斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

登場人物の年齢が25歳未満や未成年向けに見える以外に、仕事中の飲酒と取れる場面があるCMは危ういのでは?

これから書く内容がポジショントークだと思われる可能性があることを考慮して、最初に私がどんな属性かを簡単に書いておきます。

  • 私は成人しています。
  • 私は飲酒はしません。
  • 私はテレビは見ません。
  • 私はアニメが好きです。
  • 私には未成年の子どもがいます。
  • 私にはアルコール依存症の同僚がいました。

では、本題に。

 

たまたま、このTwitterのまとめを見かけて、

氷結 × TRIGGERアニメCMが根拠のない理由で非公開にされた件について - Togetterまとめ

『キルラキル』や『ニンジャスレイヤー』で有名なTRIGGERが作成しKIRINが公開していたWeb CMが公開停止になったことを知りました。

Tweetをまとめられている方は、公開停止になったのは根拠がない理由とされていますが、公開停止になったのが市民団体の要望を受けてだとすれば、その市民団体の要望は、

ウェブCMにテレビCMと同じ自主基準を求める要望書

同社ARP室に強く抗 議 したところ、「ウェブCMは年齢認証ができるので、不特定多数を対象としたテレビ CMとは異なる。この内容でテレビ CMをやるつもりはない 」「登場人物が25歳以上という自主基準はテレビ CMに限定されている。ウェブCM には適用しないというのが業界の判断。そのため 20 歳以上の設定にした」との見解でした。

というキリンビールの見解に対し、実際には 年齢認証なしでもこのウェブCMを閲覧できるようになっていることから、

「この内容でテレビCMをやるつもりはない」のなら、ウェブCMもやらないでいただきたいと、キリンビールには速やかな中止を求めました。

としているものです。

テレビ基準では流さないものをWebでは年齢認証ができるから流すと会社としては主張しつつ、実際に年齢認証をしないでも閲覧できたわけですから、Webで流すのも中止してほしいという理屈は、特に変なものではないですね。割と真っ当です。

 

ここまでは特にどうでもいいことで、ここからが本題。

 

私はTRIGGERの作品が好きなので、せっかくだから実際の映像も見てみたいなと検索したところ、Youtubeで見ることができました。(最初は画質がキレイなので公式かと思って見始めたんですが、後で違法にアップロードされていることに気付いたので動画へのリンクは貼りません。)

 

第一印象としては、アニメーションの質は(ハイクオリティが当たり前になった今の日本のアニメとの比較では)高くないなと思いつつ、登場人物の最初の飲酒シーンで「あれ、これってありかな?」と思いました。

そのシーンとは、イラストレーターの女性が絵を描きながら飲酒しているものです。

TRIGGER 氷結

※画像は『ウェブCMにテレビCMと同じ自主基準を求める要望書』から

この女性がイラストを描いているところ、妹からオーディションを通った連絡があり、「うし、負けてらんない」「もうちょい頑張ろう」と言いつつ、飲酒をする。どうやら場面は自宅であるため趣味と取れないこともないですが、仕事がイラストレーターであり、妹が仕事で成功したというシーンですから、仕事の合間の飲酒のように受け取れます。

言わずもがなですが、広告というものは消費者に関心を持たせるために行われるものです。ある商品を特定の場面で利用する広告を打ち出すということは、そのような利用方法を喚起していることになります。このWeb CMでは飲酒の機会の一つとしてこういう状況を喚起しているわけです。

 

日本で初めて作られたアルコール依存症のスクリーニングテストに『久里浜式アルコール症スクリーニングテスト』というものがあります。最新の女性版がこちら。

久里浜医療センター|久里浜式アルコール症スクリーニングテスト

最近6ヶ月の間に次のようなことがありましたか?

  1. 酒を飲まないと寝付けないことが多い
  2. 医師からアルコールを控えるようにと言われたことがある
  3. せめて今日だけは酒を飲むまいと思っていても、つい飲んでしまうことが多い
  4. 酒の量を減らそうとしたり、酒を止めようと試みたことがある
  5. 飲酒しながら、仕事、家事、育児をすることがある
  6. 私のしていた仕事をまわりの人がするようになった
  7. 酒を飲まなければいい人だとよく言われる
  8. 自分の飲酒についてうしろめたさを感じたことがある

※太字は筆者による強調

仕事中の飲酒が項目としてあります。ちなみに、こちら一つだけにチェックが入っても、判定上は"要注意群"となります。アルコール依存症の要注意群です。

このチェック項目は疫学的な観点で作成されたものだそうです。他の項目と並べてみると、仕事、家事、育児をしながらの飲酒の危うさが分かります。(ちなみに男性とは項目が随分違っています。将来的には変わってくるかもしれない。)

 

そんなわけで、仕事中の飲酒を喚起するのはアルコール依存症の関係から危ういので、(すでに放映中止になっているものの)先ほどのWeb CMでは、この場面は仕事中とは分からないようにした方がいいんじゃないかと思いました。例えば、イラストが出来上がったシーンで飲むとか。

 

ちなみに、要望書の中でキリンビールの広報の人が業界の自主基準について触れているのを紹介していますが、この自主基準の中には、

酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準

2 アルコールと健康問題等に関する事項

⑵ 広告・宣伝の際使用しない表現

ハ 飲酒への依存を誘発する表現

アルコールへの依存を誘発する表現は使用しないとはっきり書いてあります。

以上、本題です。以下、余談です。

 

 

 

余談

私にはアルコール依存症の同僚がいました。私が会った時点で重症でした。

その人のアルコール依存症の歴史は長く、もともとはまったくお酒が飲めず、大学までは一切飲酒をしなかったものの、会社で飲酒を強制されたことがきっかけで、お酒を飲むようになったそうです。医師の診断も出ているけれど止められないらしい。

アルコール依存症であることで家族から敬遠されていることや、視力が低下していることや、仕事中も飲酒をしたいことなんかも、本人から聞かされました。

しばらくして、その人は仕事がまともにできなくなり会社を辞めていきました。

アルコール依存症に絡む話を見聞きする度にその人のことを思い出します。

 

日本でのアルコール依存患者数は(ちょっと古いですけど)増加していました。

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※画像は「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」の最終評価についてより

アルコール依存症の治療って難しいんですよね。この期間、全体として飲酒をする人は減っているんですが患者数は減少していないことからも分かる。

 

また、未成年者の飲酒はアルコール依存症のリスクを高めます。

未成年者飲酒防止 −公益社団法人アルコール健康医学協会−

以上、余談でした。