斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

『僕の心のヤバイやつ』は現実にはありえないと思うけど……好き

私は、少年チャンピオンのギャグ漫画、例えば『浦安鉄筋家族』とか『グラップラー刃牙』とか『鉄鍋のジャン』とかが好きで、『無敵看板娘』も好きだったので作者の佐渡川準さんが亡くなられたと聞いたときには大変残念に思いました。

桜井のりおさんの『みつどもえ』は、その『無敵看板娘』が連載終了した2006年のタイミングでスタートしたチャンピオンのギャグ漫画で、私は最初は三人姉妹を中心としたドタバタ感を楽しんでいたものの、女の子の絵柄が徐々に可愛くなり(体がもっちりして膝がツヤツヤになり)、「作者は可愛い女の子を描くのが凄く好きなんだろうな」と思いながら読んでいました。『みつどもえ』はアニメ化もされたのでご存知の人も多いはず。

みつどもえ 1 (少年チャンピオン・コミックス) →  みつどもえ 19 (少年チャンピオン・コミックス)

※1巻と同じ構図で描かれた最終19巻。同じキャラです。

そんな桜井のりおさんの最新作『僕の心のヤバイやつ』が2019年の『このマンガがすごい! オトコ編』で3位になっていたのを見かけて、1巻から読み始めました。

桜井のりおさんには珍しく男性主人公で、『みつどもえ』で根暗な三女ひとはっぽいキャラクターだったことから、「この男の子が、スクールカースト上位の女の子と物理的に距離が近付くのにドギマギする、すれ違いを描いた漫画かな」と思っていました。

僕の心のヤバイやつ 1 (少年チャンピオン・コミックス)

※主人公が右奥の市川で、市川にとってのヤバイやつ=好きなやつが手前の山田。

何しろ主人公の市川は学校で『殺人大百科』とか読んでカッターを持参しているような痛いキャラクターですから。一方的に好きになることはあっても好かれる姿(展開)が想像しにくかった。

僕の心のヤバイやつ 【最新3巻発売中!】 | 桜井のりお |試し読み・無料マンガサイトはマンガクロス

※最初の5話ぐらいは無料で読めます。

以前も書いたとおり私は子どもの頃にいじめられていて、父親から「いじめられるぐらいならカッターを持っていけ」と言われて素直に学校にカッターを持っていっていたことがありましたし、本当か嘘か分からない中国の拷問方法を描いた本を嗜んだりしていたので、余計に市川のようなキャラで恋愛マンガに展開するとは想像しにくかったというのは少なからずあります。

しかし、巻数が進むにつれて、徐々に徐々に恋愛要素が強まっていき、毎回読む度に、「もう付き合っちゃえよ……!」と思わされる、蛇の生殺し的なジワジワとしたイチャイチャを楽しむ漫画に変化していきました。

なぜ、なかなか二人の距離が縮まらないかというと、市川が自分に自信がないことで山田の好意を気付いていないフリをするからです。山田が自分への好意があると信じてしまうと、その信じた気持ちが裏切られて自分が傷付くのが怖く、自分から好意があることを表立って伝えられないわけですね。

そういう恋愛の寸止め的なところも好きっちゃ好きなんですが、私が最新刊の3巻まで読み続けている要因としては、山田に限らず女の子キャラが魅力的なのが大きいです。

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※画像は【インタビュー】『ロロッロ!』『僕の心のヤバイやつ』桜井のりお「私はずっと挑み続ける!(下ネタも)」|コミスペ!から。

山田の取り巻きとされている女子3人ですが、これが実にいいキャラをしている。山田は雑誌モデルをしていたり、女優業もしていたりとテレビに出ているのですが、学校で山田に群がってくる男どもをこの3人がガードする姿がとても良い。特に私は関根が好きです。雑に振る舞うギャルっぽく見えて、人の機微に通じているギャップが良い。

正直に言えば、『僕の心のヤバイやつ』は現実にはありえないと思って読んでいます。というのも、山田が大食いキャラだから。3巻でも学校の大盛りご飯をよそうように食堂の配膳担当に無言の圧力をかけている。あまり言いたくはないし、私個人としてはどうかと思っていますが、日本の高校生ぐらいの女性のモデルってみんな凄く痩せてますよね。山田みたいに大食いキャラはたぶんいないんじゃないかな。

だから、山田の大食い要素というのはリアリティの面ではちょっとどうかと思うものの、大食いキャラだからこその天然の可愛さがある。とにかく腹が膨れさえすれば幸せというキャラは愛らしい。我が家の子どもたちにももっと食べてほしい。

あとは、まともな大人がほとんど登場しないのも残念。ただこれは、ご本人曰く、

【インタビュー】『ロロッロ!』『僕の心のヤバイやつ』桜井のりお「私はずっと挑み続ける!(下ネタも)」|コミスペ!

──『みつどもえ』から続く、お父さん不審者ネタが鉄板ですごく笑えます。

桜井:私にとって、どういうのがカッコいい大人の男なのか分からないですし、興味もないんです。

とあるように、カッコいい大人(たぶん大人の男性だけではなく女性も)をどう描くかが分からないようなので、致し方ないと思っています。作者として描きたいものの優先順位が違うのでしょう。桜井のりおさんご本人は元陰キャの女子中高生で、陰キャの子がどう馴染んでいくかを描くのがテーマとされているみたいだから。

その辺のリアリティは目をつむっても、山田のおとぼけは可愛いし、周辺の女子も可愛いし、そして、主人公の市川もどんどん可愛くなっていって、もうみんな愛おしいキャラばかりの幸せな漫画になっていっているので、私も幸せな気持ちになりながら読んでいます。真の意味での嫌なキャラが登場しないだろうという安心感もある。

以上、桜井のりおさんの『僕の心のヤバイやつ』のレビューでした。展開の速さからして、たぶん、4巻か5巻で終わってしまうのは残念に思うぐらい、好きな作品です。

※3巻には『壁ドン』シーンがあるよ。Web媒体で連載されていて話題になっているのは知っているけど、私は単行本派です!