斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

気がついたら無限に続く団地世界、『百万畳ラビリンス』が面白い

私はゲームが好きです。

ゲームが好きな理由が何かと問われれば、こことは違う世界で自分の分身であるキャラクターを操れるというところでしょうか。別世界に没入できるということでは映画も小説も漫画も好きだけれど、ゲームは自分の関与の度合いが高いですよね。ゲームをやり過ぎるとたまに現実もゲームのように攻略しようとしてしまう。

そういう私にとって、この『百万畳ラビリンス』という漫画は「あなたは私か!」を楽しめる、漫画もゲームも好きな私にとって最高の話でした。 

一巻の51ページ目ぐらいはこちらで試し読みできます。それで面白ければ、私のレビューなんか読まないで、上下の2冊そのまま読んじゃってください。

百万畳ラビリンス(上) (ヤングキングコミックス)

百万畳ラビリンス(上) (ヤングキングコミックス)

  • 作者: たかみち
  • 出版社/メーカー: 少年画報社
  • 発売日: 2015/11/11
  • メディア: Kindle版
 

※バールのようなものを持つ主人公(左)と手斧を持つそのパートナー(右) 

 

ゲーム世界にゲーム好きが閉じ込められる話

内容をざっくり言えばゲーム的世界にゲーム好きが閉じ込められる話です。ただ、ゲーム世界といっても、最近多いファンタジーものではありません。

ゲームでいえばポータル、映画でいえばキューブのような比較的無機質な世界に、20歳ぐらいの女性2人がいつの間にか放り込まれています。

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※上巻1ページ目。和風な世界観なので、正確にはポータルというより『ぼくのなつやすみ』(の8月32日)

 

主人公がゲーム脳

それで、この主人公女性はゲーム脳です。ゲーム脳といっても、森昭雄さんが言っていたような、ゲームをしすぎていると脳の機能が認知症患者みたいになるというゲーム脳ではありません。ゲーム的な思考で物事に接する、ゲームの攻略法をすぐに思い浮かぶ脳という意味でのゲーム脳です。

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※上巻43ページより。死んでも残機が減るだけという発想

ゲーム脳の主人公ですから、ゲーム世界での振る舞いは手慣れたものです。特にゲームのバグ好きが高じてデバッガーとしてアルバイトをしているぐらいなので、この世界でもバグを探すのが大好き。漫画という、著者によって決められた世界で決められた風に動く登場人物ではあるものの、主人公の発想はゲーマーそのもので、大変好感が持てます。

 

ゲームの設定を冒険しながら探る楽しさを追体験

私がゲームをしていて最高に楽しいのは、その世界がどのような法則で成り立っているか、何が攻略法なのかを考えているときです。その法則性を活かして、次から次へと新しい敵、新しいダンジョンが登場し、それをこれまで培ったテクニックで攻略していくのが楽しい。

この漫画では、正に主人公がそうやってこの世界を攻略していきます。読者はそれを追体験していくんですね。この感覚、何かに近いと思っていましたけど、ゲーム実況動画です。

ゲーム実況動画とは、Youtubeやニコニコ動画等の動画投稿サイトで、投稿者がゲームを実況した動画。物凄くゲームが上手い人の鮮やかなゲームさばきというのは見ていて爽快感があります。そして、楽しそうにゲームを攻略しているのを見ると、見ている方も楽しい。そういうものが、この漫画にはあります。

 

締め

このように、ゲームの楽しさを疑似体験できるのがこの漫画です。

もちろん、ゲーム大好きな人にとっては「ここはあれがモチーフではないか?」「この人は飯野賢治がモデルか?コナミを退職した人か??」みたいに元ネタを考えるのも楽しいでしょうけれど、そういう事前知識がない人でも、十分理解できるようパートナー役が状況解説やツッコミをしてくれています。 

百万畳ラビリンス(下) (ヤングキングコミックス)

百万畳ラビリンス(下) (ヤングキングコミックス)

 

※IQっぽい表紙の下巻。崩れているのは畳

ゲームの何が面白いの?と思われる方には個人的にはこの漫画をお勧めしたいですね。たぶん、若干偏ったゲーム感を持つかもしれませんけど、私がゲームが好きなのはこういうところです。

作者のたかみちさんは下巻のあとがきにて、

何度も挫けましたが最も自分らしい作品になりました。楽しんでもらえたら嬉しいです。

と書かれていますが、とても楽しい時間を過ごせました。読者としても感謝の気持ちをお伝えします。ありがとうございました。

 

いばらの王 (1) (Beam comix)

いばらの王 (1) (Beam comix)

 

※雰囲気は『Dimension W』連載中の岩原裕二さんの『いばらの王』も近いかも。絶版みたい。Kindle版を出して欲しい

 

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