斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「“○○で食べる方法”を教えてくれない」 のは日本の大学では美大以外も似たり寄ったり

私がこの前読んで面白かった『ブルーピリオド』がタイトルにあったので、この記事を読みました。

「美大は“絵で食べる方法”を教えてくれない」 漫画『ブルーピリオド』作者と完売画家が考える“美術で生きる術” (1/3) - ねとらぼ

記事の中身は、前半では『ブルーピリオド』の紹介もありつつ、中盤以降は芸術系の大学を卒業後に絵でどうやって収入を得ていくかというのが具体的に書いてあって、興味深いものでした。特にこの辺。

――実際、油絵で食えている若手画家はどれくらいいるんでしょう?

中島:35歳以下だとすると、年収300万円あるのは20人くらいでは。相当厳しいですよ。僕の弟子が百貨店で2回個展をやった際、「年収どれくらい?」と聞いたら「130万円」と言ってました。百貨店市場にたどり着いても安住の地ではないんです。

山口:藝大はギャラリーで活動する人が多くて、「百貨店系はお金になる」という曖昧な情報を聞いていましたが、そんなことないんですね……。

百貨店で個展をやれても年収130万円って、ちょっとした地下アイドルとか芸人みたいな感じだなと。あと、広く言えば同じ業界にいるはずの『ブルーピリオド』作者の山口さんが、油絵マーケットについて、このぐらいの情報が入ってきていないのですから、あまりお金の話を友人知人間でしないのだろうなという印象を受けました。

私が生きている業界では、友人知人間で、今はまだまだスタートアップが(オプション考えれば)熱いとか、アメリカの同業でいくらぐらいもらっているとか、あの人は個人でマンション何棟持っているかとか、結構当たり前にお金の話が出ます。お金の話が出回らなければ、自分の身を置く先をどこに置くとお得かは分かりにくい。

それはそれとして、記事の中では、美大では絵を描いて収入を得る方法を一切教えてくれないというエピソードが登場します。先生にプロの画家がいないという話も。この点については、特に美術のマーケットではその傾向は強いなと思いつつも、○○で食べる方法を教えてくれないのは、日本の大学では美大以外も似たり寄ったりという印象があります。

大学では、学問やテクニックは大学で教えてくれるものの、キャリアをどう形成していくかは、私が学生時代の頃は大学でまったく触れられていませんでした。大学の先生になるのであれば、院から博士へというのが普通だよねというのは、特になんの異論もない。実際にその大学で学んだ学問で、どうやって食べていくかは、医師や薬剤師みたいに資格業でもないと、明確じゃない。

結局、ほとんどの人が企業に就職していきますから、法学や経済学や経営学が就職に強いというイメージはある。でも、そういうところでも、どうお金儲けに繋げていくかは、たぶん、今でもそんなに説明はないんじゃないかと、友人の大学教員と話をしていると思います。すごく卑近な例だけど、「保険のアクチュアリーになると年収何千万円ももらえるらしい!」「銀行員は昔は30過ぎたらみんな年収1千万円だったけど、最近はきつくなっているとか」とか、そういう話は、大体、友人知人から共有されてるのではないか。

それにしても、暇つぶしに、芸大の進学実績をチェックしてみたんですけど、なかなか厳しいですね。

最近5年の進路状況(東京芸大)

平成30年3月卒の、美術学部卒業生254名について、進学が122名で、就職が42名で、残りの90名が自営か未定。では、大学院生の修士課程卒233名で、進学が33名で、就職が60名で、残りの140名が自営か未定。マジョリティが自営か未定という状況です。就職先も、どの企業もせいぜい1-2名しか採用がない。芸大卒の私の友人も、芸大の院を卒業後、一切芸術で食べていません。

音楽学部も似たり寄ったりです。

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アクセンチュアとか関東財務局というのは面白い。楽理科というのは、ちょっと特殊な学科なんですかね。

『ブルーピリオド』自体はとても面白いマンガであるものの、ここまで苦しまないといけないのに、これで食べていくのは厳しいんだろうなと思うと、ちょっと複雑な気持ちになります。 

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

 

※話題になっていることもあって1巻のkindle版は無料で読めます。タイトルはピカソの『青の時代』から、たぶん、とってる?

何にせよ、実際の絵が登場すること含め素晴らしい漫画なので、(自分で見つけたと思えるように)子どもが手の届かないギリギリのところに置いておきます。