Twitterのフォロワーさんが紹介されていた貫井徳郎さんの『崩れる』が大変良い小説でした。特に共通点があるというわけではないのですが、こちらもとても良かった田島列島さんの『子供はわかってあげない』という漫画と合わせて紹介します。
「夫のようにならないようにと手塩にかけて育てた息子がアニメーターになりたくて銀行を辞めると言っています」
というエピソードが読めるのが最初に紹介する貫井徳郎さんの『崩れる』になります。8篇の短篇からなっていまして、本のタイトルになっている『崩れる』は、一つ目のお話です。副題にある通り全て結婚が絡む話です。
8篇あるうちの自分のお気に入りは、『崩れる』『怯える』『誘われる』『腐れる』ですね。特に、『崩れる』が素晴らしくて、始まって数ページ目にある、この部分で、良い話だと確信しました。
光子はいつものように、毒にも薬にもならないことをぺらぺらとひとりで喋りまくった。そのほとんどは最近あった些細なことばかりで、いちいち目くじらを立てるほどのことでもないのだが、光子は必ず最後に「いやになっちゃう」と付け加えた。芳恵は最近、その「いやになっちゃう」が「いいでしょう、羨ましいでしょう」と聞こえるような気がしていた。なにしろ末っ子の高校生の男の子が、学校の進路指導で東大を受けろと言われたことまでが、「いやになっちゃう」なのだ。
『怯える』には執着心が異常に強い女性、『腐れる』には子供を欲しがらない夫を持つ妻、『誘われる』には猜疑心の強いママ友が登場します。どれも女性の描写が秀逸。
『崩れる』を読んでいて、桐野夏生さんの『OUT』に雰囲気が似ているように思ったら、自分が読んだ集英社文庫版ではその桐野夏生さんが女性の内面描写が素晴らしいと褒めていらっしゃいました。面白い。
また、フォロワーさんが書かれている通り、
なんでここまで女性の心理が書けるんですか、と問い詰めたくなる。
— Y'z (@yz_s) 2015年1月16日
とにかく後味が悪いのが好きなので、ぴっ...『崩れる 結婚にまつわる八つの風景 (角川文庫)』貫井 徳郎 ☆5 http://t.co/rYuxQpACdE #booklog
後味が悪いものが多く素晴らしいんですよね。後味の悪い感じの近さとしては、中山昌亮さんの不安の種と似ているかも。不安の種は、こちらで試し読みができます。さっぱりとした後味の悪さが良い。
「高校2年女子です。私は連れ子ですが、義理の父はとてもいい人です。今、実の父がどうなっているのかが気になっています」
これは『子供はわかってあげない』の方ですね。『崩れる』みたいに、大人の嫌な面が垂れ流される話も好きなんですが、この漫画のように、ちゃんとした大人がしっかりいて、子供をサポートする話も好きです。 こちらの本も、知人のお勧めでした。
上下巻に分かれていて、最初はお試しに上巻だけ読んだのですが、あまりに面白くて下巻にすぐ手を出してしまいました。 ストーリーとしては、高校2年生の水泳部の女の子と、同じ高校の書道部の男の子、そしてその男の子の兄(というか姉)の探偵の三人が中心となって進む青春ミステリーといったところでしょうか。一話が公開されているので雰囲気はこちらで分かると思います。
子供はわかってあげない / 田島列島 - モーニング公式サイト - モアイ
細かなネタが仕込まれていたり、登場人物の心理描写が可愛い絵柄なのにとても丁寧だったりで、妙な読み応えがあるんですよね。
人に読ませたくなるかというのが自分の中で良い作品であったかの基準としてあるんですが、同じフォルダにあるものとしてパッと思い浮かんだのはこうの史代さんの『夕凪の街 桜の国』です。たぶん、万人にお勧めできるというのが共通点。
レビューは以上です。以下は余談です。
余談
以前、こんなコメントを頂きました。id:manotchさん、ありがとうございます。
自分も雑誌はほとんど買っていないですね。一時、FEEL YOUNGを読んでいたぐらいです。
基本的にはTwitterやFBなど、自分の友好関係の中で信頼できる人物から紹介された作品を手当たり次第にチェックして、触りが楽しそうなら全部読んで、それで満足したら、その作者さんの本を過去に遡って読み、新作が出たら手を出すという読書行動をしています。
発言小町も面白いですけど、世の中面白い作品が溢れていてありがたいですよね。