昨日、Twitterを見ていたら、はてなの姑ことid:kukkyさんが、元産経新聞記者で現在はフリージャーナリストの福島香織さんのtweetを紹介(RT)していました。
これを読んで、夫婦別姓反対派の人がこういう考え方だとしたら、夫婦別姓賛成派とでは確かにギャップは大きいと得心するところがありました。
以下、tweetに対して思ったことつらつらコメントいたします。かなりトメトメしいです。
※グラフは、選択的夫婦別姓に賛成52% 朝日新聞社世論調査:朝日新聞デジタルから。高齢になればなるほど賛成は減る
夫婦別姓について、結婚していない私にあれこれ言う資格はないとはいえ、やはり反対だな。別姓を認めれば婚姻契約の強さが、すごくアンフェアな気がする。例えば、ある財産を持つ男が急性した場合、新婚3か月の妻と、30年息子を育てた姑の権利を比べれば新婚の妻が強いんだよ。
— 福島香織 (@kaori0516kaori) 2015, 12月 17
最初のtweet。
ここでは、30年息子を育てた姑として、舅に触れていないことから、子どもは妻が育てるものであるという考え方がある可能性がうかがえます。また、財産を持つ男性が急逝したシチュエーションのみを考えていることから、女性が財産を持っているケースはあまり想定していないようです。
結婚していないからといってこの件について議論する資格がないとされていますが、そんなことはないと思います。それより違和感があるのは、ご自身が姑ではないのに以降のtweetで姑視点に立った議論をしているところです。いや、別にそれもしては駄目ではないんですけどね。結婚していないから何か言う資格がないというなら、姑でないのだから姑視点で何か言う資格がないと考えてもおかしくない気がします。福島さんは自分に厳しいのか甘いのかよく分かりません。
同じ姓の母親から見れば、一族(跡取り息子)の財産の3分の2を別姓の妻に持ってかれることになるとしたら、納得いかないんじゃないか。赤の他人がいきなり血縁者よりも強固な関係を結ぶ婚姻という契約の強さを考えると、姓を一緒にするぐらいは必要じゃないか。一緒のお墓にはいるんだし。
— 福島香織 (@kaori0516kaori) 2015, 12月 17
姓が一緒であれば姑は妻による夫の財産の相続について納得しやすいとしています。
そもそも、この例を挙げて、別姓婚について反対するのが適切でしょうか。仮に、お金持ちの男性がいて、その人の財産が欲しくて結婚しようとする女性がいて、舅姑が息子の財産に執着しているなら、舅姑は別姓婚とか同姓婚に関係なく、結婚を許さないですよね。かなり例外的なシチュエーションなので、このケースが世の中の別姓婚をしたい夫婦の代表例とは言えないでしょう。
そういう考え、時代遅れ、結婚は個人のもの、一族の墓なんて関係ない、という時代になったというなら、あの、ものすごい強固な婚姻契約ではなくて、事実婚を広めればいいんじゃないか。感情が冷えた時点で離婚成立なので、離婚の労力もなくなるし、シングルマザーやシングルファザーへの風当たりも減る
— 福島香織 (@kaori0516kaori) 2015, 12月 17
一族の墓という話を触れていることは、前のtweetでの"一緒のお墓にはいるんだし。"というのは、妻が夫及び夫の一族と同じ墓に入るということを前提にしていると考えられます。
ただ、妻が夫一族と同じ姓だからといって墓に入ることができるというルールはないんですよね。一般に永代使用権者が誰を墓に入れるか決めるものですから、夫の両親など墓を承継した人物が了承しなければ、妻は姓が一緒でも同じ墓には入れません。仮に、長男であっても、永代使用権者が墓に入れることを断れば、墓には入れません。
ここで、福島さんは話を変えて事実婚のメリットを紹介しています。夫婦別姓にしたいなら、事実婚をすればいいんじゃないのって。
その考え方はないわけじゃないと思うんですけど、先ほどのケースを紹介しておいて、この話に展開するとちょっと混乱します。何しろ、先ほどのお金持ちの人と結婚するという話のほうが、(息子の財産に固執する舅姑視点で見れば)事実婚向きなんですよね。
