私は常々申し上げている通り、実名のスキャンダルは好きではありません。揉め事は、メディアを介さない、匿名の、当事者発信のものに限るというのが私のスタンスです。
先週とある議員のスキャンダル報道があり、テレビを見ていない私にも、ラジオやネットやdマガジン経由で情報が入ってきました。思わずちょっと情報を追ってしまって、先日は記事を書きましたが、今になって「やっぱりメディアを介したものは美味しくない」と胃がもたれてしまいました。
この記事は私が私のためにこの胃のもたれを解消するために書いたものです。モヤモヤの言語化です。この件についてまったく興味がない人はそっ閉じを推奨します。忠告しましたからね。
- 「不倫を批判できるのは身内だけ」
- 「家庭内の問題では済まない」
- 「不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいい」
- 鳥越俊太郎さんが破った『政治家の女性スキャンダルは記事にはできない』掟
- 「カップラーメンが1個400円?…庶民の金銭感覚とのギャップを感じさせた」
- 締め
- 余談
「不倫を批判できるのは身内だけ」
私がどんな風に胃もたれを起こしたか。
例えば、朝日新聞の9月8日(金)の記事。不倫報道が加熱する現状を問題視する記事ですが、
不倫報道、なぜ過熱する? テレビでは笑いがわく場面も:朝日新聞デジタル
関連記事には不倫報道がずらーっと並んでいます。
もちろん、こういう記事を出した朝日新聞は、今後、政治家の不倫については慎重な報道をしていくはずです。でも、なぜ、今回の議員の件になってから、こんなことを言い始めるのか。前から不倫は扱っているのに……。
こうして消化できないものが溜まるわけです。
「家庭内の問題では済まない」
不倫といえば、とある男性議員が2016年に議員辞職したのも記憶に新しいところがあります。この件について、民進党の枝野幸男さんは、
宮崎議員に不倫疑惑「育休拡大へ足引っ張られた」枝野氏:朝日新聞デジタル
(『育休』を取る方針を明らかにしていた自民党の宮崎謙介衆院議員が週刊文春で不倫疑惑を報じられたことについて)育休という問題を積極的に提起されながら、それと同時にそういう(不倫疑惑が浮上した)ことについては、一般的に言えば、特に男性で育休を取得する人を増やしたいと思っている立場からすれば、足を引っ張られたという憤りを感じている。家庭内の問題では済まないと思っている。
こんな憤りコメントをし、朝日新聞がニュースにしています。
本人が育休を主張しておきながら、育休を取得する人間としてはあるまじき疑惑が浮上していることから、家庭内の問題では済まないという論です。
今回の議員も、待機児童問題を取り上げたことで一躍有名になりました。そして今回のような疑惑が報道された。どこに違いがあるのか。消化不良になる。
ちなみに、枝野幸男さんがこのコメントをした当時、男性元議員は色々奔走はしていたみたいですが、不倫の事実を認めてはいません。事実を認めたのは2日後の記者会見のこと。だから、記事の中も疑惑となっています。「疑わしきは罰せず」は刑事事件の原則だから、一般化するものじゃなく、批判するだけなら罰したことにはならないという発想かもだけど、弁護士資格を持つ枝野幸男さんがこういうことをしている。
別に悪い例を見習う必要はないんですけどね。モヤモヤする。
「不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいい」
今回の議員については、政治家として有能だから状況が違うという考え方があります。
個人的に政治家って日本が良くなる事をどんどん実行実現していく能力さえあれば私生活はどうでもいいと思うのですが、そういう訳にもいかないですよね。能力は無いけど清廉潔白な政治家より、私生活では色々あるけどバリバリ仕事をする政治家なら個人的には後者の方がいいと思うのですが。
— 保育園落ちた人 (@hoikuenochita) 2017年9月8日
これは「保育園落ちた」の匿名記事で有名になった方のTweet。私も同意見なんですけど、どこまで色々あっていいかは意見が別れるところなんですよね。例えば、この人が書いたその匿名記事では、
