インターネットを眺めていると、時々炎上状態に入っている案件を見ることがあります。一定以上の集団によって非難されている状態ですね。
それで、こういう炎上というのは、綺麗に鎮火されるものもあれば、当事者からすると永遠かと思えるぐらい延焼し続けるものもあります。
この辺の知見というのは、インターネットではすでに事例が積みあがっており、炎上対策の専門家もいるはずですが、一般にはあまり知られていないかもしれません。
当事者になってみないと興味が持てないでしょうけど、自分が理解している範囲でのネット炎上の延焼について書いてみます。自分は炎上対策でお金を取るようなプロではないですから、素人の話としてどうぞお読みください。長々と書いていますけど、以下のTweetの意味が理解できるようであれば、読む価値はない話です。
佐野デザイナーを叩くことのメリットとか考えてるからお花畑なんだよ。メリットなんかねえよ、叩きたいから叩いている、なぜなら祭りだからだ!という心理も解さず燃料ばかり注ぎ込んでるからだよ
— くっきー (@kukkyx) 2015, 8月 24
初期にネット炎上が大きくなるかは対象者の背景情報がポイント
まずはどうして炎上が起こるかについて簡単に書きます。
炎上の当事者になると自分が非難されているように感じるかもしれませんが、それはある意味正しいけれど、その対象者自身の行為・言動だけに何か引っかかるものがあったわけではないことがあります。その人の抱えている背景です。
ネット炎上において対象を非難している人の大半にとって、炎上している人の行為・言動で直接的な被害を被っていることはほとんどありません。そういう意味ではデモに近い部分があるかもしれませんが、デモにポリシーがあるとすれえば、ネット炎上の方には確たるポリシーがあるわけでもない。個人個人が別の思いを抱きながら参加している。個人個人にとって、どれだけ引っかかる材料があるかどうかがどれだけ燃えやすいかにかかわってきます。
例えば、小学校3年生男児が「女子は算数勉強しなくていいよ!」とTwitterで呟いても何も問題視されませんが(子どもがTwitter使うなという話はあるかもしれない。)、これが、どこかの政治家が言えば話が変わってきます。これは想像がつきやすいと思います。
背景情報に非難されやすい文脈がある方が燃える
炎上によって非難される言動・行為というのはそれ自体だけではなく、対象者が抱えている背景もセットになって燃えるわけですが、元々その背景に対する不満が多くあると、当然炎上も大きくなります。引っかかる人の引っかかりが違いますから。
例えば、先ほどの例の政治家でも、少数野党より政権政党が言った方が燃えやすい。炎上候補者が権力に近い、裕福であるほうが燃えやすい(社会的弱者でも、一時期の生活保護叩きのように普段の不満に繋がる文脈があれば燃えることもありますけどね)。
普段その背景に不満を抱えている人が炎上を見ると、「自分も前から嫌いだったんだ。この機会に便乗して一言言っておこう」とわらわら集まってきます。一人でいる時に心に抱えていたモヤモヤをこの機会に吐き出そうとする。
燃やしている人間をカテゴリー区分すると対策が見えてくる
そういうわけで、炎上した時には、どういった層がどんな背景について引っかかっているのかを分析すると対策も見えてきやすくなります。炎上の真っただ中にいると怒った群衆がたいまつを持って集まっているように見えますが、行為・言動自体を理路整然と非難する層も入れば、普段のうっ憤をこの際に晴らそうとする層もいる。
インターネットの世界というのは匿名性が高いものの、ある程度属性情報は追えないことはありません。それで何が不満があって叩かれているか分析する。
そうして、それぞれの燃やしている人間をセグメント化して、それぞれの層が納得できる材料を一気に早く提供する。これが理想的な炎上鎮火法の一つだと考えています。
小出しの情報提供は追加燃料になる
ということで、小出しの情報提供が追加燃料になるという話に繋がっていきます。炎上している最中に小手先の対処を繰り返すとどうして更に炎上が大きくなるか、続くか。
小出しの情報というのは、ある情報はある層が納得材料になっても、その他の層にとっては更に怒る材料になったりするんですよね。その小出し情報に何か矛盾が見つかりでもすれば鬼の首を取ったかのような状況になる。「やはり炎上して当然だ。こんなに問題があるのだから」と。
現実的には追加燃料の投下をしがち
では、追加燃料は止めましょう、ちゃんと燃やしている層のセグメント分析をして、必要な情報をできるだけ早く提供しようとしても、これが簡単ではないんですよね。
というのも、大規模な炎上となると組織的なものになり、そうなると意見の一致にも相応の時間がかかる。また、自分(たち)に対して怒っている層を分析するなんて、とてもじゃないけどやる気にはなれない。なぜなら悪口をたくさん目に触れることになるから。辛い。そして、正義感に駆られたり、自分だけは助かりたいと、結果的には小出し情報になるような情報を提供してしまう人が出てきたりする。無能な働き者とか。最後に、そもそも何が必要な情報か当事者であると分からないことも多い。分かっていたらこんなこたにならない。
背景情報から壮大に燃えている炎上に対して、個人にしても集団にしても上手く対処できることがあるとすれば、それは、物凄く状況が分かっている権限のある人物がいるか、炎上について十分な研究がされているか、専門家を特別に起用しているかとかといったケースで、限定されていると思います。
締め
個人でもいいし、自分の関わる組織で、組織の製品・サービスがネット炎上した時に上手く対処できるかちょっと考えてみると、他人が炎上を上手く鎮火できていないのは別に違和感はなくなるのではないでしょうか。普通は、ネットの炎上なんてなかなか出遭わないし、興味も持てない。
そう考えると、先ほど紹介した理想的な炎上鎮火策より、できるだけ早めにスパッと多くを語らず謝るとか、沈黙を通す方が現実的というのがあるんですよね。もともと大して問題のある言動・行為をしたわけではない、燃えやすい背景情報が少ないということであれば、特に。
ネットって、誰に向けて書いていると明示しても、閲覧数が増えると、自分に向けられた話としか受け止めない方々がいっぱいやってきて、トンチンカンなコメントが増えるけど、あの手の方々は無視するしかないよなー
— 加野瀬未友 (@kanose) 2015, 8月 27
不満は世の中にいくらでも転がっていて、その不満というのはどこかで火の手が上がることを待っています。新たな炎上の犠牲者が出てくれば、前の炎上などすぐに忘れ去られる、それぐらいインターネットの炎上というのは一過性がある。これが炎上が祭りと称される由縁だと考えています。