BuzFeedのこの記事を見て、
その本は、長く出版禁止だった。語られなかった〈女たちの戦争〉を今マンガで届ける理由――『戦争は女の顔をしていない』インタビュー
『戦争は女の顔をしていない』(コミック版)を読んでみました。第二次世界大戦中に戦争に従軍したソ連の女性へのインタビューを行った同名小説のコミカライズ版です。
※表紙で描かれている人は全員女性
BuzFeedで紹介されているエピソードの中での洗濯部隊がどんなだったかを読みたくて手に取ったため(私は戦争そのものより周辺のエピソードが好き)、読んでみたら斥候や狙撃兵など前線で戦う女性兵士の話もあって思っていたのと少し違いました。
そもそも、私は第二次世界大戦のソ連で女性が兵士として従軍していたことを知らなかったんですよね。作中では従軍を経験した女性が過去を思い出しながら語るのだけれど、体力や生理や服のことなど女性の切り口で語られる戦争がとても興味深い。前線は前線だけど、生理用品がなく着替えも少ないから男性用のパンツを工夫して履いていたとか凄く生活臭がする。こういうの大好きです。たとえとして適切ではないかもだけど、ダンジョンや異世界での食事みたいな感じがする。
一話がここで無料で読めるので、私が言いたいことは読んでもらえれば伝わるはず。
戦争は女の顔をしていない 第1話 - 無料コミック ComicWalker
内容は、一巻で14名の女性へのインタビューを200ページ弱で描いているため、一つ一つのエピソードが短くて、しかも年寄の脈絡のない話をそのまま描いているから脈絡がなかったり、オチがなく急に終わることも多く最初は当惑しました。ただ、「年寄りの話はこういうものだよな」と思ったら途中からは気にならなくなりました。
いくつか気になったフレーズを紹介します。
「もし負傷するくらいなら殺してしまってください」「女の子が不具にならないように」って(p.80)
狙撃兵として従軍し、21歳で家に帰った女性が母親からかけられた言葉。母親はこのことだけをどうしても叶えてほしいと考えていた。女性として不具になるなら死んでしまうほうがいいと。
恥ずかしいって気持ちは死ぬことより強かった(p.128)
通信兵として従軍中に経血でカピカピになったズボンを洗うために、爆撃の最中で敵にあらわになり殺されることを気にせず河に入った女性の言葉。男性が爆撃を避けようと必死に物陰に逃げる中、女性たちは必死に河でズボンを洗っていた。
娘はお粥だらけになって待っていたものです 食べたのか食べなかったのか? もう泣きもしません ただ私を見つめているんです 夫と同じ大きな目で(p.144)
夫は出征してから戻ってこない中(後に戦死だと分かる)、軍学校で飛行士を訓練する女性が帰宅した際に、お粥だけ置いて家に残した娘を見たときのこと。働きながら誰の手も借りずに一人で子育てをしているから、乳飲み子であっても目を離さざるをえない。
戦争で一番恐ろしかったのは…… 男物のパンツを穿いていることだよ(p.184)
インタビュアーの女性に対し、戦争で一番恐ろしかったのは死などではなく男物のパンツを穿くことだと茶目っ気を持って言う女性。戦争がソ連に有利になったところで、ポーランドで初めて女物の下着を手に入れたらしい。
本当に一つ一つのエピソードが物凄くあっさり終わるし、絵柄も少女漫画的な感じで可愛く、コマ割りも大きいから、スナック感覚で読めるんじゃないかと思ったのだけれど、途中途中で休まないと読めませんでした。
凄く良い漫画だった。良かった。二巻が発売されたら、そちらも読みます。