斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

元産経新聞記者の福島香織さんの「姑は跡取り息子が死んだ後の妻の相続について夫婦別姓なら納得いかないんじゃないか」といったTweetを読んで思ったこと

昨日、Twitterを見ていたら、はてなの姑ことid:kukkyさんが、元産経新聞記者で現在はフリージャーナリストの福島香織さんのtweetを紹介(RT)していました。 

これを読んで、夫婦別姓反対派の人がこういう考え方だとしたら、夫婦別姓賛成派とでは確かにギャップは大きいと得心するところがありました。

以下、tweetに対して思ったことつらつらコメントいたします。かなりトメトメしいです。

夫婦別姓 朝日新聞 アンケート

※グラフは、選択的夫婦別姓に賛成52% 朝日新聞社世論調査:朝日新聞デジタルから。高齢になればなるほど賛成は減る

 

 

最初のtweet。

ここでは、30年息子を育てた姑として、舅に触れていないことから、子どもは妻が育てるものであるという考え方がある可能性がうかがえます。また、財産を持つ男性が急逝したシチュエーションのみを考えていることから、女性が財産を持っているケースはあまり想定していないようです。

結婚していないからといってこの件について議論する資格がないとされていますが、そんなことはないと思います。それより違和感があるのは、ご自身が姑ではないのに以降のtweetで姑視点に立った議論をしているところです。いや、別にそれもしては駄目ではないんですけどね。結婚していないから何か言う資格がないというなら、姑でないのだから姑視点で何か言う資格がないと考えてもおかしくない気がします。福島さんは自分に厳しいのか甘いのかよく分かりません。

 

姓が一緒であれば姑は妻による夫の財産の相続について納得しやすいとしています。

そもそも、この例を挙げて、別姓婚について反対するのが適切でしょうか。仮に、お金持ちの男性がいて、その人の財産が欲しくて結婚しようとする女性がいて、舅姑が息子の財産に執着しているなら、舅姑は別姓婚とか同姓婚に関係なく、結婚を許さないですよね。かなり例外的なシチュエーションなので、このケースが世の中の別姓婚をしたい夫婦の代表例とは言えないでしょう。

 

一族の墓という話を触れていることは、前のtweetでの"一緒のお墓にはいるんだし。"というのは、妻が夫及び夫の一族と同じ墓に入るということを前提にしていると考えられます。

ただ、妻が夫一族と同じ姓だからといって墓に入ることができるというルールはないんですよね。一般に永代使用権者が誰を墓に入れるか決めるものですから、夫の両親など墓を承継した人物が了承しなければ、妻は姓が一緒でも同じ墓には入れません。仮に、長男であっても、永代使用権者が墓に入れることを断れば、墓には入れません。

 

ここで、福島さんは話を変えて事実婚のメリットを紹介しています。夫婦別姓にしたいなら、事実婚をすればいいんじゃないのって。

その考え方はないわけじゃないと思うんですけど、先ほどのケースを紹介しておいて、この話に展開するとちょっと混乱します。何しろ、先ほどのお金持ちの人と結婚するという話のほうが、(息子の財産に固執する舅姑視点で見れば)事実婚向きなんですよね。

法律婚をすると夫婦財産契約を結ばない限り、妻が夫の、夫が妻の死後、財産を相続する権利を持ちますが、事実婚なら夫や妻の財産を配偶者は相続する権利を持ちません。姑視点で「別姓の妻が財産を相続するなんて許せない!」ということなら、こういうケースを想定する福島さんこそ他人事のように"(事実婚を)広めればいい"と言うのではなく、個人として事実婚をもっと推奨した方がいい。

ちなみに、事実婚では配偶者控除が認められないなど、まだ法律婚との差はあります。だから夫婦別姓だけど法律婚のメリットは享受したい人はいるんですよ。事実婚の推奨は完全な解決策にはなりません。

それと、事実婚が広まれば片親への風当たりが減るのはそういう面があるかもしれませんが、片親であるというだけで風当たりを強くするというのがそもそもおかしいと思いますけどね。

 

たぶん、ここが大きな考え方の違いなんですよね。福島さんは恐らく夫婦別姓婚をする人がいれば、夫婦同姓婚の家庭が脅かされると信じている。

夫婦別姓婚は別にウィルスでもなく、侵略者でもないんですよね。夫婦別姓婚のほうがいいと思う人が夫婦別姓婚をするだけで、保守的な家族の形をいとおしいと思う人は(夫婦同性婚で本当に実現できるかどうかは別として)夫婦同性婚を継続するだけです。

この議論は永遠にされ続けています。考え方としては同性婚に近く、同性婚をOKにしたところで、異性婚が脅かされるなんてことはないわけです。同性婚のみOKというわけじゃないんだから。夫婦別姓についても同じで、同姓夫婦と別姓夫婦が並列するだけです。

 

繰り返しですけど、墓は、一般論としては永代使用権が決めるから、姓が同じか違うかが条件じゃないんですよね。姓が同じでも断られることはある。また、夫婦別姓でも同じ墓に入れる方法はあります。

 

一応ここまででtweetの紹介は終わりです。

読んでいて、何か強烈な家族観をお持ちかなと思いました。子どもは女が育てるもので、姑は息子の財産に口出しするもので、片親は風当たりが強くて当然で、墓には同姓しか入れないなどなど。現状の同姓での法律婚にかなり幻想を抱いている気がします。姓を同じにするぐらいで姑が嫁に優しくなるなら、どれだけ楽か!

 

最後に国際結婚での夫婦別姓について。ご存知の人も多いと思いますけど、今の日本でも国際結婚なら夫婦別姓です。RT等から福島香織さんが懇意にされていると思われる坂之上洋子さんは、国際結婚されて夫婦別姓だそうですが、特に問題はなかったそうです。

国際結婚をする日本人は、"保守的な家族の形をいとおしく思う日本人"からすると例外的な存在で視界には入ってこないんでしょうかね。