものを推奨するのは危うい。
フロスの使用とこれらの疑似科学といわれるものを並べるのはどうかと思いますけど、極端な例としてあえて紹介しました。
締め
アメリカの食生活指針に掲載されるものは法律に従い根拠が必要だそうです。日本の食生活指針も根拠法は確認できませんでしたが、科学的根拠に基づくという考え方はあるようです。
※画像は、『食育の推進に向けて』(内閣府)より
根拠がないと分かったものを削除する行為を批判すると、政府としてもなかなか引っ込み辛くなるでしょうから、それ自体は肯定的に受け止めてます。ただ、何か推奨したり、何か政策を実行したりするときは、エビデンスも簡単に確認できるようにしてくれると嬉しいですね。
ちなみに、まだうちの姑には『一日30品目』の推奨が削除されたことは伝えていません。姑世帯がどんな食事を作ろうが我が家が介入することではないので、今度我が家に姑が介入してくることがあったら話してみます。
※カゴメの『野菜一日これ一杯』を飲めば30品目取れる!