斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

PTA批判を繰り広げてきた朝日新聞が踏み込めないベルマーク運動

今年は個人的にPTAキャンペーンをしていまして、いくつか記事を書きました。

たまたま、朝日新聞もPTA改革に関して特集を組んでいたり、日経では川端裕人さんが、東洋経済オンラインでは大塚玲子さんがPTAに関して記事を投稿するなど、NHKもそうですし、今年はかなりPTAに関する議論がメディアで取り上げられているように思います。(紹介したお二人ともPTAに関する本を出されています。)

PTA カテゴリーの記事一覧 - 斗比主閲子の姑日記

朝日新聞デジタル:PTA改革に関するトピックス

川端裕人の「PTAは変われるか!?」(連載バックナンバー) | 日経DUAL

大塚 玲子 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

 

先日も、大塚玲子さんがベルマークについて取扱い、大変な話題になっていました。

この記事ではベルマーク運動がいかに非効率的なものであるかが語られており、次回はどうしてこのベルマーク運動が変わらないかについて書かれるそうです。自分は、ある程度答えは想像がつくのですが、ネタバレになるのは良くないので特に自分の想定回答は書きません。

 

自分の今回の記事では、ベルマーク運動に関するちょっとした補足として、AERAや新聞紙面も通じて現行のPTAに対する批判的な論調の朝日新聞が、PTAの活動の中でもかなり問題があると昔から言われているベルマーク運動について、あまり踏み込めない理由について簡単に書こうと思います。

 

ベルマーク運動の問題点

大塚玲子さんの記事で書かれている通り、ベルマーク運動の問題は、非効率的な慣習が多く残るPTA活動の中でも際立って非効率であるという点です。

問題は「要求される作業のハンパない煩雑さ」にあります。ここで、ベルマーク活動の「詳細な作業手順」を説明しておきましょう。

①PTA会員、またはベルマーク係(委員)が、各家庭で商品パッケージに印刷されたベルマークを切り取り、学校に持参。校内に設置された回収箱に入れていきます。(ここまではいいのです。子どもでもできます。問題はこの先です)。

②回収されたベルマークを係(委員)が手分けして、会社ごとに分類します。協賛企業は全部で約60社。ベルマークは1~2センチ四方の小さなものが多いですから、大変細かい作業となります。

③これをさらに、点数ごとに分類します。たとえばマヨネーズでおなじみのキューピーの場合、0.5~70点までさまざまな点数があります。ちなみにベルマークが付いた商品は、全社合計で約2000種あるそうです。

④次に、会社&点数ごとに分類されたベルマークを、数えやすいようキリのいい枚数でまとめていきます。よくあるのは切り取ったマークを一列に並べ、セロテープで台紙(裏紙など)に貼りつけるというやり方です。

⑤台紙に貼ったベルマークを「会社ごとの専用の袋」にまとめて入れ、財団に郵送します。このとき、各点数の枚数や合計点数を計算して、所定の記入欄に書き込みます。なお、この「会社ごとの専用の袋」は財団から取り寄せる必要があります(他社の袋を流用することは厳禁)。

記事でも書かれている通り、これらの作業を真面目にやっても、30人で半日で数千円分ぐらいにしかなりません。やりがいを搾取されているような状態です。

 

ベルマーク運動への参加数(追記)

どれくらい本腰を入れているかどうかは学校ごとで異なるでしょうが、

Q&A | ベルマーク教育助成財団

Q3.どんなPTA(学校)が参加できるの?

幼稚園・保育所(園)・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校(養護学校・盲学校・ろう学校)に加え、2006年から大学(短大・高等専門学校を含む)と公民館や生涯学習センターの学習団体・講座・学級などにも広がりました。
(参加数は約28,000校です。)

ということですから、日本のこれらの学校数が6万校弱であることを考えれば、50%程度の学校でベルマーク運動が行われているということになります。

 

朝日新聞でのPTA改革でのベルマークの扱い

今回、朝日新聞は数ヶ月に渡ってPTA改革の記事を紹介し続けてきたのですが、そのうち、ベルマークに触れているものは以下の記事だけです。

PTAに改善してほしい点、上位に挙がったのは…:朝日新聞デジタル

 前のPTAのときにあった活動がすべてなくなったわけではありません。本の読み聞かせやベルマークなど、保護者がやりたいものは続いていますが、PTAとは別の有志のグループが活動しています。

