斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

恋愛初期のキュンキュンする感じを味わいたい⇛『逃げるは恥だが役に立つ』

いや、そんなにキュンキュンする感じを味わいたいとは思っていませんし、セックスを複数回した後のズブズブなあの慣れた関係性の方がいいとも思っていませんが、たまにキュンキュン成分に接すると「ああ、こういうのいいよね」とどこか琴線に触れるところがあるのを否定はしません。

 

自分は既婚であり、子どもも複数人いますし、そもそも自分から積極的に誰かを狩りに行くこともしませんし、ほんの少しのキュンキュン成分を充足させるために、リアルに誰かと付き合いたいなんてことは考えません。仮に都合のいい誰かがいたとしても、移動する手間や時間を合わせる手間や、もろもろのコストやリスクを考慮すれば選択肢にも上がりません。しかも、恋愛のキュンキュン成分というのは本当に初期の初期しか得られないものです。都合のいい人を頻繁に切り替えるなんて、簡単にはできません。

 

キュンキュン成分というのは、人を狂わせるものでもあるんですよね。キュンキュンしている時は相手のいいところばかりが目に入り、悪いところは捨象するように脳が働く。これ、頭がいいとか、悪いとか、そういうの関係なく、たぶん、大体の人が経験していることだと思います。恋は盲目というやつです。

 

そういうキュンキュン成分オンリーで結婚すると、キュンキュン成分が枯渇していって、結婚生活がつまらなくなってきます。そういう意味で、キュンキュン成分というのは最初の何回目かまでのセックスを実現するのには非常に有効な成分なんですよね。人間の脳みそは良く出来たものだと感心します。(ずーっとキュンキュン成分と書いてますけど、たぶん医学的にどういう成分が脳内で検出されているかは確認されているはず。)

 

既婚でも既婚でなくても、日々の生活に彩りを添えるために、皆さん何かの方法でキュンキュン成分を確保しているんじゃないかと思います。たぶん、多いのは恋愛系のエンタメ作品を通してですかね。テレビドラマや小説や映画や音楽では、ズブズブなセックスに至るまでのヌルい恋愛に関する作品が溢れかえっていますから。人によっては実際の人間にお金を払っていたりもしますよね、クラブだったり。

 

自分の場合は、もっぱら恋愛漫画から吸収するようにしています。お手軽さとしては漫画はピカイチです。

 

でも、どんな恋愛漫画からでもキュンキュン成分を吸収できるかというとそういうことでもありません。必然性がないと嫌なんですよね。二人がちゃんとしたプロセスを経て出会って、ちゃんとしたお互いの動機があって、くっつくか、くっつかないか、そういうギリギリの線を演出してほしい。しかも、セックスの存在は触れる形で。

 

酔っ払って気付いたら年下のイケメンに処女を奪われていたみたいな準強姦話や、特に何の理由もないのにCEOから求婚され続けるような話や、嘘をついて擬似彼氏になってもらったら本当に付き合うようになっちゃう話とか、怖い彼のことは私だけが分かっているとかそういう話は、もう勘弁です。キュンキュンできない。

 

このように、キュンキュンできるSweet Spotが狭いこともあって、たまにそういう作品に出会えると凄く嬉しくなります。 

 

最近良かったのは、海野つなみさんの『逃げるは恥だが役に立つ』です。

逃げるは恥だが役に立つ(1) (KC KISS)

逃げるは恥だが役に立つ(1) (KC KISS)

 

 

主人公の森山みくりは大学で心理学を選考していた26歳の女性。正社員で就職できず派遣切りに遭ったため、たまたま、父親の元部下の津崎平匡(ひらまさ)さんという37歳京大卒の童貞の男性がお手伝いさんを必要としていたので、一時的にハウスキーパーとして働くことにします。特に恋愛感情もない二人だったのですが、配偶者手当があったり、みくりは健康保険にも加入できるというメリットがあったりするので、住民票で届け出をして事実婚にすることで結婚することにします。

 

こういう設定の話です。フィクションだから許される話ですけど、フィクションじゃなければ炎上しますね。言っちゃえば偽装結婚ですから。みくりはハウスキーピングでひらまささんから支払いを受けているのに税務申告していないでしょうから本当は脱税です。作中では、「法に反することはしていない」とキャラクターは主張していますけどね。確かに表面的に結婚していたら、税務署も文句は言えません。結婚している夫婦での生活費のやり取りにしか見えませんから。

 

主婦業は無報酬の労働という話があり、では対価を払ったらいくらになるかというのは政府がちゃんと統計出しているぐらい一般的になっているもので、たまにネットでも燃えるネタの一つではあるんですが、たぶん、そこから逆算して作り出した設定なのかなと思います。結婚を制度のみの存在として捉えて、主婦業にも対価を支払うということにしたら面白いんじゃないかという発想。

 

最初は設定の面白さで読み始めたものの、徐々にキュンキュン成分が増えてきていて、今はそちらが楽しみです。あまりネタバレはしたくないですが、理屈っぽい二人が、周りに偽装結婚であることがバレないように恋愛も偽装するようにするために、以下のように理屈っぽくスキンシプをし始めるのですが、

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※月二回の資源ごみの日にハグをするというルールを設ける二人。(4巻P12から)

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※スキンシップを素因数分解するみくり。(5巻P146から)

こうやって整理しておいて、でも実際ハグし始めたりすると、お互いに元々嫌だと思っていないから、相手が好きだー!という気持ちがモワモワと立ち昇ってきます。

 

心理学の院卒の理屈っぽい女と京大卒の童貞をこじらせた男という組み合わせなので、理屈っぽくなりがちで、しかも、主人公のみくりがグローバル化や派遣切りや女性の出産年齢について色々持論を力説するところがあったりと、鼻持ちならない部分があるので、読み手を選ぶところはあると思います(あと、ゲイに対する描写も酷い)。

 

ただ、こういう理屈っぽさが許容できて、キュンキュン成分を補給したいなら、かなりお勧めできる作品になっています。もちろんすぐにセックスしたほうがいい教の人は耐えられないと思いますけど。

 

できれば、このままセックスなしで進んでくれると嬉しいんですけどね。どこかで一線を突破して、朝チュン展開になりそうなのが不安です。少なくとも、5巻までではセックスしていませんので安心してください。