斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

企業が内定者を新卒採用に絡めさせる、表向きには語られにくい背景

そろそろ就職活動がピークになっているころでしょうか。今年入社される内定者の方は、内定先の会社から、「就職活動を手伝ってくれ」「後輩を勧誘してくれ」という話を受けることがあると思います。

 

内定者を、無賃金でそのような採用活動に関わらせることは、まだ雇用契約を結んでいない、未就労な状態では、かなりグレーなものではあります。ただ、企業としては、お金をかけずに優秀な社員を採用しやすくなり、内定者としても就職後のキャリアを考えると積極的に関与しようとする人もいるでしょうから、大学のキャンパス内では、こういった内定者による非公式でのリクルーティング活動が行われているのを見る機会があるのではないでしょうか。

 

topisyuもかつては採用担当をしており、その時には意識的に内定者を新卒採用に関与させるようにしていました。(後輩のリクルーティングに限らず、どうしたらもっと学生にリーチしやすくなるかのヒアリング含む) その背景には、優秀な人間を楽に引っ張ってこようという以外に、もう一つ表向きには語らない意図がありました。

稲盛和夫の哲学―人は何のために生きるのか (PHP文庫)

※意識高い感じにするためにカタカナ語が多いのでそういうのが嫌いな方はそっ閉じを推奨します。

 

会社の理解を深め、ロイヤリティを高める

それは、内定者の会社へのロイヤリティ(忠誠心)を高めるという意図です。採用を担当する人間としては、優秀な人間を獲得する以外に、その人間をいかにリテンション(維持、引き留め)するかも考えます。お金をかけて広報し、忙しい中つまらないESに目を通し、面接して、(場合によっては紹介会社にお金を払った上で)すぐに退職されてしまっては、元も子もありません。

 

金銭的な対価や権限を増やすことは確かに従業員を引き留めすることに有効な手段ではありますが、いかに会社への忠誠心や帰属心を高めるかも同時に考えることになります。ジャンプスキーの原田雅彦選手は高い忠誠心からプロにならず雪印乳業に勤めています。

 

個人としては、会社への忠誠心や帰属心は皆無だとしても、ミッションとしては、従業員の忠誠心や帰属心を高めるというのがありますから、自分が採用に関わった人間が高い忠誠心でもって、会社に貢献し続けて欲しいという考えはあるわけです。

 

その一環として、内定者に新卒採用への関与があります。(若手の関与も同じ効果があります。)

 

仕組みはサークル勧誘や宗教勧誘と同じ

やっていることは、大学のサークル勧誘や宗教勧誘と同じです。勧誘活動をしている人間がどこまで意識的かは分かりませんが、宗教では特に、ヒエラルキーの下部にいる、入信したばかりの信者に、駅前や訪問によって勧誘活動をさせているかと思います。

 

勧誘プロセスで良い結果を出すには、まずは自分が所属している母体についてしっかりした理解があり、かつセールポイントを上手く伝えなければなりません。勧誘をするために勧誘者は自主的に勉強するようになります。人を説得するために覚えた文句で、知らず知らずのうちに自らを説得するようになります。(実際にはその母体のセールスポイントは、若手であることもあり十分に享受できていないにも関わらず)

 

また、実際に勧誘活動をしていると、苦労と、成功した時の喜びがあります。成功は、上位者による「よく頑張ったね」で大丈夫です。上位者からの高評価を得ることで、人間は、苦労を苦労としているだけでは耐えられないので、苦労がその人の中では『いい思い出』といった成功体験に変換されます。

 

更に、仮にその勧誘活動で入った人間がいると、自分の成功体験を崩さないために、その人間にもっと自分の母体を知ってもらいたい、辞めないでもらいたいと、積極的に関わろうとします。連鎖ができます。

 

同じことが、内定者の採用活動への関与で期待できるわけです。

 

 

締め

 

『踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損』という言葉があります。確かに、巻き込まれて一緒にやった方が楽しい。でも、気付いたら何かに取り込まれていることもあります。

 

組織体への忠誠心を持つことはそこで生きていく上では楽になることになっても、時には、その忠誠心を上手く使われて対価を抑えられることもあります。新卒採用に限らず、組織自体を、忠誠心が高くなるように作り変えている会社もありますので、自分の忠誠心に見合う対価を得られているか、冷静に見極める機会があるといいのではと思います。