最近よく読んでいる離婚Blogがあるのですが、直近、子供は大好きだけれど離婚したい、妻が不倫してくれないかということが綴られていました。恐らく、妻が不倫⇢妻有責で離婚⇢子供の親権は自分が持てる ということを考えているのではないかと推察しています。
ご本人はコメント欄も閉じていますので外野からの意見を聞きたい状況ではないと思いますのでリンクは貼りません。ただ、この方に限らず、相手が有責で離婚できれば子供の親権を必ず取れると考えている人は、離婚に不慣れな方にはかなりいらっしゃることは存じ上げています。そうではないよということを紹介したいと思います。
親権とは
親権と一言で言っても結構幅広いです。
親権と監護権 | 離婚と子どもについて | 弁護士が教える パーフェクト離婚ガイド
親権の中には,すでに述べたように「身上監護権(居所指定権,懲戒権,職業許可権等)」が含まれています。親権の中で,この身上監護権のみを取り出して,親が子どもを監護し教育する権利義務を「監護権」と呼んでいます。言い換えると,監護権とは,親権のうち子どもの近くにいて,子どもの世話や教育をする親の権利義務ということになります。
この親権の中の特に監護権が離婚時に争いになるわけですね。どちらが子供と一緒に暮らすか、教育をするか。
子の親権を決めなければ離婚できない
なぜ親権が離婚時に議論になるかというと、離婚をしたら子供の親権を夫婦どちらに移すか離婚届(通称『緑の紙』)に書かなければならないからです。
※法務省公開の離婚届記載例より
離婚をするにはこの離婚届が受理される必要があり、離婚届で親権欄が書かれていないと役所で受理されないんですよね。(両方に取らせてもいいと思いますが。)
それで、この親権については、どちらが取るか争いになることがあり、調停・裁判沙汰になるわけです。
親権を取りやすい方
親権を取れるかどうかについては調停・裁判では判断する基準があります。
親権者 | 静岡の弁護士|鷹匠法律事務所【静岡県弁護士会所属】
①母親優先(乳幼児について母の監護を優先させる)
②経済的能力・資産状況(養育費・生活費を確保できるかどうか)
③後の継続性(現実に子を養育監護しているものを優先する)
④子の意思の尊重(15歳以上の未成年の子についてはその意思を尊重する)
⑤兄弟姉妹関係の尊重(血のつながった兄弟姉妹を分離することは、子の人格形成に深刻な影響を及ぼすため)
これに限定されませんが、基本は子供の福祉を考えて判断されます。有責かどうかが直接結び付くわけではありません。以下のように、
浮気した妻が親権取れる?~有責者の親権者適格性~|法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表
<親権者(監護権者)指定の際に離婚原因,責任が考慮される場面>
1 子供の養育環境に影響を及ぼしている場合
2 他の事情では,父・母のどちらが親権者として適切か,甲乙付け難い場合
あくまで子供の養育環境に影響を与えるようであれば考慮されます。
なお、この判断はそう簡単なものでもないですし、どう説明するかもありますので、具体的には仲の良い弁護士に相談して下さい。
養育費の誤解
相手が有責での離婚について誤解があるのは、養育費についてもそうですね。
これを書くのは二度目なのですが、例えば、妻が有責で離婚して、仮に夫が子の親権を獲得します。この時に、妻は夫に子の養育費を払う義務があるか。
また、同じく妻が有責で離婚して、今度は妻が子の親権を獲得した時に、夫は妻に子の養育費を払う義務があるか。
答えは、どちらとも払う義務があります。もちろん、収入によって金額の多少はありますが、有責かどうか、親の性別に関係なく、親権がない方は親権がある方に養育費を払う義務があります。
これも子供の福祉の観点で見れば当然のことです。親の事情は子供に関係ない。有責配偶者に請求できる慰謝料とは違う。
締め
ということで、基本的には相手が不倫をしたから自動的に自分が親権を取れるというわけではなく、子供の福祉が調停・裁判では重要視されます。判断基準については、近年変わってきているところがあり、母親優先についても母性という意味ととらえたり、監護実績を作るための連れ去りについても議論がされてているところですから(アメリカ等海外から日本に連れ去るのは誘拐扱いです。よく日本人がやる。国際的な子の奪取の民事面に関する条約を日本は今年1月にようやく受諾したため、同じく4/1から日本でも効力が発生します。)、自分が親権を取れるかどうかは弁護士に事前に個別事情を伝えてよくよく相談しておき、入念な策を練るといいのではないかと思います。
専門家の具体的な回答をご覧になりたい方は弁護士ドットコムをご覧になることをお勧めします。こういうのに強そうな発言小町は裁判沙汰は原則掲載されないので参考にならないんですよね。