この記事を、
自分のウォッチ対象である、id:yz_sさんが紹介されていました。以前に、同じくウォッチ対象であるid:steinさんが、
痴漢に関するトピシュさんのエントリ読みたいです
— stein (@__stein) 2014, 11月 16
こんな依頼をされていましたので、この記事では、痴漢含む性犯罪に関する男女の認識のズレがある背景を書きつつ、ついでに、性犯罪に関わらず夫婦間に認識にズレがある上ですり合わせる方法について書いてみます。
一部統計を紹介したりしますが、あまり丁寧に議論を展開すると文字数が増えて何が何やらになるので、結構適当に自論を展開しています。そういうものが耐えられない人はそっ閉じ推奨です。
0. 依頼内容の整理と記事の目的
まずは、なぜこんな記事を書くのかを説明します。経緯をダラダラ書くだけなので、どうぞ気軽に飛ばしてください。
id:steinさんの依頼の流れは、
あと大抵の男性は、「ほとんどの女性(半数以上)が痴漢や通り魔に遭った事がある」という統計じたいを知らず、「レアケース」か「女が嘘をついてる」と思うらしいのですが、これは学校で教えるかメディアでもたびたび流して、被害が常態化してるということをまず周知してほしいと思っています。
— 金田淳子@『オトコのカラダはキモチいい』 (@kaneda_junko) 2014, 11月 12
元々はこの記事をsteinさんがRTされていて、それを自分がお気に入りしたことに端を発します。twitterでは他人がRTした記事についてお気に入りをすると、RTした人に通知されるという仕様があります。それで、topisyuがsteinさんのRTをお気に入りしたことにsteinさんが気付かれたわけですね。
痴漢に関するトピシュさんのエントリ読みたいです
— stein (@__stein) 2014, 11月 16
ってなんか人の被害談を聞きたがってるみたいだな……いやそうじゃなくて
— stein (@__stein) 2014, 11月 16
ということで、痴漢に関する被害談を聞きたいということではなく、やおい研究家の金田淳子さんが紹介されたような痴漢や性犯罪に関して世の中での受け止められ方についてtopisyuなりの見解を聞きたいと解釈していました。
今回、yz_sさんが紹介されていた記事で引用されていたtweetでは、男女間の性犯罪に関する認識の差がはっきりと出ていました。
それは、本当の話か、都市伝説じゃないのか、ネットの話を鵜呑みにするのか、そこばかり言及するんだわ。はぁ?子どもの安全には気を付けようという主張に重みを付ける為に話したけど、本当かウソかって、重要な事か?お前はなんでそこに引っかかるんだと。
— (仮)桃源のひげ (@charming_hige) 2014, 12月 3
ご丁寧に2chの過去ログ引っ張り出して、これ似たような話あったよデマだったよ、ソースはこれ、とかスマホ画面突きつけられたけど、ネットを鵜呑みするのは馬鹿って言ったのはお前な。
終いには「日本はダメだと言いたいんだね」とか、音を立てて膝からry
— (仮)桃源のひげ (@charming_hige) 2014, 12月 3
子どもらが性被害や虐待に会わないようどうするべきか、家族で知見を共有したいのだが…正直、旦那とは難しさを感じている。以前「気を付けようねの言葉掛けで充分だろ」で場外乱闘。NHKの性被害の特集で、「この人の体験談、誇張してるんじゃないの」で、うん駄目だね!戦争しかないね!で確信した
— (仮)桃源のひげ (@charming_hige) 2014, 12月 3
↓まったく同様のことを夫との間で経験した。
子どもが小さい時ショッピングセンターで買い物中、夫のほうを見たらいるはずの子どもがいなかったのでどうしたのか聞いたら少し離れたところにあるトイレに一人で行かせたと言う。
「子どもを一人で公共のトイレに行かせるのは危険だ」と言ったら(続
— mel (@leite_e_mel) 2014, 12月 4
→夫はどうしてだと言うので、「痴漢や変質者に狙われることがある」と言ったら、「そんな可能性まで考えるなんて神経質すぎる」と言われた。
