斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

我が家の子どもたち全員が公文式(算数・国語)を毎日30分最低3年間(≒500時間)続けられた方法

我が家の子どもたちが全員とうとう学習習慣を身に付けたようです。親が言わずとも毎日何か勉強をしていますし、本を自ら読み散らかしますし、好奇心を持って調べ物をしています。

親業を子どもの自立を支援するものと定義したとき、子どもたちが学習習慣を身に付けたことは、私にとっては親業の1/3~1/4が完了したぐらいの気持ちです。大変感慨深い。もう親を止めてもほぼ何とかなるのではないか。

子どもが学習習慣を身に付けていただくために行ってきたこととしては、

  • 幼児期の読み聞かせ
  • 漫画・攻略本など興味があるジャンルの活字媒体の適切なタイミングでの提供
  • 日々のニュースを題材にした雑談
  • スマホやパソコンや図書館を利用した調べ物
  • 親が学習しているのを見せる

などが効いただろうと推測します。とにかくたくさん色んなことを意識的に無意識的に行ってきているので、どれがどう効いたかはよく分かりません。子どもたちはそれぞれ性格も学習能力も異なるものの、結果として学習習慣を全員が身に付けたということは、親の遺伝に加えて、後天的な訓練が作用したように思います。もちろん、言わずもがなですが、n=1の領域を出ません。

その中で、かなり効いたと親が感じているのは、公文式を毎日続けてきたことです。このブログでは以前から紹介している通り、我が家の子どもたちは全員が算数と国語の公文式をしています。

この記事では、公文式とはなんぞやから始まり、公文式をどう続けてきたのか、公文式で得られたものなどを惜しみなく提供します。

公文式が嫌いな人や、公文公に一家言ある人向けではないのでそっ閉じ推奨です。

ざっくりとした公文式の紹介

公文式はざっくりいうとこんな習い事です。

  1. 月謝制の習い事。一教科7000-8000円ぐらい
  2. 一教科につき週に2回最寄りの教室に通う。教室では時給1000円ちょっとぐらいの先生の目の前で一教科につき5枚~10枚のプリントの問題を解く。雰囲気はちょっとした寺子屋。わちゃわちゃしてる
  3. 5枚~10枚×2~3日分のプリントを持ち帰り、自宅で毎日解く
  4. 自宅で解いた問題を2のタイミングで持っていって添削してもらい、間違ったところをひーこら言いながら解く
  5. 2~4を繰り返し、単元をじわじわ進め、区切りがいいところでテストを受けて、無事回答数と時間が規定内であれば次の単元に進む

こんな感じです。

科目は算数・国語・英語(+他の言語)があり、利用者は算数>国語>英語の順です。公文といえば算数というイメージがあるのではないでしょうか。

算数で勉強する内容はこれで、

算数・数学: 教材内容一覧表 | 公文教育研究会

国語で勉強する内容はこれです。

国語: 教材内容一覧表 | 公文教育研究会

間違いが少なく、多く、早く解ける子どもは次々と先の教材に進むため、未就学児なのに漢文読んだり、微積分をやる子どもがたまに登場します。

公文式が続かないのは地味かつ親のサポートが必要で意外に高い

昔からありますし、公文式を経験して有名大学に入ったというエピソードがたくさん流布されていることから、

※代表例

公文式は有名だと思います。子どもを通わせた、自分が通ったという人はかなりいるはず。私の子どもたちについて一学年10万人ちょっといますから、公文が公式で言っている通り国内150万人の現役会員というのも大体そんな感じでしょう。

ただ、公文式を長く続けられるかというとそんなことはなく、かなりの人数(1~2割ぐらい?)は脱落している印象があります。あくまで観測範囲での話ですが。

というのも、公文はひたすら毎日プリントを5枚~10枚ぐらい解き続けるだけで、プリントも無味乾燥な白黒で、教室でも基本的には指導はありません。プリントは「一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩下がる」式の繰り返し学習となるため、大変単調です。

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※画像は公文式の算数・数学学習 | 公文教育研究会から。最初だけカラフル。プリントの左上の番号で進度がすぐに分かる仕様は素晴らしい