不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増やせよ。
(中略)
不倫したり賄賂受け取ったりウチワ作ってるやつ見繕って国会議員を半分位クビにすりゃ財源作れるだろ。
不倫と並んで、賄賂が入っている。賄賂が不倫と並列なのは信じがたいんですけどね。実際に賄賂を受け取って保育園増やした人がいたら、たぶん、徹底的に批判されるから。だって、そんなことが起きると保育園が新設される度に疑われることになって、保育園を増やすことへのハードルになる。
ちなみに、もう一つ並んでいるウチワというのは、もう忘れた人が多いでしょうけど、2014年に法相を数十日で辞めた松島みどりさんの件を指しているのかなと思います。
松島法相、今度は“うちわ配布問題” 「法律を自分に都合良く解釈するな!」蓮舫氏が追及 参院予算委 - 産経ニュース
このときは公職選挙法違反の疑いがあるとして批判されていました。その後、不起訴処分(嫌疑不十分)になっています。この松島みどりさんは、法相になった後の記者会見でこんなコメントをされていました。
選択的夫婦別姓制度の導入に賛成しており、2014年9月5日、閣議後の記者会見において「旧姓では銀行口座を開設できないなど、女性が働く中で不便を感じる人が増えている」と述べ、民法改正への言及は避けつつも、「現実的な運用について議論したい」と改善の方法を検討する意向を示した。
法相によるウチワ疑惑を大問題と捉える人もいれば、法相が選択的夫婦別姓制度を賛成しているのだからウチワなんて問題ないと考える人もいるはず。
「多少問題があっても政治家として優れていたらいい」というのはたぶん多くの人が賛同するけれど、実際は、問題だと思う程度と優れていると思う程度は人それぞれなんですよね。
鳥越俊太郎さんが破った『政治家の女性スキャンダルは記事にはできない』掟
今回の件で、政治家の交際関係は加熱気味であり、これ以上報道するべきではないという意見がちらほら出てきています。
佐々木俊尚さん、「山尾志桜里さんへの批判は矛を収めなければならない」 - Togetterまとめ
私もこれ以上実名のスキャンダルが目に入るのは嫌なので、この種の報道は止めたほうがいいと昔から思っています。ただ、なかなかなくならないんですよね。ベッキーさんの件があってから、増えたのは確かだろうけど、もうずっと前から続いている。
編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞というものがあります。大手出版社・新聞社・フリーランスの編集者がその年の優れた記事を選ぶというもの。もう二十年ぐらいの歴史がありますが、かなりの頻度で政治家の交際関係が報じられています。
中には、とある議員について、本人の了解を得ないで公にしていない性的指向等を暴露する、いわゆるアウティングまでしたものがあり、これがスクープ賞を取っていたりする。
しかし、更に遡れば、政治家の性的なスキャンダルが記事にできない時代もあったそうです。『政治家の女性スキャンダルは記事にはできない』という掟があった。それを破ったのが鳥越俊太郎さん。
政治家の女性スキャンダル - 山口一臣 読み比べ週刊誌 - Asahi Shimbun Digital[and]
この業界の不文律というか、あえて言うと「掟」を破ったのが1989年、当時、鳥越俊太郎さんが編集長をしていたサンデー毎日だ。 当時首相だった宇野宗佑氏(故人)の愛人だった神楽坂芸者の告発記事を掲載したのだ。当初、日本のマスコミは「掟」に従い黙殺したが、米ワシントンポストがキャリーしたため国内でも話題となり、宇野内閣は直後の参院選で惨敗し、首相も史上最短の在任期間で退陣となる。
その鳥越俊太郎さんは、2016年の東京都知事選で、10数年前に本人に憧れていた女子大生に暴力的に性的関係を迫ったことが報じられていました。その後、鳥越俊太郎さんは報道した編集者を刑事告訴しました。結果は不起訴処分で、民事訴訟を起こしたかは分かりません。
鳥越氏の刑事告訴、週刊文春編集長を不起訴 東京地検:朝日新聞デジタル
鳥越俊太郎さんはこのことを悪魔の証明としていましたが、
「ペンの力って今、ダメじゃん。だから選挙で訴えた」鳥越俊太郎氏、惨敗の都知事選を振り返る【独占インタビュー】
