斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「なぜこんな人が政治家をやっているんだ」への一つの答え

昨日に引き続きTwitter上の話題です。こんな発言がまとめられていました。
「この情報の発信者は、私ではありません。」 - Togetterまとめ

 

内容は、東広島市議会議員である宮川誠子さん(53歳、女性)が、Twitterで不正確な情報を拡散しているアカウントのTweetについて、疑問なく受け止め、非公式RTで広められ、問題を指摘されても、自分が発言したものではないとしたというものです。

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この宮川さんの一連の行為は、ネットリテラシーや科学リテラシーがそれなりにある人からすれば、到底ありえないもので、はてなブックマークでも批判的に受け止められています。
はてなブックマーク - 「この情報の発信者は、私ではありません。」 - Togetterまとめ

中には、選挙で選ばれた政治家がこの程度でいいのか、政治家としての資質を疑うというコメントがありました。

 

この点につき、topisyuからすると、こう言うのは申し訳ないものの、地方の市議会議員であればこのぐらいのリテラシー水準だと思っています。もちろん、人によるわけですが、あまりご存じではない方向けに、地方選挙の候補者の現状といったものを簡単に紹介できればというのがこの記事の目的です。

※東広島市に縁のある方は気分を害す恐れがありますので、閲覧にはご注意下さい。

 

追記

この記事は内容面で粗がありますので、はてなブックマークコメントも合わせて読まれるのをお勧めします。

はてなブックマーク - 「なぜこんな人が政治家をやっているんだ」への一つの答え - 斗比主閲子の姑日記

 

緩い選挙区

宮川さんが市議会議員として選出された背景を理解するために、該当選挙区での市議会議員選挙の状況と、宮川さんのプロフィールを紹介します。

 

まず、宮川さんが当選した東広島市市議会議員選挙について。2011年の統一地方選挙で、宮川さんは、定数32、立候補者37で、27位で当選しています。
REAL POLITICS JAPAN : 選挙情報・分析 - 選挙データ : 広島県 東広島市

ここで分かる通り、東広島市の市議会議員選挙は、凄く当選しやすいです。当選倍率は1.15倍。高校受験や大学受験でこれぐらいの倍率の学校があれば楽勝と言われる水準です。

 

もちろん、市議会議員選挙に出馬するにはハードルとして、国会議員選挙と同じく供託金が必要となりますが、国会議員選挙の300万円という水準ではなく、東広島市の市議会議員選挙であれば供託金は30万円です。ボーナスぐらいのお金で出馬できる。

公職選挙法:選挙供託金制度

 

また、供託金が没収される投票数の水準は、有効得票総数÷議員定数÷10で計算されるため、東広島市であれば、138,929÷32÷10=434票となります。この没収される水準の候補者は、東広島市の落選した5人のうち、1人しか該当者がいません。他の候補者は全員クリアーしている。

 

はっきり言って、緩い選挙区です。

 

地元密着の、経験ある候補

それでは、当選した宮川さんの経歴を見てみます。

東広島市議会議員 宮川誠子

1978年        呉武田学園呉高等学校卒業

1981年~    18年間 安芸津町職員

1999年        安芸津町議会議員初当選、以後2期務める。

2007年4月 東広島市議会議員選挙 初当選

呉武田学園呉高校(現在の武田高校)を卒業後空白期間が3年あって、安芸津町の職員となっています。その後、1999年に安芸津町議会議員になり、2005年に安芸津町が市町村合併により東広島市となり、そのまま東広島市市議会議員選挙に立候補し、当選し、現職という流れです。

 

武田高校は東広島市にありますので、生まれてからずっと東広島市で生活してきた方です。高校卒業から職員として働く3年の空白期間は、あえて記載がないので、それほど知名度が高くない短大に通っていたか、無職だったのでしょうか。何にせよ、この経歴から、高度な科学教育やIT教育を受けてきた可能性は(申し訳ないですが)低そうです。

 

追記

以下の様なコメントを頂きました。

id:koinobori

これはちょっと気分を害す。議員のリテラシー、果たして倍率に比例するか、学歴に強く比例するか?あと武田学園呉高校は当時呉市にあった。安芸津から呉は電車1本。今の黒瀬だと安芸津からはむしろ通いにくい筈。

はてなブックマーク - koinoboriのブックマーク - 2014年1月10日

仰るとおり、武田学園呉高校は当時は呉市にありました。ご指摘ありがとうございます。修正しました。

 

候補者37名のうち、女性は4名です。宮川さん以外に当選した2名は公明党と共産党。保守層の女性であれば、(教育水準関係なく)東広島市育ちで政務に通じる宮川さんに投票するという選択肢は十分あるように思います。(ただし、宮川さんの容姿からは性的マイノリティである可能性もうかがうことができるため、保守層からこれがどう受け止められているかは分かりませんが。)

 

東広島市は例外か?