いつもならすぐ口をつぐむ私だけど、ここで黙ってしまったらこれからも子どもの安全が守れないと思い「事件として報道されるのはごくごく一部で、(続
— mel (@leite_e_mel) 2014, 12月 4
→実際にはそういう目に遭ってる子どもはいっぱいいる」と言ったら、「それは考えすぎの妄想だろう、お前の考え方が異常だ」と。
「実際に私も被害に遭ったことがある」と言ったら「やっぱりか。自分がたまたま被害に遭ったからと言って、どうして他にもいっぱいあると言い切れるのか。(続
— mel (@leite_e_mel) 2014, 12月 4
→お前が被害に遭ったのは俺のせいじゃないだろう。個人的な被害を一般化するな」とキレられた
私は深く絶望したけれど、夫は私の被害の話をなぜ「俺のせいじゃない」とキレたのか。
私はそんなことは一言も言ってないし思ってもいない
夫の脳内では私が性犯罪への心配や恐怖を語ることがなぜか(続
— mel (@leite_e_mel) 2014, 12月 4
→自分を責められているというふうに結びついたらしい。
ツイッターでもいつも性犯罪被害のことを書くとなぜか「怒り」をぶつけてくる男性たちがいる。
「そんなに痴漢が多いわけがない」「自分はそんなことしないのに不愉快だ」「そうやって冤罪を作り出す」
どうやっても埋められない溝がある。
— mel (@leite_e_mel) 2014, 12月 4
これを受けて、元記事を書かれたpokonanさんが、
んー、ここまで性犯罪に対して認識にズレがあると、共同で子育てするのって、物凄い難しそうに思うんだけど、時間を巻き戻せるわけでもないし、この父親たちの認識が今後改まるとも思えないし、どうするんだろ…。
結婚するつもりなら、付き合ってる間に相手が性に対して、どういう認識でいるのかは確認しておかないと、子供できてからここまで相手と大きなズレが発覚したら、ちょっと取り返しつかないよなぁ。
こういうことを書かれていました。pokonanさんは結婚について結構な絶望を感じられているのだろうなと読み取りました。
金田淳子さんのtweetと元記事で引用されていたtweetの共通点は、性犯罪に関する男女の認識のズレです。ズレがあることを認識すること自体は意味がありますが、ズレがあるだけでそれが解決しようがないものだと思えば男女間の断絶にしかなりませんし、そんな結論ではコマッチャとしてはつまらないので、なぜズレがあるのかその背景と、そのズレの解決策まで書いてしまおうと思った次第です。壮大ですね!
ということで、ようやくここからが本題です。
1. 性犯罪に関する男女の認識のズレがある背景
大きく以下の二つと考えています。
- 性犯罪に関する体験の差
- 共感で受け止める女性とフェアに受け止める男性の差
一つ目は分かりやすいですね。男女では性犯罪に巻き込まれる体験に圧倒的な差があります。男性の被害者は強制わいせつ事件の認知件数で見ても全体の2~3%程度です。
警察庁の統計によると、昨年の全国の強制わいせつ事件の認知件数は7672件。このうち、209件は男性が被害者だった。過去10年間の統計でも、認知件数約9200~約6700件のうち、毎年、男性の被害者が約2~3%含まれている。
体験差がこれだけ違えば、性犯罪に関する構え方も変わってきて当然です(関係ないけど産経WESTの衝撃事件の核心はどれも面白い。)。
特に痴漢については認識のギャップが激しいですよね。さわやかなはてな女子を目指し続けているid:usausa1975さんが痴漢に関していくつか資料を紹介していますが(この記事は痴漢に関する資料の整理としてお勧めです。)、
その中の警察庁の『電車内の痴漢防止に係る研究会の報告書』(PDF)では、1年間に痴漢被害に遭った人は全体の13.7%です。コメント欄で指摘のあるとおり、たった1年間でこれだけの数字ですから、同じ女性が被害に遭うことはあるにせよ、女性が自分の人生の中で痴漢に遭う確率はかなり高い。
それで二つ目の理由は、こういった犯罪に対する男女の受け止め方の違いです。
先日書いたこの記事で、
趣味と最近読んでいる本が知りたい。ぜひ、ブログを書いて欲しいです。
と書いたら、モヤモヤを送っていただいた隆子さんから以下の本を紹介していただきました。