法律婚をすると夫婦財産契約を結ばない限り、妻が夫の、夫が妻の死後、財産を相続する権利を持ちますが、事実婚なら夫や妻の財産を配偶者は相続する権利を持ちません。姑視点で「別姓の妻が財産を相続するなんて許せない!」ということなら、こういうケースを想定する福島さんこそ他人事のように"(事実婚を)広めればいい"と言うのではなく、個人として事実婚をもっと推奨した方がいい。
ちなみに、事実婚では配偶者控除が認められないなど、まだ法律婚との差はあります。だから夫婦別姓だけど法律婚のメリットは享受したい人はいるんですよ。事実婚の推奨は完全な解決策にはなりません。
それと、事実婚が広まれば片親への風当たりが減るのはそういう面があるかもしれませんが、片親であるというだけで風当たりを強くするというのがそもそもおかしいと思いますけどね。
日本の家族観と、いまの同一姓の家族、そして同じ姓の一族の墓に入るという習俗は深い関係があると思う。日本は夫婦関係が血のつながりと同等の強さ、ときに血のつながりより強い。(夫婦別姓の中国は圧倒的に血のつながりの方が強い)。そういう家族観の形成は
— 福島香織 (@kaori0516kaori) 2015, 12月 17
長い歴史があるとは言えないが、やはり日本の同一姓家族制度の影響ではないだろうか。そういう家族観は古い、今の時代に合わない、というのなら、いずれ変っていくのだろうが、まだ夫婦別姓婚姻は時期尚早という気がする。そういう保守的な家族の形をいとおしく思う日本人はまだまだ多い。
— 福島香織 (@kaori0516kaori) 2015, 12月 17
たぶん、ここが大きな考え方の違いなんですよね。福島さんは恐らく夫婦別姓婚をする人がいれば、夫婦同姓婚の家庭が脅かされると信じている。
夫婦別姓婚は別にウィルスでもなく、侵略者でもないんですよね。夫婦別姓婚のほうがいいと思う人が夫婦別姓婚をするだけで、保守的な家族の形をいとおしいと思う人は(夫婦同性婚で本当に実現できるかどうかは別として)夫婦同性婚を継続するだけです。
この議論は永遠にされ続けています。考え方としては同性婚に近く、同性婚をOKにしたところで、異性婚が脅かされるなんてことはないわけです。同性婚のみOKというわけじゃないんだから。夫婦別姓についても同じで、同姓夫婦と別姓夫婦が並列するだけです。
ちなみに、私は結婚していないから、福島姓で、お墓は当然のように、福島家の墓に入れてもらうつもり。たぶん父がすでに入ってやがて母も入る。兄夫婦も入る。二男夫婦は分家として別のお墓つくるかも?。夫婦別姓の人は、どうするんかな、と本当に不思議に思う。お墓作んないのかな。散骨?
— 福島香織 (@kaori0516kaori) 2015, 12月 17
繰り返しですけど、墓は、一般論としては永代使用権が決めるから、姓が同じか違うかが条件じゃないんですよね。姓が同じでも断られることはある。また、夫婦別姓でも同じ墓に入れる方法はあります。
一応ここまででtweetの紹介は終わりです。
読んでいて、何か強烈な家族観をお持ちかなと思いました。子どもは女が育てるもので、姑は息子の財産に口出しするもので、片親は風当たりが強くて当然で、墓には同姓しか入れないなどなど。現状の同姓での法律婚にかなり幻想を抱いている気がします。姓を同じにするぐらいで姑が嫁に優しくなるなら、どれだけ楽か!
最後に国際結婚での夫婦別姓について。ご存知の人も多いと思いますけど、今の日本でも国際結婚なら夫婦別姓です。RT等から福島香織さんが懇意にされていると思われる坂之上洋子さんは、国際結婚されて夫婦別姓だそうですが、特に問題はなかったそうです。
家は国際結婚なので夫婦別姓暦長し。今まで何か問題あったこと? ないな。RT @akof: 親子で姓が異なるようなのは家族とは言えないとか公言してる人いるよねぇ。こういう現に親子で姓が異なる家族は、脳内では存在しないことになってるのじゃないかな?
— yoko sakanoue (@sakanoue) 2010, 2月 25
国際結婚をする日本人は、"保守的な家族の形をいとおしく思う日本人"からすると例外的な存在で視界には入ってこないんでしょうかね。