この単調なプリントは、教室では周りで勉強している子どもがいるからまだましで、家庭では親子しかいませんから子どものやる気は極端に落ちます。しかし、公文式では家庭学習は必須です。プリントを自宅でやってお直しを公文でしてもらうところまでが公文式なので。

だから、公文の先生は親に対して「おうちではたくさん褒めてあげてくださいね!」と伝えたりするのですが、そんなに上手く褒められるわけでもなく、子どもも辛いし、親もガミガミ言うのがしんどくなって、「こんなものに一教科月謝7千円以上も払うのか……」とはたと気づいて退会していきます。

我が家が公文式を始めた理由

我が家が子どもたちに公文式を始めてもらったのは、子どもたちに東大や旧帝大に入ってほしい……などということはまったくありません。

最初は勉強系の習い事に通わせるつもりはなく、家庭学習でいいやと思っていました。ただ、親が毎日教材を準備していたもののそれが大変になって、アウトソーシングしたいと思って何かないかと探していたわけです。

勉強系の習い事で、比較的体系立っていて、進度が子どもごとに調整できて(みんなが毎月同じ学習するものではなくて)、費用がそこそこで、拘束時間が短くて、完全に家庭学習オンリーではないもので、家から通いやすいという理由で公文式を選びました。未就学児からはじめて中高生までの範囲をシームレスに学べる勉強系の習い事ってそう多くはなく、消去法的に公文式となったわけです。今ならデジタル系も選択肢に入るかもしれない。

ちなみに、親は二人とも公文未経験者です。私は周知の事実として旧帝大卒ですが、大学時代の友人に子どものときに公文を経験していたのは自称で2人で、子育てをし始めるまで公文式のことは「何かつまらなそう」ぐらいの認識でした。

算数と国語の二科目にしたのは、算数は公文で一番有名っぽかったからで、国語は算数だけだと最初の頃は分量が少なすぎて一瞬で終わってたからです。子どもたちも嫌がってないので二科目にしちゃったのでした。

あとになって、国語をやってもらったのは算数以上に価値があったなと思いました。後述します。

我が家で公文式を続けられた方法

そんな意識の低い我が家で、ハードルが高い公文式を子ども一人につき最低3年間どうして続けられたかというと、習慣づけを意識したことと、子どものハードルを公式以上にスモールステップ化したことと、公文をやるインセンティブを子どもに合わせて設計したことが考えられます。

習慣づけというのは公文の自宅学習をする時間を毎朝30分と決めていました。翌日には原則的に繰り越しません。

スモールステップ化というのは、子どもが解くのに苦しんでいるときは前の単元にすぐに戻してもらっていました。難しい問題をうんうんうなって、公文1教科に1時間もかけるというのは効果は乏しいし辛いし、勉強の爽快感がないので。あとは隙間で1枚だけやるのもOKにしました。習慣は小さな一歩から始まる。

小さな習慣

小さな習慣

 

※ダイエットが続かない、英語の勉強が続かないと悩む人へ

インセンティブとしては、短期・中期・長期のご褒美を提供しました。

問題始めるときや区切りがいいときに乾物(スルメ、干しぶどう、ナッツ)を口に放り込んであげていました。また、素早く正確に解けているときには「いいね!」などと声がけしていました。好きな音楽をかけました。手が動かないときは問題文を一緒に読みました。そして、公文が終われば必ずゲームができるようにし、公文の進度が進めばご褒美に好きな漫画・本を買っていいことにしていました。

ムチは極力少なめで、基本アメです。虫歯にならない限り、アメはたくさん提供しました。最初はアメはじゃぶじゃぶでしたが、子どもたちに学習習慣が身に付くにつれ徐々に減らしていきました。

言葉にすれば数行ですが、子どもにプレッシャーがかからず気分が悪くならずに楽しく勉強できるように、親としてはかなりの苦心・苦労はしました。

こうしてすったもんだの末に子どもたち全員が公文式の国語と算数を最低3年間続けられ、気付いたら朝に勝手にプリントをやるようになっていました。まったく習慣化というのは凄いものです。

