斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

「スパルタ式で育てられた夫は、家庭より仕事を優先。息子には泣くまでガンガン教育。妥協点が探れず結婚生活はもう無理かもしれない」

今日も読者から頂いたモヤモヤメールの紹介です。「子どもの頃苦しみながら勉強させられた夫が、自身の息子も同じ目にあわせようとしていて、その上、仕事が最優先で、結婚生活に支障をきたしている」というモヤモヤです。

Q1. 自己肯定感が低い夫が家族より仕事を優先します

閲子様

初めまして。麻衣と申します。

いつも楽しく拝見しています。閲子様が「自己肯定感の低さとモラハラ」について書かれていたのを拝見し、思い当たることがあってメールする決心がつきました。私は閲子様とは正反対で、小学生が大人になったようなタイプですので、浅いモヤモヤになりそうで本当に心苦しいですが、よろしければお召しあがりいただけますでしょうか。

基本プロフィール

関西在住、夫婦ともにアラフォー共働き、息子5歳です。

住まい

私の実家に二世帯住宅です。二世帯にすることについては夫は積極的に賛成していました。育児の助けが得られる(=自分が負担しなくてよくなる)ことが理由だと思います。この同居も夫のストレスになっていると思われます。

夫と私の教育歴&スタンス

夫:旧帝大卒。お母さんはぎちぎち管理タイプで、夫の弟も旧帝大卒。

私:私大卒。母は放任タイプ。

仕事のスタイル

夫:起きている時間はほとんど研究に充てたい。趣味はなし、研究自体も、楽しくやっているわけではなさそう。現在の地位を守るために必死、命を削っている感じ。今のキャリアについても、「自分がいまやっていることは20年後には何の価値もないものになる」「意味がない」等と言います。

私:大企業の事務職で、仕事はお金のため、首にならない程度に細く長く続ければよいというスタンス。

お悩み本題

よくあるパターンですが、子供が生まれてから夫と考え方のギャップを見つけることが多々あり、埋められないのではないかという気持ちになりつつあります。具体的には、夫の考え方が仕事>>子供、家庭であることや、子供をスパルタ式でガンガン教育しようとすることです。

例えば教育に関しては、共有型しつけに非常に共感していますが、夫に話してもまったく響かず。自分は管理ビシビシ教育でここまでのし上がってきたという意識があるのだと思います(私も学歴では負けているため、なかなか言い返せません)。

夫の育児に対する態度にしても、子供もそれなりになついてはいますが、基本としては私が育児をするものであり、自分は貴重な研究の時間を割いて子供に対応してやっている、という意識が透けて見えます。例えば、教育にはうるさく口出しするが、土日に外遊びに連れて行くことには消極的だったり、家族でのレジャーも全くと言っていいほどありません。

義実家への帰省も、お盆やGWのピークシーズンに行かなければダメという割に、自分では旅の手配を一切しませんし、仕事があるから自分は行かないと言ってきます。「俺の実家を大事にする気持ちがあるなら仕事で忙しい自分に構わず、子供とお前だけでいけるだろう」とも言っていました。また、子どもの習い事の送迎も、私や私の母にやらせて、自分は仕事が忙しいからと一切やりません。

今までいろいろと衝突もあり、説得もしてきましたがなかなか妥協点が見つかりません。ほとほと疲れ、もうこのまま結婚生活をするのは無理かもと思い始めました。子供は懐いているしなるべく離婚は避けたいとも思いますが…。

夫は自分でも「自己肯定感がない」と言っています。それが子供や私への厳しい態度につながっているように思われます。これから、関係を回復することはできそうでしょうか。。

とりとめない長文でお恥ずかしいですが、ご意見いただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

A1. 自分の過去の肯定のために子どもも厳しく子育てしてる?

麻衣さん

メールありがとうございます! 妻側の実家での二世帯住宅は珍しい案件ですね!! 大変美味しくいただきました。私が気になったところをコメントしていきますね。

二世帯にすることについては夫は積極的に賛成していました。育児の助けが得られる(=自分が負担しなくてよくなる)ことが理由だと思います。この同居も夫のストレスになっていると思われます。

思いますというと直接そういう話がパートナーさんからあったというわけではないということですかね? 同居がストレスになっていることも本人の口から出てきたことはない??

