昨日、この記事を見かけました。
レイプ事件を届け出る日本の被害者は氷山の一角 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
趣旨としては、日本もインドも強姦事件の発生率はスウェーデンやアメリカやイギリスなどと比べると格段に低いが、これは暗数(統計に現れなかった数字)があるからで、実際はもっと多いのではないか、というものです。
日本での性被害は表に出てきにくい
日本の強姦事件の発生率は、警察に届けられた件数です。だから、届けられなかったものは含まれない。このことで、リンク先の記事で確認できるように、実態としては、まったくの他人による強姦は一番少ないと考えられるのに統計上は一番多く、家族・親戚による強姦はその逆という状況になっています。
実際に、被害に遭った人の約7割が誰にも被害を相談しておらず、警察に連絡・相談したのは5%未満であったりとか、
※グラフは男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査) | 内閣府男女共同参画局のII-6. 異性から無理やりに性交された経験[PDF](p.6)より。
約2000人を対象にした調査で、性的事件の被害を受けている人は27人いるものの、そのうち被害を申告したのは5人であるとか、
※表は法務省:犯罪被害に関する総合的研究 ‐安全・安心な社会づくりのための基礎調査結果(第4回犯罪被害者実態(暗数)調査結果)‐ 研究部報告49(p.76)より。
公にされていない性被害が多数あることが分かります。
通報ベースみたいな統計だと、通報されないものは含まれないため、このように実態と統計上の数字に差が出てくることがありがちです。
例えば、強姦事件の発生率を見るとスウェーデンが非常に高いですが、これも見方を変えると、強姦事件を公にしやすい環境があるとも考えられます。そして、日本はその逆とも。
日本で家族や親族から性被害があっても警察に届けにくい雰囲気はあります。
定義変更で自治体によっては待機児童が増加
もう一つ気になった統計はこちら。今朝の日経の一面になったのでご覧になっている人も多いかもしれません。
待機児童 16市区で増加 主要34市区、本社調査 :日本経済新聞
これ、タイトルだけ見ると、増加=悪化と受け取れますが、本文記事を読むと、
現状では保育所に入れなくても親が育児休業を延長するケースは待機児童に含めない自治体が多い。こうした「隠れ待機児童」を把握するため、厚生労働省は3月、育休中でも保育所に入れれば復職したい人を待機児童に含めるとの新定義を示した。18年度までに適用すればよいとしたため、今回、新定義を採用した自治体は4割だった。
新定義を採用した目黒区の待機児童は昨年の299人から617人に大幅に増えた。
まさに暗数になっていた待機児童を把握するために、待機児童の定義を変更したことで待機児童の数が増えたと考えられる自治体もあったそうです。これだと昨年対比があまり意味をなさない。
こういう風に統計数字は定義を変更するだけで見た目がガラッと変わることがあるので(言わば暗数が含まれる)、定義変更は要チェックです。
定義変更して数字が増えたかもしれない自治体を「待機児童が増加した。酷い!」と批判するようだと、自治体には統計上の待機児童を減らすインセンティブが生まれます。待機児童の新定義をまだ採用していない6割の自治体の中には、単に事務的な手間だけではなく、外からの見栄えを意識して新定義を採用していない可能性があることは、私は否定できないと考えています。
ちなみに、待機児童が少なく見えるという理由でその地域に転居する人がいて、その結果待機児童が増えるという現象もあるので、待機児童の自治体ごとの経年変化は単純比較が難しいところがあります。
締め
統計数字をチェックするときは、定義変更があったかどうかは基本ポイントとして、暗数があるのではないかと考えるのも重要ですよね。私も数字だけ見てパッと判断しちゃうことがたまにあるので、気をつけたいところです。