斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

既婚子持ちアラフォー労働者歴約20年年収約2000万円だが、10兆円貰って働くのを辞めて育児とゲームとPTAしてたい

※10兆円はジェフ・ベゾスやビル・ゲイツの個人資産ぐらいの水準です。ソフトバンクの孫さんだと2兆円くらい。ZOZOの前澤友作さんで2000億円ぐらい。

何を馬鹿なことを言ってるんだと思われそうですが、朝日新聞の18歳から29歳の女性のみが投稿できるエッセイ掲載サイトに掲載された次の文章を受けてのものです。

フェミニストでも、守られたい。フェミニストだから、守りたい | かがみよかがみ

周りの友人は大学4年間を終えたら就職して自立していくのに、私は一体どうなるんだろう。大学院に行きながらバイトをしている人は大勢いる。社会人として働きながら大学院に通ってる人もいる。それは重々承知なのですが、私は周りと足並みを揃えられないことが本当に怖いです。モラトリアムが長くなるほど、社会に出る一歩が重くなるだろうとも思っています。

現在、学部でフェミニズムを勉強しているが、周囲が就職して経済的に自立していく中で、大学院まで行くのは"モラトリアム"がさらに長引いて不安だし、アルバイトをしながら研究をするのも嫌だから、結婚して配偶者に経済的に支えてもらいながら研究を続けたいということを書いています。

タイトルに"フェミニスト"とあり、本文中にフェミニストなのに家父長制の保護に入りたい、それもフェミニズムでいいんじゃないかと書いてあったりするので、その方面で軽く小火っています。「それはフェミニストとしてどうなのか」「研究はモラトリアムではない」と。

そういう観点で読むのは別に否定はしませんが、私のように発言小町が大好きでたまらない人間にとっては、このエッセイは、フェミニストどうこうより、恐らく学部4年生で、ほぼ親のお金で生きてきた一人の人の、就職活動と大学院進学の狭間で揺れる素直な気持ちをつれづれなるままに書き出した文章として受け止めました。

私自身は既婚子持ちアラフォーで、アルバイトも含めれば約20年間は賃金労働者として働いていて現在の年収は2000万円ぐらいと、このエッセイを投稿している大学生の女性とは異なる状況ではありますが、この人の気持ちには共感するところはあります。

※設定です。

私も就職する前は物凄く不安でした。

予め、課長島耕作を通読して、「そうか、初芝電器のようなメーカーだと毎朝遅刻しないでラジオ体操に参加しないといけないのか」と戦々恐々としたものです。

アルバイトはそこそこ経験していたけれど、大学の授業にまともに出席しないで、出席した授業でもひたすらタイピング練習に時間を費やしていた自分が、誰かのために何かを提供し巨額の収入(毎月20万円ぐらいの給与)を貰うなんて姿は想像もできませんでした。霞を食べて生きていけるのであれば、そうしたかった。

しかし、周囲には研究者になれないドクターが死屍累々と転がっており、一方で、就職活動で外資系証券やコンサルのインターンシップや選考プロセスに進んでいる友人がいたりと、いよいよもって自分も"モラトリアム"を謳歌する限界を迎えていると思い、なんやかんやお祈りをされた挙げ句に、適当な志望動機と自己PRを創作して、何とか内定をゲットし働き始めたのでした。働いてみたら働いてみたらで、周囲の愚かさと自分の稼げなさに苦しみました。

今はほぼ苦労なく働いていて、そこそこの収入があります。それでも、天からお金が降ってきて仕事をしないで済むのであれば仕事は辞めたいし、ずっと育児とゲームをしてたいです。あと、PTA活動や自治会活動にもっと時間を費やしたい。寺子屋やりたい。

翻って。

6月初旬の今の時期は、まさに就職活動ど真ん中(から後半)ですし、コロナ危機により就職戦線は厳しくなっていますし、親の収入も減少しているしで、エッセイに投稿した方に限らず、また、フェミニストであろうとなかろうと、不安な気持ちになっている学生は非常に多くいるのではないかと思います。

本来であれば、お金の心配なく研究していたり、何のお祈りもなく志望動機を創作せずとも格好いい素敵な会社で働いていたりできればいいわけですが、実態としてはそんな状況になる人は極僅かしかいません。iPS細胞で著名な山中伸弥さんでさえも研究費用を工面するために東奔西走しています。実際、リアルに走っている。

一方で、バイトをしながら研究者をしたり、第一志望ではない企業で働いていたりする人が皆が皆、不幸のどん底で苦しみながら日々を過ごしているかといえばそうでもありません。残念ながら研究者の道は凄く細いですが、市井の研究者となっている人はいますし、フルタイムで働く人は日本国内に数千万人います。C2Cサービスを利用してノマド的に働いている人もいる。

多くの人がその人なりの不安を抱えながら生きていますし、社会は常に完璧なものではありません。誰かの幸せが維持されることを、不安のない暮らしを保証をすることは私にはできませんし、するつもりもありません。

ただ、この記事を書いた人のようなモヤモヤした気持ちを持っている人は、そのモヤモヤを言葉にすることはそれ自体がモヤモヤと付き合う上で有効なことだし、そういったモヤモヤした文章を読むのが好きな人間が世の中にはごまんといることはお伝えしておきます。

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※ごまん(5万)ほど少なくなかった。発言小町のユニークユーザー数は1000万人弱。発言小町の媒体情報より。