千葉県を直撃した台風によって、停電を中心に多くの被害が起きているようです。被災された方々にはお見舞い申し上げます。過去の同様の事例と同様に、何かの形でお金を落とします。
このように電柱が倒れ、多くの屋根にブルーシートが張られている状況を見ると、復興には時間がかかりそう。
それで、被害から数日経って、この件に関連して、千葉県知事の不作為を批判する声をちらほら見かけるようになりました。
千葉県 森田知事 台風被害で政府に支援求める考え示す | NHKニュース
※このニュースをTwitterやはてなブックマークで見ると、森田知事への批判を多く見つけられる
そこから転じて、そもそも現職の千葉県知事を選んだ(他の候補者に投票しなかった)千葉県民の自己責任みたいな意見も出てきました。
森田健作に文句言ってる人が多い。 でも千葉って投票率全国一低いんだよね? 「誰がなっても一緒」「投票に行く時間がもったいない」なんてインタビュー流れてたが、その結果ですよ。
— 木野雄太 (@kino_youta) September 11, 2019
そういうことなら、過去の千葉県知事選挙で誰に投票すると良かったのか、私だったら誰に投票していたかをシミュレーションしてみようというのがこの記事の目的です。
2009年
まず、現職の森田知事が初当選した2009年の県知事選挙から。
候補はこちらで、
候補者名 ()内は通称 | 年齢 | 性別 | 所属党派 | 新現元別 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
鈴木栄治(森田健作) | 59 | 男 | 無所属 | 新 | 元衆議院議員。元参議院議員。俳優。 |
八田英之 | 64 | 男 | 無所属 | 新 | 社会福祉法人理事長。 |
西尾憲一(西尾けんいち) | 58 | 男 | 無所属 | 新 | 前千葉県議会議員。 |
白石真澄(白石ますみ) | 50 | 女 | 無所属 | 新 | 関西大学教授。 |
吉田平(吉田たいら) | 49 | 男 | 無所属 | 新 | 前いすみ鉄道社長。 |
結果は次のとおりでした。
※当日有権者数:4,943,809人 最終投票率:45.56%(前回比:+2.28%)
候補者名 | 年齢 | 所属党派 | 新旧別 | 得票数 | 得票率 | 推薦・支持 |
---|---|---|---|---|---|---|
鈴木栄治 (森田健作) |
59 | 無所属 | 新 | 1,015,978票 | 45.11% | 支持…自民の一部。 |
吉田平 (吉田たいら) |
49 | 無所属 | 新 | 636,991票 | 28.28% | 推薦…民主、社民、国民、日本。 支持…自民の一部。 |
白石真澄 (白石ますみ) |
50 | 無所属 | 新 | 346,002票 | 15.36% | 推薦…公明。 支持…自民の一部。 |
八田英之 | 64 | 無所属 | 新 | 136,551票 | 6.06% | 推薦…共産。 |
西尾憲一 (西尾けんいち) |
58 | 無所属 | 新 | 95,228票 | 4.23% |
森田さんの圧勝ですが、自公が森田さんと白石さんで割れた選挙だったので、自公が森田さん一人に絞られていたら、もっと圧倒的な差になっていたはず。
そもそも、森田さんは2005年の千葉県知事選挙にも出馬していて、そのときの現職の堂本知事に惜敗しているんですよね。
順位 | 候補者名 | 得票数 | 当落の別 |
---|---|---|---|
1 | 堂本暁子 | 960,125 | 当選 |
2 | 鈴木栄治 | 954,039 | 落選 |
3 | 山田安太郎 | 162,684 | 落選 |
普通は現職有利だから、堂本さんが現職でなければ森田さんが勝っていたはず。だから、2009年の選挙では現職が出馬していない以上、森田さんが最有力なのは間違いなかった。
そういう意味では、2009年の選挙で、他の候補者が、いすみ鉄道の社長の任期の2年の中で1年残して辞めて出馬した吉田さんと、大阪出身で関西大学の教授であった白石さんの二人であった時点で、この結果は見えていたと考えられます。
私はこの中だったら、白石さんに投票していたと思います。唯一の女性候補だから。でも、推薦が公明党だから、それは嫌だなって、吉田さんと最後まで悩んだかも。まあ、難しいですね。できれば、もう少し良い候補を民主党には選出してほしいと恨んだはず。
ちなみに、吉田さんは2011年に限定してTwitterをやっているのだけれど、こんなTweetをしているのを見かけました。
藤岡信勝(拓殖大学客員教授)・・・・神話で読み解く日本の歴史 http://t.co/hB4zWMd1
— 吉田平 (@TairaYoshida) November 20, 2011
2009年当時は野党が推薦していたけれど、思想は保守寄りだったのかな……。
2013年
次が2013年の選挙です。この選挙では3名が出馬しています。
候補者名 | 年齢 | 党派 | 肩書き |
---|---|---|---|
三輪定宣 (みわ さだのぶ) |
75 | 無所属 (共産党 推薦) |
教育研究家、千葉大学名誉教授 |
佐藤雄介 (さとう ゆうすけ) |
31 | 無所属 | シェアハウス経営 |
森田健作[1] (もりた けんさく) |
63 | 無所属 (自民党、公明党、みんなの党、日本維新の会 支援) |