では、宮川さんを当選させる東広島市が例外かと言えば、そんなことはありません。

・諏訪市は定数15名に対し、候補者16名
REAL POLITICS JAPAN : 選挙情報・分析 - 選挙データ : 長野県 諏訪市

・稚内市は定数20名に対し、候補者22名
REAL POLITICS JAPAN : 選挙情報・分析 - 選挙データ : 北海道 稚内市

・相馬市は定数20名に対し、候補者24名
REAL POLITICS JAPAN : 選挙情報・分析 - 選挙データ : 福島県 相馬市

・宇和島市は定数16名に対し、候補者22名
REAL POLITICS JAPAN : 選挙情報・分析 - 選挙データ : 愛媛県 宇和島市

名前が知られている地方都市でもこのように当選率は1倍前半です。

 

同じく、Twitterで炎上した庭山由紀さんが当選していた桐生市は、意外に激戦で定数22名に対し、候補者35名です。庭山さんの当選順位は5番目。上位。
REAL POLITICS JAPAN : 選挙情報・分析 - 選挙データ : 群馬県 桐生市

 

もう少し都市部の横須賀市だと、定数41名に対し、候補者61名。桐生市と同じぐらいの倍率です。
REAL POLITICS JAPAN : 選挙情報・分析 - 選挙データ : 神奈川県 横須賀市

 

恐らく、市議会議員選挙は、倍率としては1.7倍ぐらいが最高で、平均は1.2~3倍ぐらいでしょうか。地元の市議会議員や区議会議員選挙にいつも行かれている方であれば、まあそんなものかと実感する数字だと思います。

 

候補者については、資質をどう判断するかは色々な基準があるのでこうとは申し上げられませんが、仮に学歴という観点で見れば、大学に行っていない人もそれなりにいます。旧帝大院卒の市議会議員なんてまず見かけません。求められるのは大学で学ぶ高度なリテラシーというより地元密着度と思われます。

 

「なぜこんな人が政治家をやっているんだ」

こういうことが分かると、なぜこんな人が政治家をやっているんだという疑問への回答が理解できるのではないでしょうか。こんな人だとあなたが思うその人が、その地域では有力候補だからです。

 

では、そんな、高度な教育を受けてきたわけでもなく、リテラシー水準は高くない人が、ネット上で不用意発言をしていたとして、どのように説得、理解してもらうのがいいでしょうか。

 

例えば、宮川さんの場合、Twitterでどれだけ叩かれても、東広島市の市民に届くことはあまりないでしょうから、Twitter上からそのアカウントを停止していなくなって終わってしまいそう。

 

仮に、専門家のアドバイスを受けさせようとしても、例えば東広島市の市議会議員の議員報酬は月額46万円で、期末手当があっても報酬総額は年間600万円~700万円程度で、そんなことにお金を使える余裕があるわけではありません。選挙での費用もかかる。
全国・全地域の議員報酬番付 - 都道府県・市区町村ランキング【日本・地域番付】

 

だから、そんな政治家を批判をするのは無駄だと申し上げたいのではありません。そういう状況を理解した上で、その人が一番言うことを聞きやすいやり方は他にあるのではないかということです。

 

政治家への意見の伝達方法(例)

例えば、以下のような方法でしょうか。

・公表しているアドレスに直接メールする。/手紙を送る。/電話する。
東広島市議会議員 宮川誠子

・役所に「議員がこんなことをしている」と問い合わせる。
議席番号7 宮川誠子 - 東広島市公式ホームページ

・所属会派、対立会派の議員に教えてあげる。
会派の構成 - 東広島市公式ホームページ
谷はるみ東広島市議会議員 (harumitani) on Twitter

 

どれも大した手間ではないので、Twitterで批判する以外に、一つの選択肢として検討に値すると思います。

 

 

本題は以上です。

 

 

 

余談

これは余談ですが、国会議員以外はIT選挙をするメリットはまだ乏しいと考えています。有権者がまず見ていないからです。(ネットを使う若い人は選挙に行かない。年寄はネットを見ていない)

ただ、ネットユーザーも高齢化していっていますから、将来的にはIT選挙は有効。ということで、現段階では、党や会派としては、議員がFacebookやTwitterの個人アカウントを取るのはしばらく推奨しないで、お勉強に充てた方がいいのではないでしょうか。政治家の炎上例は既にケースとして積み上がっていますし。

逆に、傷が浅いうちに炎上を体験しておくのもあるかもしれませんが、実名での炎上は後々まで記録が残ります。十分リテラシー教育を施してから使用してもらう方がいいのではないかと思う次第です。