この本は、男女のスレ違いをいかに解消するかを脳科学と著者の経験からざっくり書くというなかなか大胆な内容で(詳細はこの記事の後半でまた紹介します。)、こんな記述がありました。
男性脳は、目の前の人の事情も頓着しないが、自分の事情もいっそう頓着しない。
理由は、高い空間認識力によって、「遠くのものほど」気になる修正があるからだ(空間認識力の高さについては、後述する)。
男性脳は、「私」に近いほど頓着せず、「公」に近いほど勘案する傾向にある。個人的な楽しみと義理なら、義理を重んじる。だから、彼女より友達、家族より仕事が大事なように見えるのだ。
(P131-132)
自分はこの話を、性犯罪に関する認識の差に繋がるなと思って読みました。
女性は共感を好むというのはもう誰でも知っていることで、相談しあったり、人に悩みを漏らしたりすることはよくありますよね。性犯罪の怖さを語るときは共感を求めている。
それに対して、男性は物事をメタ化して受け止めて、解決しようと思っちゃう。先ほど紹介したtweetがいい例で、
→お前が被害に遭ったのは俺のせいじゃないだろう。個人的な被害を一般化するな」とキレられた
私は深く絶望したけれど、夫は私の被害の話をなぜ「俺のせいじゃない」とキレたのか。
私はそんなことは一言も言ってないし思ってもいない
夫の脳内では私が性犯罪への心配や恐怖を語ることがなぜか(続
— mel (@leite_e_mel) 2014, 12月 4
ここで旦那さんは個人の被害を共感して欲しいというメッセージを受け止められず、自分がその被害について今解決策を求められている(攻められている)と脳内変換して、キレちゃったんじゃないかと思いました。悪意があったわけではない。
ということで、そもそも、性犯罪に関する体験の差がある上で、その性犯罪についても身近に受け止めるか、自分とは関係のないものとして受け止めるかで受け止め方も違えば、当然認識も変わってくるでしょうという話です。フィジカルも全然違う。
もちろん、こういうのは、全員が全員に当てはまる話ではありません。ただ、繰り返しですが、ズレがあるという認識で終わっても男女間の対立を生んで終わってしまうことがありがちじゃないですか。それはつまらいので、どうせなら背景を検討した上で、対処法まで考えたいなと思うわけです。
2. 認識のズレをいかにすり合わせるか
基本的に夫婦間では物事に対する認識のズレはあるという前提として、それをどうすり合わせるか、方法論を各家庭で整理しておくといいとtopisyuは考えています。
以下は、司法統計年報の2013年の性別別離婚申し立ての動機別割合ですが、離婚の一番の理由は性格の不一致が圧倒的です。
※データは、『性別離婚申し立ての動機別割合の推移(1975-2013)』(EXCEL)から。
申し立てでもしないと離婚できない状態というのは、どちらかが有責ではないとか、そうでもしないと離婚できない状態なので、レアケースといえばレアケースなんですけど、離婚の理由として、性格の不一致はそれなりに一般的ですよね。
つまり、これぐらい夫婦は性格が不一致になるということです。認識や価値観にズレがあって当たり前。しかも、それは結婚前ではなかなか気付かない。
この点については、以前も書きました。
時間が経っても分かることは実はそんなに多くは無くて、結局はイベントを経験しないと分からないことも多い。それでもベースとして信頼に足る人物かを確認するなら、結婚する前に、お互いに友達を紹介して周辺から情報取ったり、早めに相手の親にあって頭がおかしくないか話してみるぐらいやった方がいい。
時間が経って分からないことのほうが多いと考えれば、時間をかけるぐらいならとりあえず結婚してみるという発想も出てきますよね。離婚も簡単に済まないこともあるけど、子供がいないうちならまだ楽。
結婚前には読みきれないズレがあるという認識であれば、結婚相手に求めるのは、ズレの調整ができる人になります。
好きか嫌いかって、根本的な部分で許せない人であるならまだしも、その感情は、結構流動的なものです。20年も同じ好きな状態ではありません。例えば、一番長く付き合っている友人との関係を想像して頂いて、それが昔から何も変わらないということはないですよね?