千葉県知事、俳優 |
それで、結果は次の通り。
順位 | 候補者名 | 党派 | 新旧 | 得票数 | 得票率 | 惜敗率 | 供託金 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
当選 | 1 | ■森田健作 | 無所属 | 現 | 1,230,137 | 78.53% | ---- | |
2 | ■三輪定宣 | 無所属 | 新 | 288,762 | 18.43% | 23.47% | ||
3 | ■佐藤雄介 | 無所属 | 新 | 47,559 | 3.04% | 3.87% | 没収 |
投票率は31%です。
二人目の佐藤雄介さんというのは政見放送にも出演しなかった泡沫候補なので除外すると、実質的に共産党推薦の三輪さんと自公推薦の森田さんの2名のうちどちらかを選ぶ選挙です。
この選挙は私が有権者だったら、どうせ森田さんの二選は確定だから、選挙にいかなくてもいいかなと思ったと思います。まあ、でも、一応、森田さんに投票したかな……。
正直に言って、75歳の政治経験のない三輪さんに投票するのは無理です。私は、選挙での投票基準として、性別はできれば女性、年齢は相対的に若いこと、できれば政治経験があること(≒公共政策を勉強していること)としているので、私の基準からすると、三輪さんは森田さんに劣っている。
こういう候補者しかいない状態で、投票率が低いということを批判されるのは、自分が千葉県民だったら勘弁してほしいと思うことでしょう
2017年
そして、一番直近の2017年の選挙です。候補は次の四人で、
候補者名(読みかた) | 年齢 | 現新 | 党派 | 肩書き |
---|---|---|---|---|
角谷信一(すみや しんいち) | 62 | 新 | 無所属 | 元千葉県立高校教諭 |
竹浪永和(たけなみ ひさかず) | 42 | 新 | 無所属 | 元建設会社社員 |
森田健作(もりた けんさく) | 67 | 現 | 無所属 | 千葉県知事 |
松崎秀樹(まつざき ひでき) | 67 | 新 | 無所属 | 前千葉県浦安市長 |
結果は次の通り。
順位 | 候補者名 | 党派 | 新旧 | 得票数 | 得票率 | 惜敗率 | 供託金 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
当選 | 1 | ■森田健作 | 無所属 | 現 | 1,094,291 | 68.14% | ---- | |
2 | ■松崎秀樹 | 無所属 | 新 | 347,194 | 21.62% | 31.73% | ||
3 | ■角谷信一 | 無所属 | 新 | 132,532 | 8.25% | 12.11% | 没収 | |
4 | ■竹浪永和 | 無所属 | 新 | 16,072 | 1.00% | 1.47% | 没収 |
今回の投票率も2013年に続いて31%でした。
この選挙も、私にとっては苦しい選挙ですが、比較感からは浦安市長を5期務めた経験がある松崎さんに投票していた可能性が高い。でも、松崎さんはどこの党からも推薦・支援を受けていないから勝てないだろうなと思って投票したはずです。
ちなみに、その松崎さんは浦安市長時代にこんな発言をしています。
2016年1月11日、浦安市で行われた成人式の祝辞で、日本産科婦人科学会の定義によれば「出産適齢期は18歳から26歳を指すそうだ」と発言した上で、「人口減少のままで今の日本の社会は成り立たない」「産まなければ人口は増えない」と述べ、日本社会を成り立たせるために若いうちに子供を産むよう、新成人に促した[13][14]。
これは相当のやらかしですね。新成人向けと言いつつ、女性限定にしているから「産む機械」発言に近い。
あとは、前回2013年と同様に、民進党が誰も推薦どころか支援もしていないんですよね。自公が支援していた森田さんに組織票の観点で勝てるはずがないので、民進党、どうにかしてよと思うはず。
締め
というわけで、私の感覚だと、2009年・2013年・2017年の選挙で、森田さんが当選するのは避けようがなかったという印象です。特に2013年は酷い。そして、2017年も有力候補がいなかった。民主党系での有力候補がずっといない状況。
投票率が高かった2009年の千葉県知事選挙について、地方政治が専門の政治学者の砂原さん(当時学振、現在神戸大学教授)はこんなことを書かれています。
県議会では自民党が5割以上の議席をずっと占めていて(2007年統一地方選挙では少し負けたみたい),特に郡部を中心に自民党が強く,投票率が低いことで有名な千葉県知事選挙では自民党がまとまれば圧勝できるのではないかと思われる。
実際、この状況が2013年・2017年と続いているように見えます。保守分裂していない限りは、出馬しても負けるのは目に見えているから野党系で有力候補が出馬したがらないのかもしれない。
今回の台風被災で、森田県知事の初動の悪さが問題視されています(本当かどうかは私には分析する力はない)。でも、この過去の選挙の傾向を見る限りは、次の2021年の選挙で森田さんが出馬したら、たぶん、森田さんが再当選するんじゃないかという印象を受けました。五期目の2025年だと年齢が75歳になっているから、さすがに引退するだろうけど。
選挙って選択肢があること(それが生まれる土壌があること)が重要だなとつくづく思います。一朝一夕じゃない。