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斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

宿題が多いことは学力向上に繋がらないかもしれないが、宿題をすることは学力向上に繋がる

子どもの夏休み中の勉強についての方針を考えている時に、よく見ているブログで、こんな分析がたまたま紹介されているのを見かけました。

タイラー・コーエン 「宿題の量と学力との間にはどんな関係がある?」(2005年6月21日)/ マーク・ソーマ 「宿題なんてまっぴら御免だ」 — 経済学101

その分析結果はというと、(学校から出される)宿題の平均的な量と学業成績との間には何の相関も見出されなかったのであった。例えば、ベーカー教授が指摘しているところによると、日本やチェコ、デンマークといった生徒の成績が高い国(TIMSSの成績上位国)の多くでは宿題はそれほど出されていない一方で、タイやギリシャ、イランといった生徒の平均的な成績が極めて低い国(TIMSSの成績下位国)では宿題の量はかなり多いということだ。 

引用箇所は、1994年と1999年の世界のデータを使った2005年の研究に関するものですから、少し古い話ですね。直感的には、勉強したほうが学業成績が良くなると思っていたので、宿題の量と学業成績との間に相関がないということが各国比較で確認されていたことに驚きました。

 

日本での宿題と学力の関係を調べたもの

ただ、こういう話があるからといって、宿題が不要かと言えばそうでもないだろうからと、何か関連する調査があったようなと検索していたら、日本での大規模調査で、宿題に関して触れていたのを見つけました。

平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究(PDF)

この調査は、日本における、親の所得と子どもの学業の相関を浮き彫りにするなど、公表された2014年当時は話題になったものです。

親の年収と成績

※画像は同調査のP85から。Lowest SESは子どもの親の平均世帯年収が350万円ぐらいで、Highest SESが平均世帯年収920万円です。見て分かる通り、世帯年収と成績に相関が確認できる。

今回はこの調査の宿題に該当する箇所に限定して紹介してみます。

 

「授業の予習・復習をする」等との比較で「宿題をしている」が効果的な学習方法

この調査では、所得と学力には相関が強い中で、他の要素で学力と相関が強いものがないかを検証しています。当たり前ですけど、結論として、「お金持ちの子どもほど成績が良い」だけではちょっといけてませんもんね。

それで、色んな学習方法と比較して、何が学力を上げることに効果的かを検証した結果がこちらです。

(7)分析 4:学習方法が学力に与える効果

最後に、社会経済的背景と学習時間を統制した上で、児童生徒がどのような学習方法をとれば、それが独立して学力にポジティブな影響を与えているかについて分析を行う。分析には、「自分で計画を立てて勉強をしている」、「学校の宿題をしている」、「学校の授業の予習をしている」、「学校の授業の復習をしている」、「苦手な教科の勉強をしている」、「テストで間違えた問題について勉強している」の 6 つの変数のうち、全ての学年段階、教科に対してまんべんなく学力に対して効果的な変数を探索する。その結果、最も普遍的に学力に対してポジティブな効果のある学習方法は、「学校の宿題」であった。

(同調査P104より。太字は筆者)

どれも効果はあるのだけれど、最も普遍的という意味では、「学校の宿題」が学力向上に繋がるということだそうです。ここでの普遍的というのは、親の所得や、性別や、学習時間の影響を排除した場合で、ということですね。

 

宿題はちゃんとチェックしてフィードバックをすること

ただ、やたらめたらに宿題を出せばいいかというと、必ずしもそうではないということについても言及されています。

第四に、宿題をする児童生徒ほど高い学力を得ることができることが把握できた。これは、社会経済的背景や学習時間とは別に、学習方法が独立して学力に与えるポジティブな効果である。この第四の知見は重要である。それというのも、本章では児童生徒がとっている学習方法に焦点を合わせたが、次章ではどのような学校の取り組みが学力格差を縮小するかを分析している。その結果が示すのは、教員間で「家庭学習の共通理解」をしている学校ほど児童生徒の学力格差が小さいということである(詳細は、第 4 章(2))。また、事例研究のインタビュー調査においても、家庭学習や宿題を教員がきちんと確認し、児童生徒にフィードバックすることの重要性が指摘されている(詳細は、第 7 章)。これらの結果と本章の分析を合わせれば、学力格差縮小には、宿題ないし家庭学習の取り組みの重要性が示唆されるということである。むろん、単に宿題を多く出したりすれば良いということではない。宿題や家庭学習の重要性を教員団が共通に理解し、また適切なフィードバックを児童生徒に返すという一連の実践により、効果を発揮する学習方法なのであろう。