しかも、インタビュー形式で、ベルマークは保護者がやりたいものとして残ったというものです。

追記

昨年と今年AERAでは少し触れられていました。

PTA批判を繰り広げてきた朝日新聞が踏み込めないベルマーク運動 - 斗比主閲子の姑日記

AERAで少しだけ触れられてた http://dot.asahi.com/aera/2014052600151.html http://dot.asahi.com/aera/2015050100052.html

2015/07/04 08:02

ご指摘ありがとうございます。

 

ベルマーク運動は朝日新聞が主導

朝日新聞がベルマークに対して批判的に取り上げられないのは、特に隠された理由があるというわけではなく、ベルマーク運動の中心が朝日新聞だからということだと思います。

 

そもそも、ベルマーク運動はご存知の通り、朝日新聞が中心となって始めた事業です。

Q&A | ベルマーク教育助成財団

1960(昭和35)年10月24日に、文部科学省の認可を得て、朝日新聞社が中心となって「教育設備助成会」(現・ベルマーク教育助成財団)を設立、スタートしました。 へき地学校の先生方の訴えもあり、へき地と都会の学校がともに教材備品を整えるのがねらいでした。

現在は、ベルマーク教育助成財団という公益財団法人となっています。

 

ベルマークと朝日新聞の関係は今でも続いており、朝日新聞の販売店に行けばのぼりを見かけますし、

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※画像は、ベルマーク運動|検見川東部ASA(朝日新聞サービスアンカー)目黒新聞舗より

朝日新聞の紙面上で広告が出されていたりします。

朝日新聞にベルマーク広告 | ベルマーク教育助成財団

2月16日付の朝日新聞に、ベルマーク運動についての2ページ全面広告が全国通しで載りました。「ベルマークを集めて みんなでつなぐ笑顔の輪」を主見出しに、新聞中央面で見開き展開されています。

朝日新聞の全国紙での全面広告は通常数千万円かかるものです。

また、ベルマーク教育助成財団の役員・評議員において、朝日新聞関係者が3割ぐらいを占めています。

役員・評議員 | ベルマーク教育助成財団

こういう関係性の中で、朝日新聞がベルマーク運動に切り込むのにはやはり限界があるだろうなと思います。

 

上手く行っていなさそうなウェブベルマーク

今の時代に合わせたもう少し効率的な取り組みはないかという観点では、ウェブベルマークという、ネットショップで商品を購入するだけで還元される仕組みがあります。

これは、東日本大震災を受けて、ベルマーク教育助成財団、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、タグボート、朝日新聞社が一般社団法人ウェブベルマーク協会というものを設立し行っている活動です。

こちらのほうがどれだけシンプルかと思いますが、残念ながらあまり上手くはいっていないようです。恐らく協賛する商品が少ないのとアフィリエイトの還元率が低いのだと思います。ベルマーク教育助成財団に還元されている金額は年間10万円にも到達していません。

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※画像は、2014年度の事業報告書より。

ベルマーク教育助成財団としてはこの運動をこれまでのものとは別物としていますし、

ウェブベルマーク運動始まる | ベルマーク教育助成財団

もちろん、学校PTAを中心にした今のベルマーク活動に代わるものではまったくありません。これまで通り、マークを集めて自分の子供たちの学校の設備を改善し、それが自動的に教育環境に恵まれないほかの学校への支援につながるベルマーク運動に、一層のご協力をお願いします。

 半世紀以上にわたるベルマーク運動の幅広い学校支援に、被災校支援を目的にした新たな手段が加わるわけです。全国で初めての事業となります。5年間の運営を予定しています。

あまり本腰を入れて注力するということもないのかもしれません。大成功されても困るという考えでしょうか。

 

締め

ベルマーク運動それ自体は、募金活動に近しく、活動を通してボランティア精神を育むというのは意味があることだと思います。ただ、朝日新聞が批判している通り、PTA活動自体がほぼ強制参加なのが現状です。ベルマーク運動の主役がPTAとなれば、ベルマーク運動もボランティアで参加している状態とは言えません。また、学校機関の設備の充実という目的についても、そもそものPTA自体がその役割を担うべきではないとして、1960年代後半のPTA論争において否定されています。

僻地の学校への教育設備の提供という一見すると崇高な目的があるために、運動自体の非効率性や協賛企業の負担の大きさについてはなかなか批判されにくいところがあります。

朝日新聞にはその歴史とポジションから特に難しいとは思いますが、せっかくPTA改革の特集を組んでいるのですから、強制参加のPTA活動の上に存在している、ベルマーク運動についても、ぜひしっかりと取り上げていただきたいものです。

 

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