小学館が運営するWooRis(ウーリス)で「学校の連絡網で固定電話の番号を載せないと信頼を失う」という記事がありました。
はてなブックマーク - 学校の連絡網で「固定電話がない家庭」はいったい何が問題なのか? - Yahoo! BEAUTY
どうやら理由としては、
- 朝電話できるように固定電話、昼電話できるように携帯電話の番号を両方載せたほうがいい
- 固定電話を載せていない家庭とはトラブルが多かった
- 固定電話は権利を買う必要があるのでそれだけ信頼度がある
ということです。
上記は、一応納得できる理由であるものの……
と茶番を書こうと思いましたが止めます。
結論からいえば、この記事の内容は時勢からかなりズレています。今時は連絡先には携帯電話の番号のみを書いたり、そもそも連絡網がなかったりすることが相当程度あります。学校の連絡網に固定電話を載せられないという理由で信頼を失うなんて話にはほとんどの地域でならないでしょう。
ただ、これだけ書いたのでは、この記事を書いたライターさんが1つ目はn=1、2つ目はn=3、3つ目はn=1という、個人の狭い観測範囲を一般化したのとあまり大差がないので、もう少し説得力がある情報を紹介してみます。
まずは学研が2011年に行った調査。
Q22 昨年度(東日本大震災より前)、お子さんが通っている学校(もしくは学級)には、電話やメールによる緊急連絡網がありましたか(N=927)。
※グラフは、小学生白書Web版 学研教育総合研究所|学研より
アンケートの対象が東京、神奈川、埼玉に住む保護者と都市部在住ではあるものの、電話の緊急連絡網が2011年でさえ50%程度しかなかったことが分かります。解説を読む限り三択だったようで、メールが45%で、何の連絡網もなかったのが5%。ちなみにお役立ち度では、東日本大震災当時は電話よりメールのほうが優勢だったようです。
次に、固定電話普及率と携帯電話普及率。
固定電話は世帯での保有率が毎年減少し続けており、直近の平成27年末で75.6%です。一方の携帯電話は95%を超えます。こうなってくると、電話連絡網があったとしても、携帯電話のみ載せる家庭があってもおかしくありません。誰もが固定電話を保有しているという状況ではないのです。
※グラフは、『通信利用動向調査(平成27年)』総務省より
最後は、実際の数字。
本当は、連絡網での固定電話掲載状況を示す統計が欲しかったのですが、見つからなかったのでTwitterでアンケートを取ってみました。Twitter利用者のみ回答できるアンケートなので、当然ユーザーに偏りはあるし、何かと欠陥はありますが、結構RTされたおかげでそれなりの数の投票数になりました。
【アンケート】
— 斗比主閲子 (@topisyu) 2016年9月5日
『学校の連絡網では固定電話の番号を記載しないと信頼を失う』という記事がありました。あなたがどうしているか教えてください。
ざっくり、
電話連絡網があるケース:ないケース = 7:3
固定番号:携帯番号:両方 = 2:4:1
ということですから、固定番号と固定番号・携帯番号両方というケースは全体から見ると必ずしも多数派ではない可能性があります。これだけ固定電話を載せてない家庭ばかりであれば、そういった家庭が問題ありとは簡単には言えないでしょう。
ある程度高齢の人に聞くと固定電話のほうが信用できると回答する人は多いでしょうけど、今時は各種契約が携帯電話の番号で問題なくできる時代ですからね。携帯電話についての信頼度はかなり高い。
@topisyu ヒソ…(私立有名幼稚園、携帯番号のみでも合格しますよ)
— 不在ねずみ (@Phodopus) 2016年9月5日
※これは有名私立幼稚園入れた自慢じゃないですか!
ちなみに、電話連絡網が減少している理由は、メールの利用、個人情報保護の関係がよく語られますが、個人的には共働き家庭の伸びもあると思います。今は、共働き世帯が片親世帯の2倍ですから。電話で連絡を取ろうにも、そもそも仕事で出られないケースが多くなっている。自宅でしか連絡が取れない固定電話ならなおさら目的を果たせません。
ということで、
苦労した婚活の果てにはこんなくだらない悩みが待っているの…?? https://t.co/uXJJwRPF2H
— まじぱん (@majipan_con) 2016年9月5日
そんなに心配しなくても大丈夫です!
ちなみに、WooRis(ウーリス)とは、
『WooRis(ウーリス)』は、「身近なリスクを解決する主婦の味方」をコンセプト
という意味なんだそうですが(Woman + Risk)、この記事のように、大したことない(もしくは存在しない)リスクを過大に紹介するのはコンセプトから外れると思うのは私だけでしょうか。