次の記事を読んでいて、
教養ブームによって"知の下方修正"が起きている!?気鋭の批評家・大澤聡が語る「教養の危機」 | ほんのひきだし
――昨今「教養ブーム」ともいわれるなか、大澤さんは本書『教養主義のリハビリテーション』(筑摩選書)で教養主義の消滅に警鐘を鳴らしています。タイトルの「リハビリテーション」にはどういった意味が込められているのでしょうか。
英語、会計、ITが「ビジネスの三種の神器」として教養視された時期がありますよね。けれど、あの手のスキルは環境の変化とともにたやすく廃れ、総入れ替えさせられてしまうもの。
英語、会計、ITというスキルがさも廃れているかのようなことが書かれていて驚きました。何しろ、私のいる世界だと、この3つのスキルは廃れるどころか未だに隆々と仕事をする上で求められているものですから。
もちろん、観測範囲の問題はあるにせよ、私と同じような感覚の人は結構いると思います。
「英語+会計」で女性は世界中で戦える | PRESIDENT WOMAN | “女性リーダーをつくる”
ただ、後になって大前研一さんの『サラリーマン・サバイバル』という本を読んだときに「英語と会計(財務)とITのスキルが必須だ」と書かれていて、自分の選択は正しかったのだと思いました。
これは日本ケロッグCFOへのインタビューです。このインタビューでも触れられているように、英語、会計、ITの3つがビジネスをする上での必須のスキルと言われるようになったのは、私の理解だと、約20年前に大前研一さんによって書かれた『サラリーマン・サバイバル』がきっかけだと思います。
当時私はこの本を読んで、もっぱら仕事でそれらを使っていくうちに、そこそこ身に着きました。20年経った今でもビジネスの現場にいられているのは、英語とITもそうだけど、特に会計のスキルに精通しているのは大きいです。加えて、批判的思考(Clitical thinking)なんかも意識はしてきました。今でも必要とされる代表的なスキルの一つですね。
※画像はThe 10 skills you need to thrive in the Fourth Industrial Revolution | World Economic Forumから
一方で、会計は苦手意識を持っている人が多い印象もあります。毎年、日経新聞や各種経済誌で会計特集が組まれ続けている。
新人向けということになっているけれど、会計の初歩の初歩を知りたいなら誰でも。動画で分かりやすく説明されてる。 / “連休中におさらい 知っておきたかった会計の基礎 :日本経済新聞” https://t.co/jkpNRqMWJJ
— 斗比主閲子 (@topisyu) May 2, 2019
私が会計スキルで特に何が重要とか言っても、「どうせ生存者バイスでしょ」と言われるのが関の山なので、ぱっと検索した2019年2月のHBOの記事でも触れられている内容をさくっと紹介しておきます。
Finance Skills Every Leader Needs No Matter Their Industry
この記事では、大きく以下の4つの会計スキルがどの業界のリーダーにとってもindispensable(必要不可欠)とされています。
- 財務諸表を理解すること
- 比率分析をすること
- キャッシュフローを理解すること
- 予測をして現在価値に割り戻すこと
それぞれ説明すると(翻訳ではなく、私の理解も絡めたエッセンスを書いているので、気になる人は原文を読んでください。平易な英語で書かれています。)、
1つ目は会計を勉強し始めたら当たり前のことですね。PL、BS、CFを読めるようになることです。業種ごとで財務諸表は特徴がありますから、色んな業種で数年単位での財務諸表を見てみるのはお勧めです。企業への理解が深まります。
2つ目もやったことがある人は多いんじゃないでしょうか。単にPL、BS、CFを眺めていても、いまいち、その企業が優れているかが分からないんですよね。そういうときは、資産効率が良いかとか、利益率が高いとかを比率(要するに単純な割り算です)で見ると、比較が容易にできるようになります。自分が働いている会社が倒産しそうなのとかも、財務諸表さえ入手できればある程度予想ができて楽しいです。
3つ目は起業している人なら絶対に意識していることですね。PLで利益が出ているように見えても、売掛金のままで回収ができていないとか、将来儲かるといっても今は製品や人件費のためにお金が必要だとか、事業をする上で実際にお金が今どれくらいあってこれからどうなるかを分かっているのはとても重要です。EBITDAとかFCFぐらいは概念と意義を理解しておきたいですね。
そして4つ目がもっとも重要。会計の知識というのはえてして過去を分析するためだけに必要と思われますけど、事業で重要な判断をするときに、その判断が適切かというのにも使えるんですね(というかその使い方が最も重要)。自社の過去のデータや競業や市場の分析を反映したプロジェクトごとの計画を作ってみて、いくらお金が必要で、どれくらい儲かるか、リスクの度合いからすれば現在価値がどれくらいかを分析するわけです。そうして、複数のプロジェクトを比較して、何に経営資源を費やすかを決める。
以上、HBOのこの記事では、この4つを挙げていて、私も違和感はありません。
今後20年で仕訳は人力の余地は減っていくのは確実です。ただ、仕事をする上で、財務データを人間が見て判断をするというのは相変わらず残るでしょう。…その辺のことを書こうと思って、マッキンゼーの次の記事を読んでたんですけど、疲れてきたのでこの辺で止めておきます。お好きな人はどうぞ読んでみてください。
Automation and the workforce of the future | McKinsey
ちなみに上に挙げたようなことを学ぶときの初心者向けの最初の本はこちらです。
ざっくり分かるファイナンス?経営センスを磨くための財務? (光文社新書)
- 作者: 石野雄一
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/12/13
- メディア: Kindle版
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10年以上前に発売された本なんですけど、今でも売れ続けています。良い本ですよ。