今のキャリアについても、「自分がいまやっていることは20年後には何の価値もないものになる」「意味がない」等。)

これキツイですね。研究者の場合は、ある程度分野で明暗はっきりしちゃうのはあるにせよ、自分で仕事が上手くいっていないと分かっていて、仕事の優先順位を高めているというのは。

具体的には、夫の考え方が仕事>>子供、家庭であることや、子供をスパルタ式でガンガン教育しようとすることです。

自分は管理ビシビシ教育でここまでのし上がってきたという意識があるのだと思います(私も学歴では負けているため、なかなか言い返せません)。 

パートナーさんは自分がされたように子どもは育てたいということなんでしょうね。ある意味、自分の育てられ方は正しかった、今の自分は正しいということを肯定したいみたいな? ある程度ロジックがあるというか、研究大好き人間なら、エビデンスがある教育方針については、大体は賛同するはずです。賛同はしないまでも多少は考慮する。

育児に対する態度にしても、子供もそれなりになついてはいますが、基本としては私が育児をするものであり、自分は貴重な研究の時間を割いて子供に対応してやっている、という意識が透けて見えます。例えば、教育にはうるさく口出しするが、土日に外遊びに連れて行くことには消極的だったり、家族でのレジャーも全くと言っていいほどありません。

また、子どもの習い事の送迎も、私や私の母にやらせて、自分は仕事が忙しいからと一切やりません。

ある意味、それがパートナーさんにとっての子育てスタイルなんでしょうね。自分はやらずに母親とその祖母がやるべきだと。パートナーさんのご実家でもそうだったんじゃないですかね?

義実家への帰省も、お盆やGWのピークシーズンに行かなければダメという割に、自分では旅の手配を一切しませんし、仕事があるから自分は行かないと言ってきます。「俺の実家を大事にする気持ちがあるなら仕事で忙しい自分に構わず、子供とお前だけでいけるだろう」とも言っていました。

これは最高にほっこりしました。実家を大事にしてないのは、実家より仕事を優先しているパートナーさんのほうですよね(笑)

今までいろいろと衝突もあり、説得もしてきましたがなかなか妥協点が見つかりません。ほとほと疲れ、もうこのまま結婚生活をするのは無理かもと思い始めました。子供は懐いているしなるべく離婚は避けたいとも思いますが…。

私が言うことじゃないですが、離婚しても特に問題ない状況ですね。親権も取れるし、養育費は確実に取れるし。麻衣さん自身は働き続けられる環境だし。

妥協点として私が思うのは、

・パートナーさんは子育てをしなくていいから子育てに口を出さないこと

ぐらいに置きたい感じ。

これから、関係を回復することはできそうでしょうか。。

自己肯定感を回復する方法についてはカウンセリングを受けたりするのとか、本を一緒に読むというのがありますかね。私は専門家じゃないですが、たぶん、パートナーさんんの自己肯定感が回復されない限り、関係の回復も難しい感じがします。

細かいモヤモヤはいくらでも美味しくいただきますので、どうぞご気軽にお送りください!

topisyu

Q2. プレッシャーをかける夫 vs 好奇心を大切にする私

閲子さま

ご返信ありがとうございます。

同居がストレスになっていることも本人の口から出てきたことはない??.

夫は同居について「あなたが楽になるでしょう」という言い方でした。微妙な言い回しですよね。また、同居を解消したいという発言は出たことはありません。

同居する以前は、そもそも共働き夫婦としての家事のシェア体制などをまったく検討する機会がありませんでした。よくある話ですが、共働きでも男女で仕事にかける時間が圧倒的に違うので、双方が納得できる形での分業は本当に難しいです…。

パートナーさんは自分がされたように子どもは育てたいということなんでしょうね。

そうだと思います。閲子さんのご指摘通り、自分の過去の肯定という意味もあるでしょうし、悔しいですが夫側の親戚は皆高学歴です。それで私もなかなか反論しきれないという部分があります。

よく本人が言っているのは、子供時代「こんな問題もできないのなら死んでしまえ!」と言われて叩かれたと。あとはつねにマイナス評価だったり、育児本の言ってはいけないテンプレまんまです。

息子に対しても、苦手な問題を泣かせるまでやらせます。今はできなくても、時間がたつとケロッとできるようになる時期なのに…。できない部分を直視することも大事ですが、今はお遊びしながらの勉強習慣づけや好奇心を伸ばすことが大事だと伝えても、聞く耳持たず。プレッシャーを与えられることが重要なのだそうです。

愚痴ばっかりになってしまいますね。もう恥ずかしいです。取り留めなくなってしまいますので最後一つだけお聞かせください。

一つお伺いしたいのですが、閲子さんはジョブ型のお仕事をされていると何かで書かれていましたよね。ジョブ型の仕事というと、常に結果で評価される厳しい部分があると思います。

夫は、評価に自信が持てない→必要以上に仕事をしないと失職すると思い込む→ワークライフバランスの崩壊という傾向があるのですが、閲子さんはご自身の仕事への評価をどうされていますか? 例えば、ここまでやればOKという線引きをどのように客観性をもってしているか、というか。

私は何しろ典型的な日本型職場なので、座っていればお給料がもらえます。私自身はそれで満足ですが、子どもの将来を思うと、もうこんな仕事では生活できないでしょうし…。

すみません、お手すきの際にまたコメントいただければ幸いです。

麻衣

A2. 今から義実家がおかしかったことを気付いてもらうのはアリ

麻衣さん

メールありがとうございます!