結婚は長期的なものになるので、その観点では、ある程度条件が合うなら価値観のすり合わせができるかどうかを試します。まずは、①自分が相手の気持ちを思いやれるか、それに、②相手が応えてくれるかですね。
相互に尊重し合える相手ですね。
ただ、そういうすり合わせが最初から誰でもできるわけではありません。ズレがあるということを認識するところからスタートして、相手が望むコミュニケーションスタイルを習得する必要がある。これは結構大変です。
個人的お勧めはホワイトボードで整理することだったり、
家庭内でもPDCサイクルをまわすだったり、
こういうのなんですが、どういうことだか万人受けしません。
ということで、具体的かつ広範囲に使える異性とのコミュニケーションスタイルを紹介しているのが、本日2回目の紹介になるこの本となります。
男性と女性が違う脳を持っているという前提で、その脳の違いに基づき、男性・女性の取り扱いについて説明書があります。
注意書きにあるとおり、
ここから述べることは、比較的健康な女性脳が、特に抑制を強いられていない状態で、自然に示す傾向について語るものである。脳には当然個体差があり、ここに述べたすべてのことが、すべての女性脳に当てはまるわけではない。
したがって、「自分は違う」とか「うちの妻は違う」というようなことは、いったん置いておいて、「あー、あるある。そういう女性は多いね」というような全体目線で捉えていただきたい。
(P56)
ざっくりとしたものとして読んでみると、「あー、あるある」と言いたくなるものが揃っています。
女性脳の取扱説明書は以下の15項目からなります。
女性脳の取扱説明書
- とにかく、話を聞く
- とにかく、傍に置く
- 言ってくれればやったのに、は禁句
- 過去の浮気を告白してはいけない
- 過去を蒸し返されたら、優しくあやまる
- 女性がキレたら、理由を追求せず、ただ真摯にあやまる
- 答えようのない質問に善処する
- ことばの反復と、体験返し
- 結果よかったことについて、過去の失敗を指摘しない
- 過去をねぎらう
- ことばのダイヤモンドをあげる
- 過去をねぎらう(営業編)
- そろそろ、きみの○○が食べたい、と言える男子になる
- あなたのお薦めは?に即答する
- 職場の涙は、見て見ぬふりをする
色々ありますが、聞こうとしたり、答えようとしたり、認めようとしたり、そういう姿勢が大切ということでしょうか。
一方で、男性脳の取扱説明書は以下の13項目となります。
男性脳の取扱説明書
- 思いやりで、愛を測らない
- 不満があったら、素直に言ってみる
- 優先順位で、愛を測らない
- 提案は、フェアな複数候補の態にする
- 愚痴や指図で追い立てない
- 家事の全容を理解させる
- 結論から言う、数字を使う
- ものを取ってと頼むのは、必要最小限にする
- 秩序を、安易には乱さない
- 兄を立ててやる
- 夫を立てると、息子の成績が上がる法則
- 細かいゴール設定と、その確認を怠らない
- 死ぬまで、頼りにする
作業の全体像を伝え、分解し、優先順位をつけるということでしょうか。女性脳の方とは全然違いますね。
締め
違うということが価値の源泉ということがあります。ギャップがあるからこそ、違うものが生み出せるし、魅力的に見えるし、結婚によるポートフォリオの分散が発揮できる。
もちろん、ものによっては相手の無知が原因によるギャップもあります。そういうものについて無知さを単に指摘してもどうにもならないときがありますから、コミュニケーションの方法を色々取りながらすり合わせできればなと個人的には考えています。
yz_sさんがご自身の家庭内でのズレの共有についても書かれていまして、
俺がものすごく用意周到な人で、出掛ける1.5〜2.5時間前には起きなきゃいけないんだけども、家人はそこまでではない。と言うことは、部屋着でだらだらしてたとして急に出掛けることはできないのだけど、そこで「なんですぐ出られないんだよ」とキレる人だったら家族やれない。
— Y'z (@yz_s) 2014, 12月 7
もちろんそれだけ時間がかかる理由は化粧なんだけども、もう1つあって。エンジンあったまるのにすげえ時間かかるのよね。これは病気どうこうでなく性格・性質だと思うのだけど。仕度できた!よし出掛ける!ができないんである。だいたい30分くらいぼーっとしてる。
— Y'z (@yz_s) 2014, 12月 7
さっきの子供に対する性犯罪についての意識共有が夫婦間でうまく行かないって話読んで、「ああそりゃ家族やれないわ」ってなって書いてみたのだけど。
— Y'z (@yz_s) 2014, 12月 7
家人は「あ! あれ買っとくの忘れた!」系で、俺は「そうなる前に多過ぎるくらい買い溜める」派なのだけども、ここで「そんなに買ってどうするんだ」と言って来る人だったら(ry
— Y'z (@yz_s) 2014, 12月 7
非常に望ましい形だなとほっこりしていました。なお、yz_sさんは一人称を"俺"としていますが、女性です。
以上です。以下、本当に余談です。
余談
先ほど紹介した『キレる女 懲りない男』は、以前からお勧めしている『この人と結婚していいの?』と内容はかなり近いです。
ただ、『キレる女 懲りない男』の方が男性受けする内容だと思います。個人的経験談も多いし、若干胡散臭いところもありますが、石井さんよりスピリチュアル要素が少な目で、言葉遣いが理屈っぽい。
結婚前に相手がすり合わせができる人間かどうかのすり合わせについては、女性向けには『この人と結婚していいの?』を読んでくれるかどうかで、男性向けには『キレる女 懲りない男』をこれからはお勧めすることにします。