週刊誌2誌に書かれたといっても、情報源は一緒ですよね。はっきり言って、それがそのまま、なんの裏付けも証拠もなく、「この人がこう言っている」というだけで載っちゃうのね。
被害に遭った女性とその被害を学生時代に聞いていた夫による二人の告発と、政治家の愛人の芸者の告発に、どれだけの違いがあるでしょうか。
「カップラーメンが1個400円?…庶民の金銭感覚とのギャップを感じさせた」
首相に愛人がいることや、法相に公職選挙法の疑いがあるというのは、かなり問題があることだとして、首相がカップラーメンの値段を知らないことはどれくらい問題だと思いますか。
2008年に麻生太郎さんが首相だったとき、こんな報道がありました。
asahi.com:首相、カップめんは「400円くらい?」 委員会で答弁 - 政治
カップラーメンが1個400円?麻生首相の28日の参院外交防衛委員会での答弁が、出席議員らの苦笑を誘った。連夜のようなホテルのバー通いに批判も出ている首相。庶民の金銭感覚とのギャップを感じさせた。
食品高騰問題を取り上げた牧山弘恵氏(民主)がカップラーメンの値段を質問したのに対し、首相は「最初に日清(食品)が出した時、えらい安いなーと思ったが、あの時何十円か。いま400円くらいします?」と答弁。
牧山氏によれば、相次ぐ値上げがあったとはいえ、現在の価格は約170円。答弁に対する議員らの反応で首相もズレに気がついたようで、「そんなにしない? 私、最近自分で買ったことないので」と釈明した。
私はこのニュースを見聞きした当時、「日清のカップラーメンが170円なのはコンビニぐらいのものであり、スーパーでは120~130円ぐらいじゃないか。カップラーメンといえばPBならもっと安い。ラーメン屋と提携しているなら300円強はする」などと、トメトメしい感想を覚えた記憶があります。それぐらいどうでも良かった。
ただ、メディアはこの朝日新聞の記事のように「庶民との金銭感覚の違いがある」ということで報じていました。その前に、麻生太郎さんの高級ホテルの利用が問題視されていた上でのこの質問があったのは理解できるんですけど、こんな質問を答えられる首相は菅直人さんぐらいでしょう。首相の資質としてどこまで大事なことか。
締め
長々と書いてきて何が言いたいかというと、最初に触れた記事と同じで、
「やっぱり実名のスキャンダルは味付けが過剰でとても食べたれたものじゃない」
ということです。
「何だその結論は!」と憤る人は、お願いですから、ブログのヘッダー画像と、最初に書いた私の注意事項を読み直してください。あなた向けのブログでも、記事でもないんです。
この記事の目的は、最初に書いた通り、私の胃のもたれを解消するための、モヤモヤの言語化が目的です。私は"左翼運動家の支援者"でも"自民党の犬"でもない、発言小町によくいる、ただの家庭内トラブルが大好きな人間です。
そうか!「妻にも不倫の責任がある」とすれば鎮火すると考えている人が炎上対策してるんだ - 斗比主閲子の姑日記
今はこの記事によって、実名のスキャンダルの味付けがどれだけ過剰かを吐き出せたので、だいぶ胃がスッキリしました。もし、今後、私が実名の、特に政治家絡みのスキャンダルに言及することがあったら、「それ実名ですよ!食あたりしますよ!!」とご指摘頂けると嬉しいです。
以上、本題です。以下、余談です。
余談
麻生太郎さんのカップラーメン報道のとき、他にも明後日な方向の感想を抱いたのを思い出しました。「大体、テレビ局でも、新聞記者でも、給与水準は一般の人たちより高いのだから、庶民を代表している風に語るのはどうなんだろう?」というもの。
これについては、明後日な方向だというのは自分でも認識しています。給与が高くても庶民視点で書くのが記者の役割だし、会社に内部留保があっても内部留保を問題視していいし、会社にブラックな労働環境があってもブラック企業を批判していい。自分たちに問題があるから、それで報道が萎縮するんじゃ、その方がマスコミとして正しくない。
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できれば、その庶民感覚で、今後予定されている消費税増税にも反対し続けて欲しいと切に願っています。それこそマスコミとして正しいと思うのは私だけでしょうか。(小町話法)