斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

働いている保護者も、保育士も、お互いに仕事を簡単に休めていないんですよ

このTwitterのまとめを読みました。

保護者『先生達は働いてないから知らないかもしれませんが仕事ってそう簡単に休めないんですよ』ちょっと何言ってるかわかりませんね… - Togetterまとめ

「(保育士を含む)いわゆる先生という職業の人は、世間知らず」という意識は昔は結構あって、今もまだ残っているので、本当にあったかは別として、ありそうな話です。

 

Kindergarden

※ナレーション「この学び舎でまさかあんなことがあろうとは、このときはまだ知る由もなかった」

 

このまとめへの反応は、タイトルもあいまって保護者を非難するものが大半です。保育士も仕事ですから、それを仕事でないとすれば当たり前ですね。ただ、やり取りの前後が分からないし、言われた本人がそのままの言葉を書いているかも分かりませんから、これだけで判断するのはちょっと危ういと思いますが。藁人形を叩いているかもしれない。

関連:所沢の「飛び降りろ」発言教諭の「処分見送りを」 保護者ら署名 - 産経ニュース

 

ちょっと話は変わって、このエピソードは、弱いもの(休めていない働いている保護者)が弱いもの(同じく休めていない働いている保育士)を叩くという構図とも取れます。

そして、この保護者を叩くのも、また、弱いものが弱いものを叩く構図になっている可能性があります。

弱いものが弱いものを叩き合っていると、弱いものの生きにくさが増します。ギリギリで仕事している人が生活保護を叩くみたいな感じですね。本当はギリギリで仕事をしている人にこそ生活保護というセーフティネットは必要なのに。

 

他人を叩くことで生きる活力を得る人はいるでしょうが、私は根本的な原因を解決することに意識を向けるほうが好きです。元のTweetに関して言えば、問題の原因は、簡単に仕事を休みにくい労働環境があることでしょう。

今は前後のTweetが読めないため何ともいえないものの、保育士さんが保護者から「簡単に仕事を休めない」と言われるとしたら、保育士さんが「お子さんが病気になったから迎えに来るように」と伝えた線が濃厚です。もしくは何らかのイベント(バザー)への参加を促したか、保護者会絡みのことか。

 

ご存知の通り、育児・介護休業法によって、労働者は子どもが病気やケガになったときに申請すれば看護休暇を取得できます。子どもが1人であれば5日まで、2人以上であれば10日までです。

法律で書いてあるんだから、会社の規定しておいてほしいところですが、増えてはいるものの、規模が小さな会社ではまだまだ規定されていないところが結構あります。

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※グラフは「平成 26 年度雇用均等基本調査」の結果概要(厚労省)から

そして、看護休暇の取得率も決して高くはなく、利用日数も5日未満が多く、また、取得できても時間単位ではなく1日単位のみのところが多いです。

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※グラフの出所は同上

未就学児は特に簡単に病気になりますから、時間単位ではなく、年間で5日しか休めないとなると結構厳しいのが現状です。夫婦で取れば2倍になりますが、夫側はほとんど取得できていません。

 

また、看護休暇ではなく、有休を取ればいいといっても、有休取得率はそんなに高くなく。ここでも、中小企業では有休を取れていないことが確認できます。ちなみに、非正規は有休付与日数が少ないものの取得率が高いため、正規と比べて有給取得日数は同じぐらいです。(参考

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※表は平成 28 年就労条件総合調査の概況(厚労省)から

ここまでが保護者サイドの休みやにくさです。

 

保育士の労働環境については今更説明するまでもないでしょう。給料は安いし、休みも少ないです。週休一日も結構ある。有資格者のうち半分も保育士として働いていないことから察せますよね。

東京新聞:保育士2割「退職考える」 県が調査「給料安い」「休み少ない」:千葉(TOKYO Web)

 

政府がまったくの無策ということでもないんですが、こういう現状で、弱いもの同士が殴り合うのはつまらないなと思います。