斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

わたしは家庭内トラブルが好きだ

私は家庭内トラブルを読むのが大好きです。

 

これまで多くの家庭内トラブルは、家庭内で地産地消されるため、ほとんど世の中には出回っていませんでした。江戸時代の頃のマグロみたいなものでしょうか。それがインターネットが普及したことで、2ちゃんねるや発言小町や個人ブログを通じて家庭内トラブルが市場に流通するようになりました。インターネット、万歳ですね。

 

私は元々家庭内トラブルが大好きだったので、そういったインターネット上に投稿された個人の体験談を毎日毎日読み続けていました。ただ、そういう生活を9年ほど続けて、どこから物足りなさも感じるようになっていました。

 

インターネット経由で摂取できる多くの家庭内トラブルは、投稿者が感情的すぎて何が言いたいか分からなかったり、テンプレに従って報告しようとするあまりありきたりになってしまっていたりするなど、世界に一つだけしかない、一つ一つが違う持ち味がある家庭内トラブルの、美味しい部分が上手く調理できていなかったからです。

 

そういう思いから、もっと鮮度を!もっとdetailを!と求めているうちに「そうだ!口を開けていても入ってこないなら、自分から取りに行けばいいんだ!!」と気付き、このブログ上で読者からほっこりする家庭内トラブルのエピソードを直接送ってもらえばいいことに気付きました。

 

それが今このブログのコンテンツとして一部で人気の一人小町シリーズが誕生した背景となります。

例1:なぜ男性はスペック婚を我慢できるのか?なぜ私は私のデブス部分を我慢してくれるヒモとは結婚したくないのか?

例2:Q.幼稚園のママ友からのクレーム「おたくの息子さんがうちの子に暴力を振るっている」への対処は? ⇛ A.直接対話は避けましょう!

例3:「結婚したら奥さんの身体は夫のものなんだよ」「サービスしろ」「風俗は浮気じゃない」「北風ではなく太陽になってよ!」「はいとしか言うな」

 

送ってくれる読者としては、王様の耳はロバの耳というか、誰にも言えない話を誰かに言えて(ついでに、それらしい反応が返ってくる)、送ってもらう私としてはその話を美味しくいただけるということで、Win-Winの関係が成り立っています。

 

こうやって数多くの家庭内トラブルを見聞きしていていると、その家庭内トラブルの被害者ではなく、加害者が抱えている問題にも間接的に触れることがあります。

 

大きな声で怒鳴り散らす。自分の思い通りにならないと暴力を振るう……もちろん加害者が悪いのは確かですが、エピソードを送っていただいた方に色々と話を聞いているうちに、その加害者自身が、オーバーワークでストレスを抱えている、子どもの頃きょうだい児として親からプレッシャーを受けてきたなんていうことが分かることがよくあります。

 

最近の日本の漫画や小説では勧善懲悪的なものはそれほど多くはないですよね。悪者にも悪者の中での道理・理屈がある。暴力的に世界征服をしたいという行為自体は許されないものだとしても、世界征服をしようと思った背景は他人がまったく理解できないものでもない。

 

加害者がとにかく悪者で、その悪者を懲らしめられればいいという、いわば『DQN撃退でスッキリ』展開はインターネットでずっと人気のストーリーラインではありますが、分かりやすさはあるものの、同時にチープな印象を受けます。

 

多くの家庭内トラブルを見聞きしたことで、より複雑なものを、よりハイコンテキストなものをという願望が私自身にあるからこそ、家庭内トラブルの加害者自身の持つ問題にスポットライトを当てがちな観察者バイアスを、私が持っている可能性はあります。加害者が極悪非道の残虐な人間であるというカテゴライズは私の中での加害者像にはマッチしません。他のところでは普通にやれているけれど、ある一部の人にだけ悪意を向けるている加害者の方が多いと考えている。

 

なお、加害者にも抱えている問題があるのではないかというのは、だから情状酌量の余地があり、被害者は多少のことは我慢するべきだという話ではありません。加害者がどうしてそういう加害行為をしているか、その背景を想像することは、その加害者とどう相対するか検討する際に有効だったりもします。試験問題の傾向と対策みたいなものですね。試験の傾向が分からなければ対策しようがないですから。