公文式で得られたものは①学習習慣、②算数での確実な計算力、③国語での文章読解力

公文を「やっててよかった!」と思ったのはすでに書いたように、毎日自分たちで公文の勉強をするようになったことです。毎日自ら勉強するなんてヤバい。

私は子どもの頃に勉強は好きだったけど毎日やるなんてことはなく、宿題はしないわ遅刻はするわ授業はぶっちするわで健康優良不良少年でしたから、うちの子どもたちは私には凄い生き物に見えます。

これだけでもう十分なんだけど、学習習慣は他の家庭学習でも身に付けられるわけで、他に「公文ならでは!」を挙げるとすると、算数での確実な計算力でしょうか。

公文の算数は暗算を素早く間違えないようにできるように徹底するんですね。幼少期に子どもが苦しむ桁(けた)の概念を徹底的に植え付けるから、計算ミスをしにくくなります。これは生きていく上ではかなり重要。頭の中で、為替とか利益率とか計算できるのは仕事で相当使える。

あとは国語では文章読解力を着実に獲得している気がします。

AIに負けない子どもを育てる

AIに負けない子どもを育てる

  • 作者:紀子, 新井
  • 発売日: 2019/09/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

この本で新井紀子さんが「意味がわかって読める」ためとして書いている教育のあり方のうち、小学校低学年でのマスの中におさまるように丁寧に字を書くこと、主語と動詞と目的語を使った短い分で説明すること、語彙を増やすこと、板書を写すこと、論理だけで答えを導くことなどが、公文式の国語をやっていると経験できます。

ただ、いいことばかりではなく、算数では図形・文章題が一切登場しませんし、国語の文章読解は基本的に穴埋めです。なので、小学校低学年までの学習の基礎トレという位置付けとしたほうが安全だと私は考えています。

締め

以上、公文式の紹介でした。

最後に、公文式へのよくある批判とその批判の私の解釈をちらっと書きます。

まず、公文式はスピード重視で字が汚くなりミスが増えるのではないかというもの。これは半分正しいです。字を綺麗に書きすぎると時間がかかりすぎる。ただ、ミスは少なくないと次の単元には進めないので、ミスも普通は減るはず。あと、漢字の止めはねチェックぐらいは添削されます。

次に、公文式では応用力が身につかないというもの。これはそうでしょう。公文は基本的に超スモールステップで、自主学習でもできるようにプリントは設計されていて、解き方がよく分からない問題はありません。図形も文章題もありませんしね。あくまで自重筋トレ+αという位置づけぐらいで考えたほうがいい。プロのトレーナーがいる高級フィットネスクラブではありません。

そして、先取り学習をさせようとするのは子どもに無理があるというもの。これは親が無駄にプレッシャーをかけない限りは問題ないでしょう。そもそも公文はスモールステップなので、発達に合わなければ戻るだけでいい。「先に先に」と進めるのは親のエゴです。

こんなところでしょうか。

ぶっちゃけたことをたくさん書いていることで分かる通り、私は公文式を子どもが絶対にやるべきなんてとてもじゃないですが思っていません。東大に入るために必須とか言われた日には噴飯ものです。我が家の子どもたちに毎日の学習習慣を身に付けてもらうアウトソーシング先としてお手頃だったから公文式を選んだまでです。

ただ、公文式は必要以上に過大評価されているし、必要以上に強烈な批判がされていることがあるように見えるので、旧帝大卒の世帯年収2千万円の、どこにでもいる一親としての忌憚のない公文観を書いてみた次第です。

あ、書き忘れてましたが始めるタイミングについては、早ければ3歳から、ボリュームゾーンは6歳前後ですね。「小4で2学年先まで終わっているのが必須!」とのたまう親がいるのは知っていますが、中学受験をするのであればそれは有利であるものの、そうでなければ、またそうであっても、公文を2~3年続けて自宅学習を毎日する習慣を身に付けるというのは意義があると考えています。

思いついたことは書きましたが、他に何かご質問があればご気軽にetsuko.topisyu@gmail.comまでメールしてもらうか、コメントしてください。

ではでは!