斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「安倍首相はお金もあるし、子どももいないから未来の景気なんてどうでもいい」

こんなブックマークコメントを見かけました。

麻生財務相「消費税 予定どおり10%に」 NHKニュース

すごく根本的に、この人たちは未来の景気なんてどうでも良いのよ。死ぬまで十分な金はもう持ってるし、安倍さんは子供とかもいないし。

2016/03/17 19:21

 

私は消費税増税を来年4月に行うのは得策ではないと考えている立場です。理由は何とでも言えますけど、別に経済の専門家でもないので、私の意見はあまり意味はないでしょう。数年前からクルーグマンとスティグリッツが主張しているので、そうなんだろうと思っているのは大きい。

本誌独占インタビュー ノーベル賞経済学者クルーグマン 「日本経済は消費税10%で完全に終わります」 | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

増税は「炭素税にすべきだった」 日本にスティグリッツ氏 - 共同通信 47NEWS

 

かつて、安倍首相は2014年にクルーグマンと会談したことで、2015年10月に消費税を10%に増税することを延期したという話がありました。

クルーグマン氏が決定的役割-安倍首相の増税延期の決断で - Bloomberg

 

今回、消費税増税に反対しているスティグリッツをわざわざ日本に招聘したのも、同様に来年4月に予定されている消費税の増税を延期することを想定してのものかと考えています。

 

一方で、IMFは日本の財政健全化のために消費税は増税すべきだというスタンスなのもご承知のとおりです。

IMF「日本は消費税を10%超に」 主要国に政策提言 :日本経済新聞

 

財務省はこういうこともあり消費税増税をするべきだというスタンスでしたし、財務大臣である麻生さんが予定通り来年4月に消費税増税を主張することには違和感はありません。

 

私が、そういう考え・ポジジョンであることをまずはお伝えします。

 

その上で、先ほど紹介した、

すごく根本的に、この人たちは未来の景気なんてどうでも良いのよ。死ぬまで十分な金はもう持ってるし、安倍さんは子供とかもいないし。

についてコメントします。

 

まず、個人が何をどう思おうと、それをどう表現しようと、脅迫等でなければ自由ですよね。だから、こういうことを書いてはいけないとは思っていません。現状の政治に不満があるからこそ出た発言だろうとも思う。

 

でも、これを言っちゃうのはかなり筋悪だと思います。特に、"安倍さんは子供とかもいないし"というところ。要するに、「子どもがいないこともあって安倍首相は未来の景気はどうでもいいと考えている」と言いたいということですよね。

 

筋悪だというのは、本人に子どもがいないことを理由に、だからダメだと言っちゃっても、本人としてはどうしようもないからです。この説明が分かりにくい人は、

  • 本人は『子どもがいない』から『未来の景気』はどうでもいい

というのの、『子どもがいない』の部分を本人がどうしようもないと思われるものに置き換えて、それに合わせて『未来の景気』の部分も修正してみると理解しやすいと思います。

  • 本人は『発達障害でない』から『発達障害の政策』はどうでもいい
  • 本人は『親がいない』から『介護政策』はどうでもいい

いかがでしょうか。理不尽ですよね。このやり方での批判がまっとうだとしちゃうと、そういう属性の人しかある政策には関与できないこと、それ以外の属性を持つ人の政治参加を排除することに繋がってしまいます。

 

だから、筋悪だと申し上げました。

 

ただ、綺麗事ではなくて実態として、自分が属したり、詳しいものに対して、人間が親近感を湧くというか、支援するというのはあるのはありますよね。だからこそ族議員と呼ばれる人もいるし、政治家や官僚へのロビー活動というのはどこの国でも行われます。

 

でも、批判する方法の一つとして子どもの有無を使うのは本当に筋悪だと思います。先ほどの話に加えて、特に今の日本だとヤバい。日本は生涯未婚率が高くなっていき、不妊治療をしている人も増加していますから、子どもを持たないではなく、持てない人がかなりいます。そういう人が見たらどう思うか。 

不妊治療 推移

※グラフは、「共同参画」2014年2月号 | 内閣府男女共同参画局より

 

そして、ご存じの方も多いように、安倍昭恵夫人はかつて不妊治療をしていたことも語っています。

In the interview with a monthly magazine, Mrs Abe said she had been under pressure to have children.

"Of course, as the wife of a politician, I was under enormous pressure, including from his constituency," she told Bungei Shunju.

"Now that it has become difficult because of my age, people have stopped telling me to keep trying. But in the very early stages, I did have fertility treatment."

BBC NEWS | Asia-Pacific | Japan PM's wife in rare interview

※ややこしいですけど、2006年の文芸春秋の記事をBBCが英訳したもの

 

今回この方のコメントを紹介したのはこの方個人にどうこう言いたいというより、ネットでちょっと検索しても同じようなことを主張している人をそれなりに見かけたのと、このコメントにたくさんのスターがついて人気コメントになっていたからです。

 

一般人から政治家に対してなら言ってもいいと思っている人がいらっしゃるのは分かるのですが、 政治家が政治家に対してこれを言っちゃうと炎上待ったなしですし、

相馬ヱミ子議員を戒告処分 「未婚の市長とは議論できない」大館市議会

女性都議への「早く結婚しろよ」「子供もいないのに」「産めないのか」ヤジは差別発言 - 斗比主閲子の姑日記

一般人が一般人に対して言ったら嫌われるか、避けられます。

 

仮に、個人の運営する組織にお金が入るように政治活動をしている人がいたなら、それは露骨な利益誘導だとして、贈収賄に限りなく近いと批判されてしかるべきでしょう。ただ、本人がどうしようもないことでもって、その人を否定するのは、たとえ相手が政治家であっても、好ましいものではないと自分は考えています。