吉田秋生さんの『海街diary』がかなり好きです。何が好きかというと、ほとんどの登場人物が察する力が高く、それを如何なく発揮して話がポンポン進むところ。
海街diary 1巻【電子書籍のソク読み】豊富な無料試し読み(←第1巻はこのサイトで1/4ぐらいが読めます。)
舞台は鎌倉。四人姉妹が中心となって話が進みます。誰か一人がちょっとおかしい振る舞いをすると、他の姉妹が「ちょっと変だけど、心当たりある?」とその日のうちに情報交換し、時には外部のリソースも借りて、原因に辿り着く。一人で考えた方がよさそうであれば可能な限り余計なことは言わず、声を掛けた方がいいと考えれば姉妹で連携してカバーをしたり時には単刀直入に突っ込む。
四人姉妹以外も人の悩みに敏感で、困っていそうな人には良いタイミングで声をかける。だから、悩み事が出てきても、一人でうじうじ続くことがほとんどない。大体一話のうちに完結してしまう!
そういうテンポの良さが大好きなところですが、ちょっとどうかなと思うのはそれがあるのが自然な世界となっているところで。
『海街diary』では、一人だけ母親が違う四女のすずが特によく描かれるのですが、このすずが入っている中学生のサッカーチームの面子も察する能力が著しく高いんです。特に主将の風太。
例えば、これは第6巻での会話。学校でぼーっとしているすずに風太が声を掛けます。
風太:なんかあったのか?
すず:え
風太:昨日の練習の時からン?と思ってて だってお前あんま話さなかったから
すず:えーー?別になんにもないよ みぽりんとはけっこー話したし
風太:やっぱなんかあったろ お前昨日美帆にもおんなじこと聞かれてて おんなじこと答えたじゃねえか おれと話したとか言って おれ昨日お前とほとんど話してねえし
6巻にもなっていますから風太とすずの関係性や風太の観察眼からすると違和感はないんですが、中学校三年生の男女の会話と考えると察しがよすぎるというか。
察しが悪いキャラクターもいるんですけどね。例えば、三女の千佳と、すずや風太と同じくサッカーチームにいるマサとか。ただ、そういうキャラクターは例外で、周りからは「相変わらず、こいつ空気読まないな」「この天然さのおかげで気が楽になるわ」みたいな扱いなわけです。
もちろん、端役はそういう期待がないというか、物語の外の人間として、あまり空気を読めない、察せない役柄として登場するんですが、主要キャラクターには高いレベルで察することができないと周りからプレッシャーがかかるんですね。
自分は空気を読むとか、察するとかは大好物ではあるものの、さすがにそれを中学生にまで求められる世界というのはなかなか生き辛いなと、大好きな点ではあるものの、ちょっとどうかなと思うわけです。
映画化に際し、こういった空気を読む場面がどのように描かれるかは楽しみなところです。長女の幸が朝の食事でみんなに目を配っているのがいいんですよね。
海街diary 1 蝉時雨のやむ頃 (flowers コミックス)
- 作者: 吉田秋生
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/03/05
- メディア: Kindle版
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (13件) を見る