まず、

愚痴ばっかりになってしまいますね。。もう恥ずかしいです。

についてはまったく恥ずかしくないと思います。少なくとも私はこういう話を聞くのが好きで、メールを頂いているので、大変ありがたいです。

ジョブ型の仕事に対するご質問がありましたが、その前に、ちょっと気になったところをコメントしておくと、

よく本人が言っているのは、子供時代「こんな問題もできないのなら死んでしまえ!」と言われてたたかれたと。

今はお遊びしながらの勉強習慣づけや好奇心を伸ばすことが大事だと伝えても、聞く耳持たず。

これはパートナーさんは相当義両親にやられてきた感じですね。

義実家には色々ありそうですが、そういう意味では、麻衣さんにやる気がある前提で、できることがあるとすれば、義実家がおかしいことを、義実家がおかしいとは直接は伝えずに、パートナーさんに認識してもらうことかなと思いました。

例えば、

よく本人が言っているのは、子供時代「こんな問題もできないのなら死んでしまえ!」と言われてたたかれたと。 

こういうことをパートナーさんから聞くことがあったら、「子どもの頃、そんなこと言われたの。悲しかったね」とか肯定してあげることですね。大人になった今の視点で、子どもの頃のパートナーさんを肯定する。

お子さんの教育も大切ですけど、麻衣さんがパートナーさんと、離婚をせずに、これからもずっと一緒に暮らしていくつもりならば、麻衣さんが楽になるためにも、義実家からの呪縛にパートナーさん本人が気付けるようにサポートすることができるといいですね。簡単なことじゃないけど!

最後にジョブ型の働き方について。

夫は、評価に自信が持てない→必要以上に仕事をしないと失職すると思い込む→ワークライフバランスの崩壊という傾向があるのですが、閲子さんはご自身の仕事への評価をどうされていますか?

例えば、ここまでやればOKという線引きをどのように客観性をもってしているか、というか。

パートナーさんみたいに自己肯定感が低いと、実際良い評価をされていても、素直に受け入れられないんですよね。私はそれほど自己肯定感が低いということもないので、他者からの良い評価は受け入れられています。

また、自分の力量もそれなりに把握しています。自分がどれくらい仕事ができるかは、相対的なもの、絶対的なものがあり、周りの人がどれくらい仕事ができて、自分がどれくらい仕事ができるかを分かっていれば、特に評価に悩むことはありません。

こんな感じでしょうか。ではでは!

topisyu

締め

以上がメールのやり取りとなります。

妻の実家で二世帯住宅というのは珍しいですが、夫としては、妻が働いていてできない以上は妻の母親にやらせるために致し方なくという、本人の中での妥協の結果なんでしょうね。

妻側の実家での二世帯住宅でも、色々揉め事はあるものなので、個人的にはそういう話も聞きたかったんですけど、今回は夫とのエピソードが中心となりました。

ちょっと話は変わって、子どもの教育の話を少し書きます。

このパートナーさんがやられていてやっているような、スパルタ式で子どもを育てるのは無茶があるけど、分かりやすいから親がやっちゃうんですよね。数字に出るから。営業マンにプレッシャーをかけるのと同じ。で、数字が出たことでもって成功体験として次の世代にも伝わってしまう。

今時は、子どもの非認知能力を向上させることが重要だといういうエビデンスが出てきているわけですが、概念が難しく、馴染みもないことなら、なかなか浸透していないなと思っています。

世界で注目される非認知的能力って? | 子育てに役立つ情報満載【すくコム】 | NHKエデュケーショナル

先日、私が読んだ、『私たちは子どもに何ができるのか』という本では、非認知能力を向上させるドライバーは現状では確認できていないことを誠実に書いた上で、どのような環境が向上に資するかを具体的に説明してくれています。

私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む

私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む

  • 作者: ポール・タフ
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2017/09/06
  • メディア: Kindle版
 

過去自身がDVを受けた経験のある親は、子どもにもDVをしがちですが(虐待の負の連鎖)、この点を回避する方法についても触れられています。

親から虐待を受けたりして自己肯定感が低いと人生が生きにくくなるというのは、もっと世の中で広まってもいいと思います。「こんな問題もできないのなら死んでしまえ!」と言われて叩かれて育てられたら、今問題が解けて死ななくても、将来死ぬ確率は上がりますよね。