斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「夫の仕事の関係で都市部から田舎に引っ越しました。教育格差が言われる中、このまま田舎で子育てしていいのでしょうか」

家に引きこもりでみなさん辛いでしょうから、他のみなさんのほっこりエピソードでも共有できればと思いまして、

こんなTweetをしましたら、早速いただけました。第六弾です。

f:id:topisyu:20180701221015p:plain

読者からのほっこりエピソード

斗比主閲子様

閲子さんはじめまして。30代後半会社員です。

毎日のブログを楽しみに拝見しています。悩んでいることがありメール差し上げました。

結婚を期に、都内から、夫が働く田舎に引っ越し&転職をしました。3年前に子供が生まれ、夫婦ともに親戚がいない土地で子育てをしています。

最近、我が子の将来を考えた時に、進学先に選べる学校の少なさや、文化施設の少なさがとても気になっています。塾や習い事も、現状では難しいと思います。また田舎ゆえに給与水準も低いです。

このような記事、

「生まれた環境」による学力差を縮小できない〈教育格差社会〉日本(松岡 亮二) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)

を拝読することも多く、育つ環境の大切さを痛感します。私自身も首都圏で生まれ育って、本当に良かったなと思います。

そのような思いもあり、子供の教育環境のため都内or都内近郊に引っ越したいと考えております。問題は、私の希望を夫に理解してもらえないことです。今の職が性に合っているのか、引っ越しや転職にいい顔をしません。

夫は30歳なので、これから転職も可能だと思います。私も異動や再び転職することは厭いません。

我が子のためにも引っ越しをし、新しい環境で子育てしたいという希望を、どのようすれば夫に理解してもらえるでしょうか。

(もしかして、このまま田舎にいても問題ないのでしょうか?)

もやもやと悩んでしまっているので、ご意見いただければ嬉しいです。

一読者より

斗比主閲子からのコメント

はじめましてー!

紹介された記事は松岡亮二さんが著書の『教育格差─階層・地域・学歴』から抜粋して記事にしているものですね。私のブログでも昨年12月に紹介しました。

我が家は、子どもの認知力・社会性の発達を狙った「意図的養育」をしていたのか - 斗比主閲子の姑日記

とても良い本なので全国民が読むべきです。私はべき論言うことは基本的にないし、べき論を言う人とは距離を取りますが、この本はmust buyです。難しいし、著者の若さが迸っているのがちょっとウッとなりますが、日本の教育格差を一般人向けに説明した、現時点での集大成みたいな本です。

教育格差 ──階層・地域・学歴 (ちくま新書)

教育格差 ──階層・地域・学歴 (ちくま新書)

  • 作者:松岡亮二
  • 発売日: 2019/07/26
  • メディア: Kindle版
 

それでお悩みの内容は、大きく分けて2つですね。

  1. 住んでいる地域が子どもの養育環境にとって好ましくない
  2. 地方から都市部に引っ越したいがパートナー(夫)が賛同してくれない

1つ目については、松岡さんの論文の中でも三大都市圏と非三大都市圏で大卒割合が大きく差が出ていることは確認されています。

f:id:topisyu:20200416021043p:plain

教育格差の趨勢―出身地域・出身階層と最終学歴の関連― より

詳しくはこの論文を読んでもらうといいですが、差が出ているのは、大学がそもそもあるかどうかと、周りが大学に行こうとするかといったことが影響があるとか書いています。私も流し読みなのでざっくりですが。

後は、親が大卒かとか、親が子どもに勉強を求めるかどうかで、子どもが大卒になるかどうかも差が出るというのは他の本で読んだ記憶があります。

というわけで、この読者さん夫婦が大卒で、子どもに学歴を身に付けさせたく、通いやすいところに大学があるか、または都市部に進学する経済的余裕があるか、県内のそこそこの進学校に入れるかといったところを点検して、それぞれが埋まっていなければ進学を考えると都市部に住んだほうがいいかもしれない。

気をつけたいのは、あくまで傾向であるため、確かに大きな差があるように見えて、三大都市圏以外でも進学をしている子どもは確実にいるということです。地方に住んでいるからといって自分の子どもが必ず進学しないというわけではない。

まあ、ただ、この話は、1つ目がポイントというより、2つ目のパートナーが賛同してくれないが根本的な問題だと思いますけどね。

というのも、たぶんなんですが、この読者さんは子どもの進学についてパートナーさんと話ができていないんじゃないでしょうか。子どもの進学をどうするか夫婦間で議論がされていたら、松岡さんの記事を読んで都市部に引っ越したほうがいいかとモヤモヤしないはず。仮にモヤモヤしても夫婦で話して落ち着けているはず。私なんかにメールしていないはず。

パートナーさんが転職・引っ越しをする必要があるかはとりあえず置いておいて、子どもをどういう環境で育てたいかがまずは夫婦で話されているといいですね。

あとは、この読者さんとしても、

今の職が性に合っているのか、引っ越しや転職にいい顔をしません。

本人がどうしていい顔をしないのか、背景もじっくり話しておきたい。性に合っているぐらいの推測じゃなくて。

引っ越しや転職をしなくても、例えば他のやり方としては、この読者さんが東京都出身ということもあり、都内に実家か親戚の家があるのであれば、親はそのまま地方にいて、子どもだけ高校ぐらいから東京に住まわせて進学させることもできます。

拙速に転職&引っ越しではなく、他の選択肢があるかや、そもそも子どもをどういう環境で育てたいかを夫婦でじっくり会話をするというのが、最終的には良い結果に繋がると思います。

ちなみに蛇足になりますが、これから2~3年は確実に不景気になります。不景気下での転職は好景気下での転職に比べ、かなり不利です。IT系のエンジニアみたいに今でも求人が耐えない職種ならまだしも、そうでないなら、私はしばらくは転職をお勧めしません。というか、今はまずどこも面接さえしていないはず。

子育てに不安になるかもしれませんが、今はお子さんが3歳ということですから、絵本の読み聞かせを毎日行い、親以外の大人や同世代の子どもと接する機会を増やし、自然にじっくり接する機会を提供できていれば、相当効きます。私が言っているんじゃなく、新井紀子さんがそう書いてる。

AIに負けない子どもを育てる

AIに負けない子どもを育てる

  • 作者:新井 紀子
  • 発売日: 2019/09/06
  • メディア: Kindle版
 

※p.280-294に育児法が大変謙虚に書かれている。

今回は以上です。

これを読まれたみなさんも、どうぞetsuko.topisyu@gmail.comまで、ブログにそのまま掲載してもよい、ほっこりエピソードをご気軽に送ってください。私が一言コメントを付けてブログに掲載します。

なお、投稿にフェイクを入れるのは確認で時間がかかるので、ご自身でするか、私に全面的にお任せする形でお願いします。また、どんな方向でコメントをしてほしいかも書いてくれたら、期待に応えるようにします。罵ってほしい、褒め称えてほしい、傾聴してほしい、何でもOKです。