(同調査P107より。太字は筆者)

ここでの、教員間で「家庭学習の共通理解」とは、教員間で何を宿題にさせるかということをシェアしておくということですね。小中同士での連携や、家庭との連携も重要であることが後の章で触れられています。また、宿題をチェックして、フィードバックをすることも重要。

 

宿題が学力向上に繋がる理由は生活習慣が身につくから?

ここからは私見です。

なぜ宿題が学力向上に有効かということについては、宿題をすることで勉強する(学習時間が増える)という要素もあるでしょうけれど、後半の章で書かれていることから考えるに、恐らく、宿題をすることで自ら学習する習慣が身につくということではないかなと思います。

それで、適度な宿題はいい循環を作るけれど、家庭でやりきれない、あまりにヘビーな宿題を課しちゃうと、終わらないし、辛い。親も宿題のケアもできないし、先生側もフィードバックが適切にできない。みんな苦労ばかりする割に、子どもには学習習慣が身に付かない。

学習時間が学力向上に繋がるのはこれは明白ですけど、調査を読む限り、この学習時間をどう構築するかが鍵みたいなんですよね。自主的に、計画を持って勉強している子どもの学力が高いということもあり、強制的に長時間苦役につかせるのではなく、親が一緒に見てあげたりして、本人が自主的に勉強するサイクルを構築できるかどうかがポイントみたい。

 

締め

ということで、宿題と学力向上の話でした。データ等もっと詳しく知りたい方は元の調査をご覧になってください。

この調査を読んだ後で、先日Yahoo!知恵袋で、子どもの頃から塾に行かせていたけれど全然成績が良くならないという相談が投稿されていたのを思い出しました。

私たちが間違っているという多くの意見に驚きました。「勉強は楽しくするべき、勉強のさせすぎ、息抜きも必要」と言っていますが、それは自分から勉強する優秀な子にだけ当てはまるのだと思います。息子のようなアホはこれだけやらせても勉強に興味を出さず、嫌々やっています。これは勉強を強要するしないで変わるものではないです。これ以上減らしたらさらに成績が下がります、それでも勉強を減らすべきだと言うのですか?

あまりに極端な話で、憂鬱だから釣りではないかという指摘がありました。文体等から、たぶん、釣りではないと思いますけどね。あって欲しくないから創作と認定できるなら世の中には悲劇はない。

こういう事例じゃないですけど、そもそも、勉強が苦手という子もいるし、学習プロセスが特殊な子もいますから、ただ、強制的に勉強させれば良いかというと、よくある結論ですが、子どもの個性を認識して対処しましょうということだとは思います。ただ、難しいことに、そっちのほうはそっちのほうで親の負担が大きい。親に相当の余裕がないと子どものそういうことに気付けない。

結局はできる範囲でやりましょうという話になり、ある程度は格差は固定されるんですよね。

 

なお、家庭学習についてはこちらの本を我が家では参考にしています。500円の文庫本ですけど、家庭学習について何も知見がないならかなり有効ですよ。塾に通わせる前に親が読んだら無駄なお金は使わなくなるはず。 

学力は家庭で伸びる―今すぐ親ができること41 (小学館文庫)

学力は家庭で伸びる―今すぐ親ができること41 (小学館文庫)

 

陰山さんはこの分野での第一人者ですよね。この本を読んで、子どもが小さいうちは勉強は食卓でするようにさせています。そういえば、自分も食卓で勉強していました。

 

予告

今回一部引用した調査には、まだまだ面白いところがあります。次は、『親の年収が350万円の子どもは3時間以上勉強しても、親の年収が920万円の無勉強の子どもに平均的には追いつけない』(仮題)という話を紹介しようかなと考えています。

後は、宿題以外の学力向上に有効な行為は何かとかですね。これは、周知の通り、読み聞かせや、ニュースを一緒に読んだりしたりするのが有効という話になります。陰山さんの本でも触れられているものです。

 

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