斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

炎上の謝罪で「誤解を招いた」が追加燃料になるのは、受け手に責任転嫁しているように見えるから

私がいつも聴いているSession-22で、荻上チキさんが、

『防衛大臣の稲田朋美さんが、都議選の際に「自衛隊としても応援したい」と言ったことで「誤解を招きかねない言葉だった」として謝罪をしたこと』について、

「誤解を招きかねないと言うのは、受け手に問題があったということになりますよね」みたいなことを仰っていました。正にその通りで、これが炎上で「誤解を招いた」で謝罪することが追加燃料になる理由ですよね。「誤解」は「解釈を誤る」だから、「受け手が正しく理解できればこんなことにはならなかった」という責任転嫁に聞こえる部分があります。

※厳密には、「誤解を招くような」と「誤解を招きかねない」と「誤解を招いた」と「誤解があった」は意味が違いますが、ここからは「誤解」論法としてざっくりまとめています。それと稲田朋美さんの件は炎上どころではない論点が含まれていますが、それは触れません。 

 

実際、稲田朋美さんの「誤解」連発会見は火に油を注いでいました。

「誤解」受け手が悪いのか 食い下がる記者に稲田氏は… - 2017都議選:朝日新聞デジタル

――誤解を招く余地は全くない。「防衛省、自衛隊、防衛大臣」と言っているじゃないか。誤解を招く余地は一切ない。我々が馬鹿だからというのか。

――「誤解を招きかねない」とは「解釈を誤る」ということだが、我々受け取った側が間違ったのであって、大臣は間違っていなかったということなのか、発言そのものが誤っていたから撤回したと言うことか。

――「誤解を招きかねない」と言うが、「誤解を招いた」ではなく、なぜ「招きかねない」と言うのか。受け取り側の問題のように聞こえるが。

上記は「誤解」に反応した記者のコメントを抜粋したものです。音声を聞かなくても、記者の怒っている感じが伝わってくる!

 

ちなみに、最近だと日銀も「誤解」論法で謝罪をしていました。

ヒトラーの経済政策「正しい」発言に国際的な非難-日銀が謝罪声明 - Bloomberg

原田委員は自身の発言について、日銀広報を通じ、「一部に誤解を招くような表現があったことについては、心よりおわび申し上げたい」とコメントした。日銀も「審議委員の発言に誤解を招くような表現があったことについては遺憾に思っており、こうしたことがないよう、今後とも注意してまいりたい」との声明を発表した。

確かに、本来伝えたいメッセージがあるのに、受け手に上手く伝わらないことはあります。熟年夫婦の会話は、当の二人には理解できても、外野は理解できなかったりしますよね。

ただ、公人であったり、知名度がある人・組織が、マス向けに語ったり、PRしたりすると、受け手が広がるのだから、文脈を理解できない人がでてくるのは当たり前です。その意味では、発信者は注意して発言する必要がある。日銀の件では、「誤解」よりも、公の場で、公人が、ヒトラーを例に出すことが適切かどうかという論点もある気がしますが。

 

「誤解」を与えやすいかどうかは次の掛け算となります。

①発信者の表現の巧拙 × ②メディアでの表現の歪曲・省略の有無 × ③伝達範囲の広さ

何かの表現で「誤解」があった場合は、①~③のどれかもしくはそれぞれに問題があることになります。

発信者の表現が雑で、その表現を伝えるメディアが表現を歪曲・省略し、発信者が想定していないターゲットに伝達すれば、誤解を与えやすくなります。発信者の表現が雑でも、受け手にダイレクトに話が通るなら、誤解も与えません。だから、著名人が自分の支援者向けに油断して話したことが、後になって拡散して、燃えることが起きます。夏の帰省を断るようにとだけ夫から義実家に伝えさせたら揉めます。

 

ということで、マス向けに伝えたくて、本来伝えたいことが上手く伝わらずに起きた炎上に謝罪する場合は「誤解」論法で受け手に責任転嫁するのではなく、

C CHANNELにて公開した動画広告に関して

生理の時に女性がつい気になってしまう、対人関係での不安を解消できることを伝える意図で制作いたしましたが、生理に悩む女性に負担を強いるような表現になっておりました。大変不快な思いをおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

みたいに、先ほどの掛け算の①の、発信者の表現が拙かったと書くと、追加燃料の投下は避けられますよね。逆に、炎上がPRになると考えているのであれば、

サントリーのビールCM炎上の舞台裏 電通社員「炎上を狙うことがある」

「ウェブなら、燃えたほうが話題になるので、炎上スレスレ。または炎上狙いをすることがあります。普通のウェブコンテンツって全然アクセスがないんです。商品の広告をわざわざ見る人はいないので」

謝罪でも、ガンガン「誤解」論法を使うといいですよね。物凄く話題になってくれるはずです。

 

伝えたいターゲットが広く、炎上をしたくないなら、発信者には正確で、問題のないメッセージを伝えつつ、メディアを介さないか、もしくは、上手くメディアとも連携する必要が出てきます。それが息苦しい、面倒ということなら、できるだけターゲットを限定することに心を砕いたほうがいい。嫌なら見るなと言うのではなく、ゾーニングです。

夫からいきなり義実家全員に帰省しない話を一斉メールで伝えるのではなく、電話で義母・義父・義姉をそれぞれ籠絡するとかみたいに。やりたくないですけどね。根回しは大切。

 

 

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