 

 

 

話は変わりまして、最近、カドカワがカクヨムというネットサービスを始めました。インターネット上での小説投稿サービスですね。同じような類の『小説家になろう』からは数多くのプロの作家が誕生し、その一部はアニメ化などされています。そういう流れもあり、このカクヨムで投稿されている小説にも、ファンタジー小説が多い印象を受けます。

 

私はオンラインゲームを舞台にした話は大好きであるものの、玉石混合の中から面白いものを探し出そうというモチベーションはなく、このサービスにはあまり興味を持てないでいました。 

オーバーロード1 不死者の王

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※オーバーロード、面白い。

 

ただ、カクヨムでは、小説のタグ付けが可能になっていまして、ふとしたきっかけで、『嫁姑』というタグが目に入りました。

 

「まさか、嫁姑物がこのファンタジーだらけのカクヨムにあるわけがないよな、どうせ空キーワードなのだろう」とあまり期待しないでクリックすると、一つだけ小説がヒットするじゃないですか。

 

内容は、とある新興住宅街に住む既婚女性が語る物語のようです。

 

『嫁姑』の小説はまだ完結していないようで、この作者が投稿している他の小説はないかと見てみると、『インナーペアレント』というタイトルのものがあります。

 

インナーペアレント……この言葉の意味を知っている人はそれほど多くはないでしょう。日本語で言えば、内なる親です。実際の親ではなく、自分が考える、自分の頭の中の内なる親。子どものとき、絶対的だった親がいつのまにかそのままその人の心に巣食い、どうしても抵抗不可能なものに育ったのがインナーペアレント。

 

この小説のタイトルが『インナーペアレント』であるのは、この小説の登場人物たちがインナーペアレントの問題を抱えているからです。

 

小説は10話構成で、最初の1話目で、とあるDV加害者が心に問題を抱えていることが触れられます。それに基づいて、どうやってこの加害者と対処するのかが語られていく。話自体はよくある家庭内トラブルであるものの、隠れた事実が徐々に明らかになっていくのは、まるでサスペンスやミステリー小説を読んでいるような感覚になっていきます。

 

この流れで、何が言いたいかというと、

 

私が、

 

この小説が、

 

大好きだ!

 

ということです。

 

こういう話を読みたかった。

 

こういう話をなぜカクヨムに投稿しようとしたのか、その意図は分かりませんが、何にせよ、私が喜ぶために書いたとしか思えない、私好みの小説です。(私が見付ける前に『インナーペアレント』は完結していますし、作者の方とはこれまで接点はまったくありませんでしたから、当然、私が喜ぶために書かれたものではありません。)

 

Web小説がつまらないという人がいるのは知っていますし、私自身も積極的にWeb小説を嗜もうとは思っていませんでした。ただ、恐らくは普通の出版フローでは決して表に出ない、こういった作品があるのであれば、Web小説はなんて素晴らしいのだろうと今は思っています。

 

私が読者の家庭内トラブルエピソードをブログで紹介すると、他の読者から多くのエピソードを送っていただけます。

 

今回、この方の小説をブログで紹介した理由は同じ動機です。こういう話が大好きな人間がちゃんといることを伝えて、ご本人にこれからも作品を書いて欲しい、同じジャンルに参入する人が増えて欲しいという、そういう純粋な下心からです。

 

これぐらい書けばもう大丈夫ですよね?

 

私のブログの読者であれば、誰もが楽しめるはずです。ぜひ、読んでください!

なお、公式アプリを使うと快適に読めます。

カクヨムのスマートフォンアプリをリリースしました - カクヨムブログ

さらに、ユーザーIDを取得すると途中から読書を再開できたり、好きな作者さんをお気に入りに入れられたりと便利です。私も取った上で、レビューを書いています。

斗比主閲子「家庭内トラブルを愛するすべての人たちへ……」(インナーペアレント) - カクヨム

 

関連

おかざき真里さんの先日のtweetを読んで、良かった作品の感想は、できるだけ早く、大きな声で周りに伝えようと思い、今回この記事を書きました。

なお、自分がなぜこれほど家庭内トラブルが好きかについては以下の記事で説明しています。

家庭内トラブルは人を知る手段 - 斗比主閲子の姑日記